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日々是和食

日本の旬を知りたい! [二十四節気の魚 10月]

9月末でもまだ真夏日を記録した日本列島ですが、10月に入ると「寒露」「霜降」と、冬も目前というような名称の二十四節気がやってきます。今年は10月8日が「寒露」、10月24日が「霜降」。
登場する魚は、いずれも秋を代表する味覚。調理法も実にバリエーションに富んだ食材です。

寒露●10月8日●心していただきたい神の魚

まばゆいばかりに輝く銀色の鱗(うろこ)。
秋もたけなわ、主産地の北海道では秋味の名で親しまれるこの魚が身を光らせて、産卵のために近海から生まれた川にのぼってきています。
アイヌの人々にとっては‘神の魚’として特別な存在であったこの魚を選びなさい。

①サケ
②シシャモ
③ニシン
④ホッケ

【解説】

鮭といえば北海道。アイヌ語では鮭を「カムイ・チェプ」(神の魚)とか「シペ」(本当の食べ物)と呼ぶ。鮭はアイヌの人々にとってたいへん重要な意味を持つ魚である。鮭には神が宿るとされ、川にのぼらぬ年は飢餓を意味したともいう。
秋から冬にかけて卵から孵化(ふか)した鮭は北海道の川で幼少期を過ごした後、雪どけの季節に川をくだる。オホーツク海を経てベーリング海とアラスカ湾を回遊し成長した鮭は、3~5年で成魚に。そして、産卵のために美しい自然がある北海道へと帰ってくる。鮭が生まれた川へ遡上(そじょう)を始めるのは9月頃から。北海道で秋鮭や秋味の名で親しまれるこれらのサケを、海に仕掛けた大型の定置網で獲っている。



アイヌの人々によるサケの豊漁祈願の儀式

産卵のために母なる川へと回帰する―母川回帰(ぼせんかいき)は、サケの魅力を語る上で欠かせない。各地にサケをめぐる言い伝えが残るのも、大海から生まれた川にちゃんと戻ってくる鮭に、人々が神秘感をいだいたからだろう。
岩手県や山形県には旧暦の11月15日(現在の12月)の夜、鮭のオオスケという王が眷属(けんぞく)をつれて、「オオスケコスケ、いまのぼる」と言ってやってくるという言い伝えがある。この声を聞くと三日のうちに命を失うといって人々は外出を慎み、そしてこの日が過ぎると川に鮭の群れがのぼってくる。
サケがのぼる河川として日本の南限とされる遠賀(おんが)川上流、福岡県嘉穂町の鮭神社では、鮭は竜宮の遣いとして食用が禁じられてきた。
広大な海のなかをのびのび泳ぎ、2~3万㎞にもおよぶ長い道のりを旅してきた天然の生の秋鮭が店頭に並ぶのは一年で今だけ。塩漬けも冷凍もされていない、生のサケはまさに秋の訪れそのもの。実は味付けにいろいろ工夫できる素材ながら、意外に上手に利用する方法が知られていない。
朝ごはんの焼き鮭から、手間のかけ次第でもてなし料理にもなり焼くだけでなく、煮ても揚げてもおいしいサケ料理のレパートリーが秋の食卓に彩りを添えてくれる。



定番ひじきに煮ザケをあわせた「サケひじき」は、彩りよく風味が増す


醤油の香ばしさと柚の爽やかな香りをまとった揚げ物、「サケの竜田揚げ」


サケのおいしさとキャベツの甘みを豆乳ベースでいただく和風クリーム煮

旬と向き合うなら、ひと手間かけて旨みをぐっと引き出し、いつもの食卓に並ぶ焼き鮭とひと味ちがう季節のごちそう、塩麹漬けにしてみるのもひとつ。そして旬の生筋子でつくるいくらのしょうゆ漬けはつくりたて、できたての食感を楽しめる今だけのぜいたくだ。



自分の手でつくれば、いちばん好きな味になる

秋鮭、秋味と呼ばれるのは日本生まれのシロサケ。正月用の新巻きにされるのはこの種だ。これが春に北洋で回遊している時期に獲れると「トキザケ」と呼ばれ、特に脂がのった高級品として知られている。
養殖のアトランティックサーモンなどと較べ高タンパクにして、低カロリー、低脂肪のヘルシー食材でもある鮭は、石狩鍋に三平汁、ちゃんちゃん焼きにはらこめし、酒の肴に氷頭なます、酒びたしと捨てるところなく使われる、各地に伝わる郷土の味もまたよしだ。



北海道名物「石狩鍋」


新潟・村上伝統の味「鮭の酒浸し」


宮城県にルーツをもつ鮭の親子丼「腹子飯」

アイヌの人たちによると、鮭の目は記憶を良くするし、背わたは貧血にもきく、頭から尾まで捨てるところはどこにもない、という。
だから獲るときも料理するときも、神への感謝の気持ちを忘れてはいけない、と。神の魚、心していただきたいもの。

