日本料理のお品書き難読漢字クイズ 第5回は珍味&郷土料理編です!
日本料理のお品書き難読漢字クイズ 番外編:珍味&郷土料理編
会席料理のお品書きに出てきそうな料理の難読漢字クイズを、連載で出題しています。第1回から第4回までは、会席料理の流れに沿って出題してきましたが、第5回は番外編として、難読漢字の宝庫ともいえる珍味と郷土料理から問題を作ってみました。100問出題の連載企画の最終回、是非チャレンジしてみてください。
番外編1:珍味
会席料理の献立のなかでも、ホヤ、コノワタ、カラスミなどの珍味とされる食材の難読漢字を紹介してきましたが、まだまだネタがあるのが珍味です。酒の肴が多いということで、お酒の好きな方に有利な問題かもしれませんね。産地もヒントです。
① 鮭冬葉(北海道・東北地方) そのままでも、炙って食べても美味しい、つまみですね。
② 蝗の佃煮(長野県など) 魚編の漢字ばかりでしたが、虫偏登場です。
③ 酒盗(鹿児島県・高知県など) これを酒の肴にすると、酒の量が増すということから名づけられました。
④ 女奮(北海道) 少しクセのある黒色ととろみが特徴の酒肴です。
⑤ 莫久来(三陸地方) こちらも塩辛。名前の由来は、原料のひとつである「ホヤ」の形が「機雷(きらい)」に似ていることからと言われています。
⑥ 豆腐餻(沖縄県) 赤い色が特徴的な、沖縄の島豆腐を使った醗酵食品です。
⑦ 寒造里(新潟県妙高地方) 珍味の食材というより、とうがらしで作られた調味料です。
⑧ 野蒜の油味噌(栃木県・那須高原) 山菜というより土手などに生えている、農村では身近な植物です。
⑨ 氷下魚の一夜干し(北海道) 氷の下の魚と書かれるのは、氷を割って漁をしたことからとか。
⑩ 玉筋魚の釘煮(兵庫県など) その稚魚は東日本で「コウナゴ(小女子)」西日本で「シンコ(新子)」と呼ばれています。
【解答】
① 鮭冬葉 ●さけとば ……秋鮭を半身におろして皮付きのまま縦に細く切り、海水で洗って潮風に当てて干したものです。
② 蝗の佃煮 ●いなごのつくだに ……イナゴはバッタの仲間の昆虫。これを醤油、砂糖、水あめなどで煮た甘辛い佃煮は、海産物の少ない山間部での重要なたんぱく源ともなっていました。
③ 酒盗(鹿児島県・高知県など) ●しゅとう ……一般的にはカツオの内臓の塩辛のことで、生産地の鹿児島、高知は、カツオの水揚げの多いエリアのひとつとして知られていますね。カツオ以外にもマグロやサケ、サンマなどでも作られています。
④ 女奮(北海道) ●めふん……サケの背わた(腎臓=血合い)を塩辛にしたものです。サケ一尾から杯1~2杯ほどしか取れない貴重な食材を塩だけで漬けたもの。アイヌ語の「メフル(=腎臓)」から転じた名前とか。
⑤ 莫久来(三陸地方) ●ばくらい……ホヤとコノワタ(ナマコの内臓の塩辛)という2つの珍味の王者から出来る塩辛のことです。
⑥ 豆腐餻(沖縄県) ●とうふよう……島豆腐を米麹、紅麹、泡盛で発酵させた食品で、赤い色は紅麹によるもの。泡盛と一緒に食すのが最高とされる酒肴です。
⑦ 寒造里(新潟県妙高地方) ●かんずり……「寒作里」とも表記されます。塩漬のトウガラシを雪にさらし、塩、麹、ユズなどを加えて発酵・熟成させたもの。もともとは食材でしたが、鍋物やうどん、みそ汁の調味料、刺身などの薬味として使われるようになりました。
⑧ 野蒜の油味噌(栃木県・那須高原) ●のびるのあぶらみそ……ノビルはタマネギのような小さな球根と葉が食用にされています。みそ汁の具や浅漬けなどでも食されていますが、味噌と砂糖で香ばしく炒める家庭料理の油味噌は、ご飯のお供として人気です。
⑨ 氷下魚の一夜干し(北海道) ●こまいのいちやぼし……そのまま酒肴として、また少し炙ってマヨネーズや七味唐辛子などで頂きます。コマイはマダラやスケトウダラなどと同じく、日本の近海に生息するタラ類です。
