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日々是和食

日本の旬を知りたい! [二十四節気の魚 4月]

いよいよ新学期の始まる四月ですが、今年は新型コロナウイルスの影響で何とも落ち着かない季節となりそうです。
四月にある二十四節気は、すがすがしく明るく美しいころとされる4月4日の「清明」と、雨が穀物を生む時期という意味の4月19日の「穀雨」です。
今回ご紹介するのは、潮干狩りなどの行楽とともに日本人の食卓にもっともなじみ深い貝と、この季節に桜の花のように美しい紅色に染まり、旬を迎える魚です。

清明●4月4日●春うらら、潮干狩り日和には

潮干狩りにふさわしい陽気になると、食卓の主役はアサリに。パスタに酒蒸し、味噌汁に潮汁、炊き込みご飯と、なんでもござれ。日本人の食卓にもっともなじみ深い貝ともいえるこのアサリ、全国的にみると、好みが分かれるようです。
日本一アサリ大好きな県民を選びなさい。


①青森  ②山梨   ③島根   ④沖縄

【解説】

アサリの家庭内消費(購入)量日本一は、意外にも甲斐(かい)の国、山梨県。なぜ海を持たない山梨県民がかくもアサリを好むのか。甲府市の関係者によると、「貝はもともと県内では高級品として扱われて、手に入るのは乾物や煮たものがほとんどで、祭りや祝い事のときにしか食べられなかった。新鮮な貝があたりまえのように流通する現在でも、山梨県民には貝に対するあこがれがあるのではないか」と推測する。
1日に約5キロのアサリが売れるという甲府市内の鮮魚店では、「ハマグリや赤貝などほかの貝は人気がなく、客の多くが“刺身はマグロ、切り身はサケ、貝はアサリ”と決めている節がある」という。それにしても謎が残る。
ざるの上にとって眺めると、その殻の模様や色の美しさについ見とれてしまう。モダンな幾何学模様にモノト-ンの渋い色合い。コム・デ・ギャルソン顔負けの素敵なデザインだ。左右で柄が違うところも個性的。さりげなく、こんな“天然おしゃれ”をしているところが憎い。外海のきれいな環境に棲んでいるものほど殻が薄く、斑紋も美しいといわれる。



生息環境によってこんなに違う殻模様。左上、浜名湖産、時計回りに千葉九十九里浜産、愛知三河湾産、熊本有明海産。

アサリにはビタミン12、カルシウムのほか、鉄や、コレステロールを下げるタウリンも豊富。、うまみエキスをたっぷり含み、縄文時代から日本人に親しまれてきた。



安くてうまくて、庶民に大人気だった「深川丼」は江戸時代のファースト・フード。いまも門前仲町、清澄界隈で味わえる。写真は“ぶっかけ”スタイル、ほかに“炊き込み”バージョンも。

東京湾がまだ美しい内湾であったころ、下町では「あさぁり、むきみ!」「あさり、からあさりぃ!」という呼び声で売り歩く子どもの声が響きわたり、江戸の朝はあさりの味噌汁で明けた。名物料理といえば「深川飯」。アサリのむき身をねぎとともに甘辛く、汁たっぷりに煮て、熱い丼飯にかけたもので、下町には必ず屋台が出ていた。
アサリといえば、砂出し。バットにアサリを重ならないように並べ、海水と同じ3%の塩水をひたひたになるくらい入れ、新聞紙などをかぶせて冷暗所で3時間から一晩おいておく。


春野菜をそえて、ボンゴレ・パスタに

アサリは日本のみならず、世界中で食べられているが、ヨーロッパでは1960年代半ばにアサリが激減してしまったためにアメリカから輸入し、アドリア海などで養殖するようになった。こう記すと現在の欧州のアサリは米国がルーツのようだが、実はこのアメリカのアサリ、もとをたどると明治時代に宮城県から輸出された養殖用のマガキに混ざって海を渡り、アメリカとカナダの西海岸で大増殖したものなのだ。
とはいえ、日本も1980年代前半をピークに、漁獲量が大きく減少。一部地域でアサリの養殖も行われるが、多くは自然繁殖に依存している。天然のアサリの出現量は年によって大きく変動する。
本州や九州では春と秋に、北海道では夏にそれぞれ産卵し、生まれたばかりのアサリの幼生は、海中を浮遊し、時には潮の流れにのって100kmも移動することも。2~3週間で、親に近い形の稚貝になると足糸と呼ばれる細い糸で海底の砂にくっつく。10ミリほどの大きさになると、砂に潜るようになり、25ミリを超えると産卵を始める。
好条件では、それこそ湧くように増えるが、10ミリに満たない稚貝はたくさんいても、20ミリ以上に大きくなる育つ前にいなくなってしまうことが多いという。


あさりの酒蒸し。コツはアサリをたっぷり使うことだけ。白ワインを使ってフレンチにしても。

ところで、アサリとシジミとハマグリの関係をご存知だろうか。室生犀星は「アサリのうた」という詩にこう書いている。

おまえのにいさんはといえば
ハマグリだとこたえる。
そんならシジミは孫かとたずねると
うんという。
きょうだいけんかはめったにしないが
アサリもシジミも
深い海の中にはついていけない。
にいさんのハマグリだけは、
きょうも深いところであくびをしている。

