日本料理のお品書き難読漢字クイズ 第2回は向付&鉢肴編です!
日本料理のお品書き難読漢字クイズ第2回:向付&鉢肴編
会席料理のお品書きに出てきそうな料理の難読漢字クイズを、連載企画で出題しています。第1回の先付&椀物編に続いては、向付&鉢肴編となります。この回は、刺身、酢の物、焼き魚などの焼き物が料理の基本ですので、魚介類の難読漢字がほとんどとなります。今回も難易度高し。前回と同じく一般の方では5割以上、和食関係の方には8割以上の正解率を期待しておりますが、いかがでしょうか?
3品目:向付
「むこうづけ」です。主にはお刺身や酢の物の類が多く、「お造り」とお品書きに書かれていることもあります。もともとは茶懐石の場で折敷(膳)の手前にご飯とお汁を置き、その奥(向こう)に置かれた料理ということからこの名がきています。
① 間八の小川造り寿司ネタでも有名な高級魚です。
② 魳の昆布じめ英名はバラクーダという魚です。
③ 海鞘のわた和え三陸地方での食用が多く、その形から「海のパイナップル」とも。
④ 鱧の落とし家庭で「骨切り」をすることは難しいとされる魚です。
⑤ 黍女子の菊花造り鹿児島県の郷土料理としても有名な魚ですね。
⑥ 細魚の鳴門造り下あごの長さが特徴的な、漢字の通り細身の魚です。
⑦ 鯒の焼き霜造り大きなひれをもつ平たい体で、海底に腹ばいになって生息する魚の総称。
⑧ 鶏魚の酢締め東寺巻き背びれが鶏のとさかに似ていることから、この字があてられたという説もあります。
⑨ 鮃の剥ぎ造り魚編に「平」で何となくイメージできませんか。2番目の漢字は料理法です。
⑩ 剣先烏賊の大原木造り最初の漢字は先付のところにも出てきた軟体動物の種類。2番目の漢字は料理法です。
【解答】
① 間八の小川造り ●かんぱちのおがわづくり ……おそらくカンパチは読める方が多数かと。でももしか して似ているので出世魚のブリの小さい頃の呼び名と勘違いされている方もいらっしゃるのでは。カンパチは別の魚です。
② 魳の昆布じめ ●かますのこぶじめ ……カマスは人間に対して攻撃的で、時には鮫よりも恐ろしいとされることもあるそうです。昆布締めは「こんぶじめ」ではなく「こぶじめ」で、昆布〆などの表記も出てきます。
③ 海鞘のわた和え ●ほやのわたあえ ……ホヤは「老海鼠」とも書きます。こちらは海鼠(ナマコ)に似ているから。よくホヤ貝と呼ばれますが、貝の種類ではなく原索動物と呼ばれる種類の動物です。
④ 鱧の落とし ●はものおとし ……ハモの湯引きのこと。熱湯にくぐらせ氷水に落とす調理方法が名前の由来。梅肉や酢味噌で頂く京都の夏を代表する料理ですね。
⑤ 黍女子の菊花造り ●きびなごのきっかづくり ……キビナゴは当て字の多い魚で、「黍魚子」「吉備女子」「吉備奈仔」などの表記もあります。全体が銀色のなかに青色の帯模様のあるニシン科の魚です。
⑥ 細魚の鳴門造り ●さよりのなるとづくり ……サヨリは「針魚」と書くこともあり、こちらの表記は漢名からです。鳴門造りは、鳴門の渦潮に見立てて刺身を渦巻き状に細工した料理法。
⑦ 鯒の焼き霜造り ●こちのやきしもづくり ……コチはマゴチ、メゴチ、ネズミゴチなど。ふぐ刺しのような薄造りの刺身は、別名「テッサナミ」とも言われる高級魚です。焼き霜造りは皮目を強火で炙る料理法。
⑧ 鶏魚の酢締め東寺巻き ●いさきのすじめとうじまき ……イサキは漢名の「鶏魚」以外に「伊佐木」「伊佐幾」などの当て字もあります。「東寺巻き」は湯葉巻きのこと。東寺は湯葉の別名で、京都の東寺(教王護国寺)で湯葉が作られたことから来ています。
⑨ 鮃の剥ぎ造り ●ひらめのへぎづくり ……ヒラメは「平目」という表記をよく見かけますが、難読漢字的には「鮃」にて出題させていただきました。剥ぎ(はぎ)ではなく「へぎ」と読み、はぐように切るという意味です。
⑩ 剣先烏賊の大原木造り ●けんさきいかのおはらぎづくり ……ケンサキイカは読めましたよね。大原木造りは約5㎝にさく取りした魚やイカを細く切り、三つ葉、昆布、平湯葉などで束ねた刺身のこと。大原女造りともいわれ、こちらは京都の大原女が頭に載せて運んだ薪に似ているからという由来もあります。
4品目:鉢肴
「はちざかな」です。焼き魚などの焼き物。会席料理ではメインディッシュのひとつと考えられています。