⑩ 玉筋魚の釘煮(兵庫県など) ●いかなごのくぎに……幼魚を醤油やみりん、砂糖、生姜などで煮込んだ佃煮のような料理。細身の魚で、煮込むと茶色く曲がった形が錆びた釘に似ていることからこの料理名になったとされています。
番外編2:郷土料理
旅先で頂きたいのは、やはりその土地のオリジナル感あふれる郷土料理です。その味、その匂いは、旅の記憶を色濃いものにしてくれますね。連載企画の最終10問です。
① 鶏飯(鹿児島県奄美群島) 日本各地にある「とりめし」と同字異音なのでよく間違われますが、別の食べ物です。
② 治部煮(石川県・金沢) 煮込んでいるときの音からこの名がついた説もあります。
③ 鰍汁(北海道) 「鍋こわし」との別名を持つ鍋料理です。
④ 片木蕎麦(新潟県・魚沼地方) この漢字はソバを盛り付ける器の名前です。
⑤ 氷頭膾(北海道) 元々は鮭の獲れる地方の郷土料理ですが、今では新巻きザケを使っておせち料理などにも出され全国的に広まっています。
⑥ 卓袱饂飩(香川県) 長崎県の卓袱料理は、大皿に盛られたコース料理を円卓などで各人取り分けて頂くものですが……
⑦ 火場焼(三重県・志摩地方) 「かばやき」ではありませんね。
⑧ 飫肥天(宮崎県・日南地方) 地名です。そして天が付くということで揚げ物ですね。
⑨ 皿鉢料理(高知県) 現在では、大皿に盛った刺身などを主体とする宴席の料理を言うようにもなりました。
⑩ 三五八漬け(福島県) 福島県以外にも山形県や秋田県でも見られる郷土料理の漬け物です。
【解答】
① 鶏飯 ●けいはん……「とりめし」が丼物や炊き込みご飯などであるのに対し、この「けいはん」はだし茶漬けに近い食べ物です。
② 治部煮 ●じぶに……治部煮は金沢の代表的な郷土料理。鶏肉や鴨肉に片栗粉、そば粉、小麦粉などをまぶして、生麩や野菜と一緒に濃いめの煮汁で煮る料理です。名前の由来は「じぶじぶ」と音を立てて煮るからとも、人名からとも。
③ 鰍汁 ●かじかじる……あまりに美味しいので箸で鍋の底をつついて鍋を壊してしまうという「鍋こわし」との別名のある北海道の鍋料理です。使われる「カジカ」は淡水魚ではなく、北海道などの沿岸で漁獲される海水魚のほう。
④ 片木蕎麦 ●へぎそば……ソバのつなぎにフノリという海藻を使い、強い弾力性のある食感のソバ。一口ほどに小分けしたものを、片木(へぎ)という木製の四角い器盛って供されます。
⑤ 氷頭膾 ●ひずなます……氷頭(ひず)とは鮭の鼻先の軟骨部分のことで、これを酢締めにして大根などと合わせて膾(なます)にした料理。コリコリとした食感で、トッピングにイクラを乗せるときもあるとか。
⑥ 卓袱饂飩 ●しっぽくうどん……鶏肉、油揚げ、大根、ニンジン、さといもなどをだし汁で煮込み、ゆでたうどんにかけたもので、香川県では寒い時期に食べられます。
⑦ 火場焼 ●ひばやき……三重県志摩地方の、生きたままのサザエ、アワビ、ハマグリ、伊勢海老などを網に乗せて焼く郷土料理です。
⑧ 飫肥天 ●おびてん……魚肉の練り物で、揚げかまぼこのようなものです。すり身に豆腐を混ぜて柔らかくして、醤油とともに味噌で味付け、黒砂糖を混ぜるのが特徴的です。飫肥は日南市にある地名で、城下町として栄えました。
⑨ 皿鉢料理 ●さわちりょうり……もともとは高知県の郷土料理。神事の際の儀式食から発展したもので、もともとは刺身の皿、焼きものや煮物などを盛った皿、そして寿司の皿と、三枚の皿が基本とされていました。現在では各地に形を変えて存在するようになっています。
⑩ 三五八漬け ●さごはちづけ……漬け床に、塩、米麹、米を3:5:8の分量で使うことからこの名前に。米麹の甘みが特徴的な漬け物です。野菜以外にスルメやカズノコなどを混ぜることもあるとか。
いかがでしたか? この和食の難読漢字シリーズは 第1回:先付&椀物編 第2回:向付&鉢肴編 第3回:強肴&止め肴編 第4回:食事&水菓子編 も公開されていますので、まだチャレンジしてない方も再チャレンジしてみたい方も、ご覧いただければと思います。