ちなみに、①青森、 ③島根、 ④沖縄はアサリの消費量がもっとも少ない3県である。

 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】②山梨 

 
 

穀雨●4月19日●セレブは貪欲。それがうまさの秘密

恵比寿さまに抱かれている姿でおなじみのこの魚。桜の咲く季節になると、桜の花のように美しい紅色に染まり、旬を迎えます。正岡子規が、うろこに散りゆく桜花を重ねて詠んだ句の下線部にふさわしい言葉を選びなさい。
俎板に 鱗ちりしく___


①桜海老
②桜鯛
③桜蛸
④桜鱒
【解説】

「俎板(まないた)に鱗(うろこ)ちりしく桜鯛」 情景が鮮やかに浮かびあがる句である。
それにしても、なんと立派な姿か。さすが、味といい、姿といい非のうちどころのない魚の王様、鯛である。

ひとくちに鯛といっても、アマダイ、キンメダイなど、タイと名のつく魚は300種近くある。
が、王者の風格にふさわしいのは、なんといってもこのマダイ。そして、お祝い事といえば、鯛。縄文時代の遺跡から鯛の骨が発掘されたり、平安時代の「延喜式」に朝廷への貢ぎ物として鯛のことが書かれていたり。江戸時代には、鯛が獲れると真っ先に将軍家に献上されたとか。
産地といえば、古くから瀬戸内海や兵庫県近海が知られる。摂津(大阪)湾には、江戸時代、マダイが産卵のために群れをなしてやってきたという。「魚島の鯛」と呼ばれ、大坂人を夢中にさせた。「魚島に桜鯛食わねば浪花人の恥」ともいわれ、井原西鶴の「日本永代蔵」には、魚島の鯛を漁期が過ぎても高く売るために、釣り針のかけぐあいを工夫して長く生かすことを夢見る話がでてくる。



明石で水揚げされたものは「明石鯛」として珍重される。明石と淡路島を結ぶ明石海峡大橋。橋の下に広がる海、播磨灘(はりまなだ)は昔から有名なマダイの漁場。なぜなら、播磨灘は、春はイカナゴ―阪神名物“くぎ煮”でおなじみ―の大産卵場となり、その雑魚目当てにエビやカニが集まる。マダイはこれが大好物。
マダイは、顔と向き合うとわかるが、丈夫な歯と発達した下あごをもち、甲殻類でも貝類でもバリバリ噛み砕く。あのうまみは、実はセレブとは思えないたくましい生活力からくるのだ。



●マダイは皮と身の間にうまみがあるので、皮に熱湯をかけて皮霜造りにするのもおすすめ。

マダイの旬は2月から5月にかけて。桜前線と同じように南からはじまり、北上する。桜鯛の旬をすぎると産卵後の「麦わら鯛」に。秋にはふたたび「紅葉(もみじ)鯛」として旬を迎える。
大きいほどいいとはいえないマダイ。おいしいサイズの目安として、昔から目の下一尺といわれ、体長40~50センチほどがもっとも美味とされる。だから、大相撲の優勝力士が満面笑みを浮かべて、1メートルはあろうかという特大サイズの鯛の尾の付け根をしっかりつかんで、高く差し上げるポーズに目利きたちは苦笑を隠さない。



●柳刃包丁の長さを使って一気に刺身を引く平造り(左)、斜めにうすくそぎ繊維を断ち切り柔らかく仕上がるそぎ造り(右)。桜色に輝く鯛の刺身のひき方を変えることで、皿の上に表情が生まれ、華やぎがいっそう増す。

ところで、鯛という漢字のつくりはなぜ「周」なのだろうか。魚へんの漢字にはどの魚にも諸説あるのが常ながら、「鯛」という漢字の由来説だけは妥当なものと思える。
蝦夷(えぞ)地(北海道)をのぞく昔の日本のどこでも(周=あまねく)見ることができ、周年(しゅうねん・一年中)とれることからといわれる。今でも北海道周辺をのぞき日本の沿岸のどこでもとれる。



●鯛のあら炊き。食材を無駄にしない心意気がつまっている。

マダイは良質のたんぱく質やミネラルを多く含むうえ、カロリーは牛肉、豚肉の半分以下。頭や骨は煮物や潮汁やかぶと煮にすると美味。とくに目の後ろの肉は絶品だ。骨はだしが出ておいしく、余すところなく使える、やはりセレブの名にふさわしい魚である。



●愛媛県南予地方の郷土料理、宇和島鯛めし。人間界のセレブたちも虜に。鯛めし目当てに宇和島通いの御仁も多いとか。宇和島市水産課 提供
 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】②桜鯛

 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年に東京・大阪で初めて開催。その後、地方開催の要望に応え、北は札幌、函館、八戸から南は沖縄糸満、鹿児島まで25の市町で開催へと広がり、小学生から80歳代まで世代を超えた累計2万4千名もの受検者を47都道府県から輩出しています。
昨年10回目を迎え、2019年6月23日(日)に酒田・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・鹿児島で開催されました。

詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/