和食STYLE

檀崎真由美のボルドー通信『フランス必食N E W S』⑫

ボルドーといえば最初に思い受かべるのは、世界的に有名なワインとカヌレですよね。
このボルドーの銘菓カヌレ・ド・ボルドー(cannelé de bordeaux)は、この地域と歴史に密接して誕生した伝統菓子です。
今回のボルドー通信は愛に溢れて誕生したカヌレ発祥の物語と、ガイドブックには載ってない本当にお勧めの必食のカヌレについて。

ボルドー名物のカヌレはボルドーメリニャック空港(Aéroport de Bordeaux-Mérignac)や長距離列車の停車駅ボルドー・サン・ジャン駅( Gare de Bordeaux-Saint-Jean)でも早朝5時から購入する事が出来る程、ボルドー土産には欠かせない人気商品。
私も時々お土産用に購入して長旅に出ます。

今の日本ではカヌレが大人気でデザインもお洒落になり、味のバリエーションも豊富で楽しめますよね。
でも本場ボルドーのカヌレは至ってシンプル。オリジナルテイストやバニラテイストが主流で、ごく稀にショコラがある程度。

友人知人がボルドーに来てカヌレを食べると、必ず皆『日本のカヌレと味が違う!』『やっぱり本場のカヌレは美味しい!』と口にしながら喜んで食べ歩いています。
もちろん水質や粉の種類により味に違いは出るとは思いますが、おそらく一番の違いは、本場のカヌレは伝統的な製法で卵黄のみで作る事が大きいと思います。

日本や世界の各地から私のオンラインカヌレレッスンを受講された方々も『自分で作るカヌレが一番美味しい!』と喜んでくれるのは嬉しい事です。

(カヌレレッスン後に自宅の庭で)

世界的なワインの生産地として名高いボルドーですが、このワインの醸造過程によりカヌレが誕生しました。
ボルドーのシャトー(ワイナリー)では赤ワインを瓶に詰める前に、軽く攪拌した卵白を入れ、ワイン樽底に沈殿している澱(オリ)を塊にして取り除くコラージュ(清澄作業)という技法が、伝統的に行われています。
コンソメを取る時に卵白を入れて、不純物を塊にして取り除くのと同じ原理です。
この時に使用されなかった卵黄を修道女が集めて作ったお菓子を、貧しい人々に配布したのがカヌレの始まりだと言われています。

16世紀にアノンシアード修道院の修道女は、卵黄の他に商業用の船の発着で賑わうシャルトロン(Chartoron) 地区の波止場の船倉で袋から落ちた小麦を集めて、最初は薄い生地をサトウキビの茎に巻き付けて揚げ、カネラットやカネロンと呼んで配っていました。

カヌレ(Canele)とはフランス語で『溝付き』という意味で、溝がついた専用のカヌレ型で焼く事からこの名がついたと言われています。
20世紀初頭にこの修道女が作ったお菓子からインスピレーションを受けたパティシェが、ボルドー国立大劇場(Grando Théâtre)の特徴である12のコリント式の柱からインスピレーションを受け、銅製の型に12の溝を付けたカヌレ型を考案。

この銅製の型を使用する事で、カヌレを長時間焼成する過程で蜂蜜がキャラメリゼして表面が香ばしく焼かれ、周りがカリっとし、中がモチモチのカヌレ独特の食感に仕上がります。

商業港で栄えたボルドーでは西インド諸島から輸入された砂糖、バニラ、ラム酒が手に入り易く、それらをカヌレの原料に加えて更にレシピを改良し、ボルドー銘菓カヌレへと進化して現在にも受け継がれてます。

1985年には「cannelé de bordeaux」組合を設立し、商標登録されました。

また2012年~2018年迄フランスの公共ラジオ『France Blue』主催で、カヌレ世界選手権「カネレニウム」が毎年開催されていました。アマチュアは伝統的なレシピをアレンジし、プロのシェフはオリジナルの塩味カヌレで競い合い、その年最高のカヌレが選ばれます。ボルドーのレストランでも時々ハムやフォアグラや野菜等が入った塩味カヌレがコース料理の中に登場します。

さてここからは現在のボルドーのカヌレ情報についてお伝えします。

日曜日のガロンヌ河添いのMarché des Chartrons(マルシェ・デ・シャルトロン)にはこの2018年のカヌレ世界選手権優勝のLydiaさんが誇らし気に出店しています。

