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第七回 スタンダード×和食文化[前編] おむすびは日本人の故郷の味。和食文化の心をいただきます。

おむすびは和食文化、米文化の源です。中でも、最もシンプル、でもそれだけお米の味わいを最も感じることができる「塩むすび」の美味しく、正しいつくり方を教えていただきました。

「おにぎり」と言ったり、「おむすび」と呼んだりしますが、違いはあるのでしょうか? そして塩むすびの正しいつくり方とは? 食品学者にして、千葉・佐原茶寮「花冠」司厨長の松本栄文(まつもと・さかふみ)さんに教えていただきました。

「おにぎり」と「おむすび」は違うもの

「おむすび」は必ず三角形に結びます。

「おにぎりとおむすびは全く違うものです」と松本さんが説明してくれました。おにぎりは、形状に関係なく、ぎゅうぎゅう詰込むように握ったもの。「握り飯」が語源だそうです。一方、「おむすび」は、必ず三角形の山型でなくてはならないそうです。古代日本人は山に神々がいると信仰し、その神霊の力を授かるために米飯を三角形の山型に結んだことが語源とのこと。
 「『御所(女房)言葉』で、手を結んでつくるという動作から『おむすび』という言葉が名付けられたということもありますが、いずれにせよ『おむすび』という言葉には、つくる動作から由来する以前に、天地万物を産出す神霊の意味が言葉に込められているのです」

「塩むすび」の正しく、美味しいつくり方

米、塩、海苔。それぞれに意味があります。

[米]

松本さんは山形産のコシヒカリを用いています。「田んぼに行って様子を見て、その年に最も良い状態の田んぼ一枚分を買わせていただきます」。刈り取った稲は表二週間、裏一週間の天日干しにしているそうです。「お米は刈り取った後にいかに乾燥させれるかが重要です。しっかり乾燥させれば、ほぼ新米と変わらない状態で一年持ちます。普通、ご飯は飲み込んでしまうと味がなくなるのですが、しっかり天日干ししたお米だと、飲み込んだ後にぐっと跳ね返るような力強さがあります」。

[塩]

塩は伊豆大島の天然塩。「満月の満潮のときに組み上げた海水の塩です。海底にある深い潮が湧き上がり、養分や旨みが豊富なんです。天日干しの米は跳ね返ってくる旨みがありますので、その旨みをカバーしてくれる塩味が必要。だから旨みが少し強い塩でないとだめですね」。

[海苔]

海苔は有明春の一番摘みの柔らかいものを用いています。「5カ月寝かせて磯臭さを飛ばしたものを使っています。旨みが濃い海苔がいいのですが、磯臭さが残っているとお米の香りや甘みを損なってしまうので熟成させるのです」

丁寧に、軽やかに結びます。

一、

おむすびのご飯は、おひつに少しおいておきます。「炊きたてのご飯は水分が入ってふくらんでいます。それを空気に触れさせると水分が飛び、糊のように米の周りについた旨味が全すべて米に戻るのです。だから余分な水分はできるだけ飛ばすように、おひつに入れておくことが重要です」

二、

手に水をつけ、両手をパンと叩いて余分な水分を飛ばします。

三、

塩を手に取り、両手の平に塩を広げます。

四、

左手の上にご飯をのせ、右手を丸めてまとめていきます。ぎゅっとにぎるのではなく、軽く丸めていくような感じ、ご飯と空気をまとめるような感じです。

五、

ある程度まとまったら、両手の間に浮くような形で軽く三角形にまとめていきます。

六、

海苔にのせ、軽く挟んで出来上がりです。

完成、

大きなおむすびですが、お米の香りと海苔の香りが軽快に漂い、一口食べるとその軽やかな食感に驚きます。お米の旨味をたっぷりと感じながら、ふわりと軽く心地よい余韻が残ります。本当に、大きなおにぎりもペロリと食べられてしまいます。

「おにぎりではなく、おむすびは空気を食べていただく感じで結びます。軽やかに、できるだけ主張なくお米の味が跳ね返ってくるように」と松本さん。そして、最も大切なのは、どんな人にどのような状況で食べていただくかを考えること。「たとえば、お酒を飲んだ後や汗をかいた後であれば、塩味を少し強く、あるいは旨みの強い塩を使った方がお米の味を感じてもらいやすいなど、相手の方に合わせて結んで差し上げるのが、おもてなしの基本だと思います」。

プロフィール

松本栄文(まつもと・さかふみ)

食品学者、佐原茶寮「花冠」司厨長。一般財団法人清櫻堂書院理事長、一般社団法人国際教養振興協会理事。内閣府・農林水産省有識者委員など歴任し、現在は全国各地で「日本文化を愛でる会」を主宰し日本の伝承・伝統文化の普及に努める。著書『SUKIYAKI』では料理本アカデミー賞と称される「グルマン世界料理本大賞2013」世界№1グランプリを受賞。著書『食材は語る』は「日本図書館協会選定図書2010」に選ばれる他、新刊『日本料理と天皇』では知られざる宮廷文化が明かされた。その他、『讀賣新聞』、『朝日新聞be』、『やさいの時間』、『DiscoveyJapan』など連載、執筆多数。

店舗情報

佐原茶寮「花冠」

千葉県香取市佐原イ3413-2
TEL 0478-52-0023
営業時間/17:00~22:00
※営業日はWEBサイトで確認のこと。
http://matsumoto-sakafumi.jp/hanakan.html
前日までに要予約。司厨長御任せ御膳6000円、
特産松阪肉すき焼き御膳1万3000円

撮影/依田佳子

松田龍太郎

スタンダード×和食文化[前編] 監修

監修者編集後記

だれでも食べたことがある、使ったことがある。生活の身近にある和食文化。その一つのシンボルが、今回の「おむすび」と思っています。
そのおむすびを、愛情を持って接している人を考えた時、松本栄文さんしかいない、と思ったのが始まりです。
「おむすびはおもてなしの基本」。松本さんがおっしゃるメッセージが、まさに和食文化の真髄だと思います。

松田 龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身 慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。
その後、2007年企画・プロデュ−ス業に転身。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。