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第十二回 料理研究家 後藤加寿子さんの「和食で食育」

農園やプランターで食材確保!食材を子供たちに見せるコミュニケーションも「食育」のひとつですね

農園

スーパーに行けばきれいに形が揃った食材が、時季を問わず何でも手に入る便利な時代になりましたが、その反面、季節感を感じることが少なくなりました。
土や根、葉っぱが付いた自然のままの野菜を見たことがない子供たちが増えているのも仕方がないことかもしれません。
だからこそ、どの季節にどんな野菜ができるのか、日頃食べているものがどのように育つのかをお母さんがきちんと教えてあげてほしいのです。最もわかりやすいのは、実際に作物が育つ様子を見せてあげること。
たとえば、観光農園に遊びに出かけたり、手軽に挑戦できるベランダ菜園を始めてみるのもよいでしょう。野菜が苦手な子も、自分の手で育てたり、収穫して味わうことで野菜嫌いがなくなるケースも多いそう。
今回は子供たちと一緒に都内の農園へ出かけ、旬野菜の収穫を体験しました。

小金井の会員制農園を訪ねて野菜の収穫体験。
そしてその食材で鍋を。塩おむすびで美味しく頂きました。

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会員制農場「ポモナ」で後藤先生と4人の子供たちが秋冬野菜の収穫を体験。
立派な葉がついた人参をはじめ、ねぎ、大根、さつまいも、かぶなどを次々に収穫し、ご機嫌な子供たち。
最初は要領を得ず、苦戦する子もいましたが、徐々にコツを掴んですぐに上達。達成感や自信を持つこともよい食育体験になったよう。

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みんなでおむすび作りにも挑戦。炊いたご飯をおひつに移すと、後藤先生からおひつについての説明があり、ご飯をよりおいしく食べる昔ながらの工夫を学びました。
続いて、おひつからご飯を器によそっておむすび作りの準備をする子供たち。先生から握り方のコツを教わって、小さな手でたくさんのおむすびを作りました。

汁物

汁物

汁物

いよいよごちそうが完成。みんなで収穫した野菜を使って後藤先生が作ってくれたのは滋味豊かな汁物。
普段はハンバーグやラーメン、焼き肉が大好物という子供たちも「美味しい、美味しい」と言ってはお代わりを要求。
自分で握ったおむすびの味も格別だったことは言うまでもありません。

この日訪れたのは、一般の人も野菜の摘み取り体験ができる会員制農場「ポモナ」。都心から1時間以内でアクセスできる便利な場所にあり、季節ごとに40種類前後の野菜や果物を収穫できる人気の施設です。
さっそく代表の横山さんに畑へ案内していただきました。子供たちになじみのある秋~冬の定番野菜の中からまずは人参の収穫に挑戦することに。

後藤先生人参にはこんなに葉っぱがたくさんついているってみんな知ってた?

――――知らなーい。初めて見た~!(一同)

――――こんなふうに生えてるんだ。

――――葉っぱも食べられるの?

後藤先生茎が固いのでちょっと食べにくいかな。でも葉を食べるために栽培されている品種もあって、おひたしや天ぷらにするとおいしいのよ。

――――へー、食べてみたいなぁ。

横山代表では採り方を説明しますね。
茎の中心の下の方を持って、引き上げてみて。

――――え~抜けないよ。

――――けっこう力がいるね。

横山代表土が乾いていると抜きにくいから、ちょうどよさそうなところを選んでね。

――――抜けた抜けた! 楽しい~!

横山代表みんな採れたかな?次はねぎの畑に移動しますよ。

――――あっ、ねぎだ! 長~い。

横山代表下の方を掴んでスーッと上に引いてみて。

――――根っこがいっぱいつながってるよ。

後藤先生本当だ。瑞々しくて美味しそうね。

横山代表みんなだんだん上手に採れるようになってきたね。
今度は大根を採ろうか。

――――ギャー、虫がいる~。

――――う~ん、大根はなかなか抜けない。重いよ~。

――――やっと採れた~。見て!こんなに大きいよ。

後藤先生葉っぱも立派ね。
スーパーの大根には葉っぱがあまりついてないでしょう?
葉っぱにも栄養分がいっぱいあるから捨てずに全部食べましょう。

横山代表では、採った野菜を洗い場に持って行きますよ。
泥を落として、よく洗ってください。

――――わー、きれいになった~!

――――もっと洗いたいよ。

わいわい賑やかに作業する子供たちはイキイキとして、みんなとても楽しそう。
この日は人参、ねぎ、大根、かぶ、さつまいもの5種類を収穫しました。

一緒に料理を作るコミュニケーションも
子供の食育につながります

収穫した野菜をいただく準備をしている間に、みんなでおむすびを作ることに。炊飯器で炊いたごはんを、まずはおひつに移します。

後藤先生これからみんなでおむすびを作りましょう。
おひつって知ってる? 見たことがある人いるかな?

――――見たことなーい。

――――知ってる。うちにもあるよ。

後藤先生あら、使っているおうちがあるなんていまどき珍しいわね。
昔は各家庭にあったんですよ。
おひつに入れると、ごはんが中でほどよく蒸れて美味しくなるんです。
ところで、ごはんをお茶碗に入れることを何て言う?