駅や空港にある老舗の大手カヌレ屋さんは、CANELÉ BAILLARDRAN(カヌレ・バイヤルドラン)1988年から同じレシピを守っています。ボルドー市内を歩いていると、何箇所もあの赤い看板がすぐ目に付きます。こちらでは売れ残った生地はくり抜いてガナッシュを添えてグルメカヌレとして再び焼き直しを行い、サステナブルな取り組みを行っています。

https://www.baillardran.com/fr/ (写真1枚目)

地元の人ボルドレーズ(Bordelais)が好きなカヌレ屋さんはLa Toque Cuivree(ラ・トック・キュイヴレ)。小さなひと口サイズのカヌレがゴールドの箱に入っているのが食べ歩きに最適で値段も良心的。
https://www.la-toque-cuivree.fr/boutique-gambetta/

観光名所の大鐘楼Grosse Cloche(グロス・クロッシュ)の直ぐ側にあるカヌレ専門店はCASSONADE(カソナード)。
きび砂糖という名の店。私のお勧めはヴィーガンカヌレ。動物性食材を一切使わずに、卵の代わりにひよこ豆、牛乳の代わりにアーモンドミルクを使っているとの事。味わいも周りのカリッとした食感と、中のフィリングは微かなひよこ豆の香り。旨味もしっかりあり、ここでしか味わえないヴィーガンカヌレは試す価値アリ!
https://webshop.fulleapps.io/p/cassonade/NDMzMTdfZWY5Mw

でも私が本当にお薦めしたいカヌレは、街中のブーランジェリー(パン屋)やパティスリーのカヌレ。

中でもMaison d’amour (メゾン・ダ・ムール)のカヌレが私のイチオシ!2017 年にフランスの最高のブーランジェリーとして受賞しているので、カヌレはもちろんの事、どのパンも最高に美味しく、行列の出来るブーランジェリーの2号店。

観光名所からは少し離れてますが、わざわざ足を運ぶ価値アリです!
https://www.maisonlamour.fr/nos-boutiques/maison-lamour-cauderan/

ボルドーの人気パティスリーシェフが集結したカヌレ本が出版されているので、

息子の高校の担任だったおじいちゃま先生は、学期末のクラス会に『自分のカヌレが最高!』と誇らし気に生徒全員にご褒美に配ります!彼の家に代々伝わる秘伝レシピで、5日間寝かしたカヌレ生地を香ばしく焼いたひと口サイズのカヌレ。
息子が『料理の先生のママに食べさせてあげたい』と先生におねだりして、大切に持って帰って来てくれました。やはり生徒への愛が詰まった秘伝の味は最高で感激しました‼

こんな愛の溢れるボルドーのカヌレ、もしボルドーに訪れる機会がありましたら、是非足を伸ばして街中のブーランジェリーやパティスリーのカヌレも食べ歩いてみて下さい。
私もまだこの他にもご紹介したいカヌレもあるので、今後も必食カヌレの発掘を楽しみたいと思います。

自宅でカヌレティーパーティー。
(パリ在住カメラマン純子さん撮影)

過去記事はこちらから

過去記事はこちらから

檀崎真由美(だんざきまゆみ)

フランスボルドー在住料理家。ダンラキュイジーヌ(Dans La Cuisine)主宰。
La société MT GESTION CULINAIRE共同代表(フランス)。
Alchemist.Pte.Ltdコーポレートシェフ(シンガポール)。

和洋中の料理を専門的に学び、著名な一流シェフのアシスタントを経験後、仏料理店『シェ松尾』で5年修行し独立。
クッキングスタジオでの料理教室開催、大手企業や海外一流ブランドのパーティーフードをシェフとして手掛け、人気を集める。アメリカ、シンガポール生活後、現在ボルドーを中心にフランス政府正規就労許可の元、料理教室、オンラインレッスンを開催。英語と仏語でも和食レッスンを行い、全国放送『F R A N C E3』にてお節料理を作り、自身の料理活動と共に紹介される。フランス料理だけでなく、和食、本格中華点心迄ワンランク上のクオリティーに仕上げるテクニックで国内外問わず活躍中。

https://instagram.com/mayumi_bdx