① 蒸し鮑バター焼き「鰒」「蚫」とも表記する高級食材です。
② 公魚の筏焼き 冬の風物詩ともいえる独特の釣り方で有名な、寒冷地に生息する淡水魚です。2番目は木、竹、蔓などで造られたものです。
③ 鰤の幽庵焼き 出世魚です。冬の時期に獲れる富山湾のブランド魚としても有名。
④ 春子鯛の姿焼き鯛とありますが、鯛の種類の名前ではありません。
⑤ 疣鯛の玉子巻繊焼き こちらも分類上では鯛の種類ではありません。干物の材料としても人気の魚です。
⑥ 横輪の照り焼き本まぐろの幼魚のことです。
⑦ 鯧の西京焼き ひしがたともいえる体形が特徴の、主に関西で獲れる高級魚です。
⑧ 秋刀魚の潤香焼き 主には鮎の内臓で作った塩辛のことを指しますが……
⑨ 牛肉とアスパラの八幡巻き 正月には鶏肉を材料にしたこの料理が出てきますね。
⑩ 甘鯛と菠薐草の黄身味噌朴葉包み焼き 最初の漢字は日常で見かける野菜の種類。2番目の漢字は殺菌作用もある植物の葉。
【解答】
① 蒸し鮑バター焼き ●むしあわびばたーやき ……「磯の鮑の片思い」ということわざもありますが、これは万葉集の和歌に由来したものだとか。二枚貝ではなく、片方の殻しかない巻貝の形から「片思い」が連想されたという説があります。
② 公魚の筏焼き ●わかさぎのいかだやき ……ワカサギは「鰙」「若鷺」とも書かれますが、「公魚」と書くのは江戸時代に霞ヶ浦で獲れたワカサギを公儀御用魚としたからとか。いかだ焼きは白魚やわかさぎなどの小魚を数尾並べて串を打ち、いかだ状にして焼いた料理。
③ 鰤の幽庵焼き ●ぶりのゆうあんやき ……地方によってその呼び方は変わってきますが、関東ではおよその体長によってワカシ(35cm以下)→イナダ(35~60cm)→ワラサ(60~80cm)→ブリ(80cm以上)と呼ばれています。幽庵焼きはしょうゆ、みりん、酒に柚子やかぼすを付けた調味液「幽庵地」につけて焼いたもの。
④ 春子鯛の姿焼き ●かすごだいのすがたやき ……カスゴダイは真鯛の10センチくらいの稚魚のことです。姿焼きは尾頭付きで焼くことで、鯛の姿焼きはお祝いの席によく出てきますね。
⑤ 疣鯛の玉子巻繊焼き ●いぼだいのたまごけんちんやき ……イボダイは、関東などではエボダイとも。鯛といってもスズキ目イボダイ科の魚で鯛の種類ではありません。巻繊焼きとは「巻繊地」を魚や鶏肉などで巻いたり、包んだりした料理で、「巻繊地」は細く切った野菜を炒めて崩した豆腐を入れて加熱したもの。玉子を主体にしたものが玉子巻繊焼きです。
⑥ 横輪の照り焼き ●よこわのてりやき ……本マグロの幼魚には淡色の横じまがあるため、主に関西でこう呼ばれています。クロマグロの幼魚のことを指すことも。
⑦ 鯧の西京焼き ●まながつおのさいきょうやき ……マナガツオは「真魚鰹」「真名鰹」とも表記。と言ってもカツオの仲間ではなく、スズキ目マナガツオ科の魚で、ひし形ともいえる体形が特徴的です。
⑧ 秋刀魚の潤香焼き ●さんまのうるかやき ……うるか(潤香のほかに鱁鮧、湿香なども)は、本来アユの内臓の塩辛ですが、広く魚の内臓、あるいはそこに身を混ぜて作った塩辛も差します。
⑨ 牛肉とアスパラの八幡巻き ●ぎゅうにくとあすぱらのやわたまき ……はちまんまき、ではありません。現在の京都府八幡市はゴボウの産地で、ゴボウを煮て下ごしらえしたものに、ウナギやどじょうを巻きつけて、さらに煮るか焼いて調理した料理です。
⑩ 甘鯛と菠薐草の黄身味噌朴葉包み焼き ●あまだいとほうれんそうのきみみそほうばつつみやき ……ホウレンソウは「法連草」「宝連草」とも。ちなみに「菠薐」は「ペルシャの」という意味でペルシャ地方で栽培されたと考えられているからとか。朴葉(ほうば)はモクレン科の植物、朴の木(ホウノキ)の葉のこと。七輪に朴葉を乗せて、その上に味噌などを乗せて食材を焼く朴葉味噌焼きは、岐阜県飛騨高山の郷土料理です。
いかがでしたか? この和食の難読漢字シリーズはこれ以降 第3回:強肴&止め肴編 第4回:食事&水菓子編 第5回:番外 珍味&郷土料理編 と続く予定です。引き続きチャレンジしてみてください! 第1回:先付&椀物編 も公開されていますので、まだチャレンジしてない方も再チャレンジしてみたい方も、ご覧いただければと思います。