――――えーと、“盛る”?

――――なんだっけ?“入れる”かな?

後藤先生“よそう”って言わない?

――――そうだ!“よそう”って言う。

後藤先生“よそう”というのは服装と同じで、きれいに入れるという意味なんですよ。どうしたらきれいに見えるかな? じゃ、ごはんを器によそってみて。そして、手に水をつけてからお塩をちょっとつけましょう。
そしたらごはんを手にのせてキュッと押すように握ってみて。ギューっと押すとかた くなっちゃうから、瞬間的にキュッと押して放すのがコツです。
しっかり握らないと固まらないけど、中はふっくらしてないと美味しくないの。けっこう難しいのよ。キュッ、パッ、キュッ、パッというかんじで握ってみて。

――――キュッ、パッ、キュッ、パッ(一同)

――――ごはんが手についちゃうよ。

後藤先生ご飯粒がくっつかなくなったらもう大丈夫よ。みんな上手上手。
コツがわかってきたようね。はい、できたらお皿に並べてください。自分が握ったのがどれかわかるようにしておいてね。

――――はーい!大きさと形でわかるよ。

――――小さくて可愛いね。

自分で採って、作って、味わう。
楽しい体験の中に多くの学びがあります

おむすび作りが終わるころには、収穫した野菜を土鍋でコトコト煮込んだ具だくさんの汁物も完成。
豚肉とお味噌を最大限に抑えた、野菜のうまみがたっぷり出た汁は、塩を少し加えただけで十分美味しく仕上がりました。
テラスに場所を移して、いよいよ試食タイムに。

後藤先生みなさん今日はお疲れさまでした。ではいただきましょう。

――――いただきまーす(一同)

――――わぁ、美味しい~!(一同)

後藤先生採れたての新鮮なお野菜は美味しいね。野菜からたくさんお出汁が出るから、ほとんど味付けしなくてもこんなに美味しいのよ。
自分で握ったおむすびの味はどう?

――――美味しい~!(一同)

――――野菜のお代わりある?

――――私も私も~。

という調子で、あっという間に土鍋はからっぽに。大好評のうちに試食会は終わりました。残った野菜はおみやげに。
収穫した野菜は市価と同じくらいの値段で購入できます。楽しかった収穫体験を思い出しながら、家庭でいただくお母さんの野菜料理は忘れられない味になるはずです。

食に関心を持ち、家族で楽しく
食卓を囲むことがなにより大切

ふだんはゲームで遊んでいるという子供たちも、土に触れている目はキラキラと輝き、飛んだり跳ねたり、喜々として本当に楽しそうでした。
自然と触れ合いながら実際に野菜作りの場を目で見たり、話を聞いたり、収獲したものを調理して味わうトータルな体験が、子供たちの食への興味を引き出し、自分が収穫した野菜へのいとおしさや、食材に感謝していただく心を養うのだと実感した1日でした。何も難しく考える必要はありません。
時間があればいろいろな体験をさせてあげればいいのです。まずは毎日の食事で旬の食材を使って、お母さんが料理づくりを楽しんでください。
家族一緒に楽しく食べることこそが食育だと思うので、無理せず気楽にできることから始めましょう。

  • 会員制農園ポモナ
  • 会員制農園ポモナ

撮影協力/会員制農園ポモナ

「ポモナ」は、都心からほど近い自然溢れる場所で野菜作りや収穫体験ができる会員制農場。
本格的に野菜作りをしたい場合は、13平米の区画で土作りから種や苗の植え付け、収穫までをスタッフとともに行う野菜作り会員(4月~翌1月 ¥13,800/月)、収穫だけを楽しみたい場合は、摘み取り会員(入園料1家族1回¥1,500+収穫した野菜の料金)と、気軽に参加できるシステム。獲れたての野菜をバーベキューやダッチオーブンで味わうことも可能(要予約)。

東京都小金井市関野町2-4-3
☎042-388-8381
営業 10:00~17:00 / 休 火曜・水曜

後藤加寿子
PROFILE/後藤加寿子さん茶道武者小路千家十三世家元有隣斎と千澄子の長女として京都に生まれる。
同志社大学文学部で美術史を専攻し陶磁器の研究に携わる。
茶懐石料理研究家の第一人者でもあったお母様からの影響は大きいながらも、自ら海外にも積極的に出かけ、現地の食材や新しい調理器具を取り入れるなど、現代の家庭でも作りやすくアレンジした独自のスタイルで“和の食と心”を伝えている。
本格茶懐石と家庭料理、対極にあると思われがちだが実は根本は同じとのこと。近年では、この2つを柱に教室を主催。また、一般社団法人和食文化国民会議(略称:和食会議)の顧問も務めている。
著書に『おいしいね。まずはおだしで。』(文化出版局)、『茶懐石に学ぶ日日の料理 』(文化出版局※2011年、世界の優れた料理本を表彰するグルマン世界料理本大賞の「食の文化遺産特別賞」を受賞)など多数。後藤加寿子さん、講演会のお知らせ
連載第十三回予告ところで、お茶、飲んでますか?
飲ませていますか? 日本の食卓から「お茶」が
消えていくことの残念さについて

撮影/鍋島徳恭 取材/秋山美英