とんかつ3名士 河田部長のとんかつひとり旅㊻ とんかつ咲々(秋田・泉外旭川)
秋田駅から男鹿線で5分、泉外旭川駅から歩いて15分ほどの場所に「とんかつ咲々(さくさく)があります。男鹿線は本数が少ないので新国道経由のバスで八橋大畑のバス停まで行く方が便利かもしれません。店は一戸建てでカウンター席のほかテーブル席も多く、広々として明るい雰囲気です。2019年にオープンした比較的新しい店ですが、ご主人の佐々木充さんは東京・日本橋や秋田市で30年間とんかつを揚げてきた大ベテランです。満を持しての独立開業と言えそうです。そしてこちらは秋田市の名店「日本料理たかむら」のご主人、高村宏樹さんのお勧めの店です。私も高村さんから情報をいただいて訪問しました。
メニューには通常のロースかつ、ヒレかつもありますが、岩手県の銘柄豚、岩中豚がお勧めということなので、岩中豚ロースかつ定食に、これも高村さんお勧めのエビフライを一本追加しました。豚肉を叩く音の後に、油で揚げる音が聞こえてきます。低温でじっくり揚げているようです。出てきたとんかつは細かいパン粉を薄くつけたきつね色の衣を纏っています。肉の醍醐味を最大限に活かす衣です。
肉は柔らかく、脂身はそれほど多くないにもかかわらず脂の甘みがはっきりとわかります。男鹿の藻塩と柚子胡椒で食べてみて下さいとの女将さんのアドバイスに従って食べ進めていくと、特大にすべきだったという後悔が湧き起こってきます。自家製辛口ソースと辛子、大根おろしと醤油の組み合わせも捨て難いです。キ ャベツと秋田県産のコシヒカリのご飯、味噌汁も高水準です。
エビフライはスラリとした姿で皿にのっています。エビフライのぷりぷりした弾力感がたまりません。口の中で大いに暴れてくれます。もちろん海老の風味も十分に感じられます。 秋田市の住宅街にこのような全国レベルのとんかつ店があるのが食べ歩きの面白さです。秋田に行かれた際には是非訪問していただきたい店です。
お勧めポイント
● 大ベテランによる熟練のとんかつ
● パン粉と肉のバランスが絶妙
大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。