選択肢の②~④いずれも、北海道を主産地とする魚介である。なかでも、晩秋に産卵のため太平洋側に注ぐ川をサケと同様、遡上するシシャモ(柳葉魚)はアイヌの神によって柳の葉からつくられたという伝説に由来する名をもつ。

 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】①サケ


 

霜降●10月24日●笑顔こぼれる 秋の味覚

この輝き、まさに旬真っ盛り。脂ののりも抜群で、酢でしめていただくのも良し、炊き立ての新米と一緒に塩焼きもたまりません。漁の最盛期を迎えているのは、東北の三陸沖。身が太り、まさに食べ頃の秋の味覚を選びなさい。

①アジ
②イワシ
③サバ
④サワラ

【解説】

日本の食卓に欠かせない青魚、サバ。秋真っ盛りのこの頃三陸沖に揚がるサバは、4月頃伊豆半島沖で産卵し、黒潮にのり北上、9月頃北海道沖でたっぷりエサを食べこみ、今度は産卵に備え親潮にのって北の海から下る。親潮と黒潮がぶつかる三陸沖はエサとなるプランクトンが豊富な国内有数のサバの漁場だ。
日本近海のサバにはマサバとゴマサバがあり、南日本に多い春~夏のゴマサバに対し、マサバは“秋さば、寒さば”の言葉があるように、秋から厳寒にかけてがおいしい時季。
脂ののった秋さばは味わい方さまざま。塩焼き、みそ煮、しめ鯖、竜田揚げ、文化干し・・・といずれも家庭料理の王道メニューだ。
なかでも、マサバの真骨頂はみそ煮だろう。脂ののったサバにこってりしたみそが見事によくあう。さば以外、みそ煮という料理はあまりなじみがない。日本人の祖先の知恵に脱帽だ。



味が染みやすくするため切り身に包丁を入れ、片栗粉をつけて油で揚げる。これを短い時間で煮ると、衣で脂と旨みが閉じ込められたふわとろのみそ煮に。

“さばの生き腐れ”といわれるようにサバは傷みやすいことでも有名。冷蔵保存がない時代、輸送は大変だった。福井県小浜(おばま)から京へと通じる若狭街道70㌔余りは“鯖街道”と呼ばれ、若狭湾で獲れたさばを塩して行李で担ぎ、徹夜で京へ。一晩かけて終点につくと、塩加減はちょうどよい頃合いに。それを酢でしめ、京名物・さばずしが誕生した。



画像提供:㈱いづ重

一方、鯖街道起点の小浜にはサバのうまみを知り尽くしたこの土地ならではの郷土の味がある。脂がのったさばを一本丸ごと竹串に刺し、炭火で豪快に焼き上げた“浜焼き鯖”だ。



串を抜いて適当な大きさに切り分け、しょうが醤油や三杯酢、大根おろしを添えていただくのが定番の食べ方。近年はこの浜焼き鯖をアレンジした若狭名物“焼き鯖寿司”が空弁から火がつき、いまや全国で不動の人気を誇る。
画像提供:福井県観光協会

このほかにも、北陸一帯の名物、鯖の糠漬け“へしこ”や、へしこを塩抜きして米と麹で漬けた“なれずし”、独自の醤油仕立ての干物“おばま醤油干”など固有の鯖文化が小浜に今も根付いている。

サバを読む、という表現がある。生き腐れするほどに鮮度落ちが早い魚ゆえ、目の子勘定(目算)でろくすっぽ数えることなしで流通していた。それで良し、とするほど獲れたが、今は違う。漁獲制限の対象になるほど漁獲量も減り、高級白身魚をはるかにしのぐ値がつくモノすらある。
その代表格、豊後水道の関さば(大分佐賀関)や岬(はな)さば(愛媛佐田岬)、八戸前沖さば、金華さば(宮城石巻)、松輪の黄金さば(神奈川三浦)といったブランド鯖や新鮮な魚が手に入れば刺身もいいが、生で食べるときはしめ鯖―関西では生(き)ずしといい、これを用いた鯖棒ずしやバッテラが親しまれる―に。



全国でも珍しい、サバを刺身で食べる博多名物‘ごまさば’。ゴマサバでなく、マサバの刺身に胡麻を和え、醤油とわさびを混ぜて食す。
 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】③サバ

 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年に東京・大阪で初めて開催。その後、地方開催の要望に応え、北は札幌、函館、八戸から南は沖縄糸満、鹿児島まで25の市町で開催へと広がり、小学生から80歳代まで世代を超えた累計2万4千名もの受検者を47都道府県から輩出しています。
今年10回目を迎え、2019年6月23日(日)に酒田・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・鹿児島で開催されました。

詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/