豆腐百珍のすべて 52佳品 うずみ豆腐
時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)
【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。
今回ご紹介する52番の『うづみ豆腐』は、調理した豆腐に、湯取り飯(米を多めの水で炊き、沸騰したらざるに上げて水洗いし、再び蒸して作る飯。病人食。春日局が、食の細い三代将軍・家光のために作らせた七色飯にも入っている)をかけていただく料理を指します。
豆腐がまるで飯に埋もれているようだからこの名がついたのでしょうが、原本では「あつ灰にうづむ者と同名異様なり(火の気の残っている灰の中に、芋や餅などの食材を埋(うず)めて蒸し焼きにする料理と同じ名前なのはおかしい)」と、編集者である醒狂道人何必醇(せいきょうどうじんかひつじゅん)は異を唱えています。
確かに、食材を埋めるのと、埋もれて見えるようにかけるのとでは、調理法が全く違いますが、だからと言ってレシピを、「[九十八]雪消飯(ゆきげめし)の下(ところ)に出たり」と後述に委ねてしまう方が「異様なり」です。
そこで98番の『雪消飯』の記述を見てみると、「 [十八]しき味曾とうふの上へ、右の湯とり飯をよそひ、又は [四十九]備後とうふのうえへよそひ、或は木の芽田楽(1番)の上へよそふ。みなすべてうずみ豆腐といふ」とあります。
なのに、7番『草の八杯豆腐』の上へ湯とり飯をかけた料理は『雪消飯』。なんだかややこしいですね。
■うずみ豆腐レシピ
【材料】
⽊綿⾖腐…1/2丁
お好みの味噌…⼤さじ3
味醂…大さじ1
米…25g
⽊の芽(粉⼭椒でも可)…少々
【作り⽅】
1)⾖腐は⽔切りして⻑⽅形に切り、弱火で焼く。
2)味噌を味醂で溶いて弱⽕にかけ、とろみがつくまで練って田楽味噌を作る。
3)沸騰したお湯で米を煮て、勢いよく対流し始めたらザルにあけて水洗いし、茶碗に入れて蒸しあげる。
4)1の豆腐に田楽味噌を塗り、軽く焦げ目がつく程度に焼く。
5)椀に4を入れ、その上に3をかけ、木の芽を乗せる。
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(くるま うきよ)
時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』『歴史探偵』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。
著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)、『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)など多数。小説『蔦重の教え』はベストセラーに。
最新刊は『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』(東京書籍)。
http://kurumaukiyo.com
『江戸っ子の食養生』
『免疫力を高める最強の浅漬け』
『蔦重の教え』
『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』