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日々是和食

日本の旬を知りたい! [二十四節気の魚 6月]

6月にある二十四節気は「芒種」と「夏至」。
「芒種」は稲や麦などの種を差し、種まきの季節が到来していたことを表していました。
そして6月22日は日本において一番昼間の長い日、「夏至」となります。
以下は日本さかな検定協会の監修による、それぞれの時期の旬な魚に関連した出題です。
この日々是和食でも取り上げた問題ですが、一気に2題の提出で復習していただこうというもの。
是非チャレンジしてください。

●芒種●6月6日●とろける刺身 入梅いわし

イワシ類の水揚量が全国1位の千葉県。その主要水揚港である銚子で、梅雨の時季に水揚げされる“入梅いわし”は、一年のうちでもっとも脂がのっておいしくなります。魚体側面の斑点にちなんで、「七つ星」ともいわれるこの入梅いわしの正体を選びなさい。


①ウルメイワシ
②カタクチイワシ
③シラス
④マイワシ

【解説】

イワシの種類は世界で300種以上といわれ、日本周辺だけでも26種類ある。イワシがニシン科に属すように、実はニシンやキビナゴもイワシの仲間。私たちの食卓でよく見かけるのはマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシ、そしてちりめんや釜揚げでおなじみのシラス――カタクチイワシやマイワシの稚魚――だ。漁獲量もこの順で、ふつういわしといえばマイワシをさすが、目刺しやごまめ、煮干になるカタクチイワシ、丸干しに向くウルメイワシも知っておきたい。
種類によって獲れる時期が異なるが、マイワシは脂がのる初夏から秋にかけて美味となる。とくにこの時期、産卵に備えて大きく育ち、栄養をため込む。なかでも、梅雨入りのころから水揚げがはじまる、銚子の“入梅いわし”はまるまると太り、口の中で溶けるほど脂のりが抜群だ。



別名「七つ星」のとおり、体には黒い斑点がいくつも並ぶマイワシ

煮ても焼いてもおいしい入梅いわしだが、とりわけ氷水で締め、三枚におろした刺身は絶品で、これまで抱いていたイワシのイメージが覆るはず。そのおいしさには、2つのわけが。
梅雨入りのころ、多くの植物性プランクトンが利根川から流れ込み、銚子沖は「葉っぱ潮」と呼ばれるほど青く染まる。その潮が大量の動物性プランクトンを育み、イワシの潤沢なエサになる。
もうひとつはチームワークによる、高鮮度を保つ漁法にある。銚子のイワシはおもにまき網漁法で漁獲される。操業は伝馬船という魚群探索船、まき網本船、運搬船が一つのチームを組み伝馬船が魚群を発見すると網船2隻が網を入れる。群を囲んだ網を少しずつ絞り込んでいき、クレーン利用のたも網で運搬船の水槽に移す。運搬船は水槽に氷を入れ、港に急ぐのだ。
新鮮さが際立つ入梅いわしはまず、お造りで。手早くおろして皮をむいたら、そぎ切りに。しょうが醤油につけて口に運ぶと、ぶ厚い脂が舌の上でとろける。



銚子ではこの時季、もっぱら生のまま握られるが、江戸前鮨の多くは三枚に下ろしたから塩をふり、酢で洗ってから握る。塩で軽く締めることでイワシ独特の生臭みを取り去ると、風雅といえるほどの食味が生じてくる。

その刺身をねぎやしそなどの薬味とともにリズムよくたたいて、合わせ味噌で味付けすれば「なめろう」ができる。刺身とはひと味異なり、おもわず酒に手がのびるアテになる。



ねっとりした身に薬味がきいておいしい「なめろう」

このなめろうをすりつぶして、しそにはさんだら天ぷらにする。揚げることでイワシのうまみを閉じ込めるのだ。



しそのパリッとした食感と口に広がるジューシィなイワシの味わいがたまらない。

ところで、イワシは豊漁と不漁を数十年サイクルで繰り返す魚として知られている。最近でいうと1970~80年代は豊漁期。そして88年に約450万トンの大台にのせるが、それ以降は下降線をたどっていく。一時5万㌧にまで落ち込み、ピーク時の100分1を記録。大衆魚の代表、イワシが“幻の高級魚”になるのでは、と世間を騒がせたのは、つい先ごろのこと。
原因は、気候や海流などの環境変動説、イワシ自体に原因があるとする生物内因説など諸説あり、確定されていない。
今年は大漁が予測されているイワシながら、資源に見合った漁業秩序をつくる視点も大切なこと。26歳で夭折した童謡詩人、金子みすずのような目をもって。

朝やけ小やけだ 大漁だ
大羽いわしの 大漁だ
浜は祭りの ようだけど
海のなかでは 何万の
いわしのとむらい するだろう  「大漁」



私たちの食生活に欠かせない魚であると同時に、「海の米」とも「海の牧草」ともいわれ、世界中の海の生態系を支えるタンパク資源でもあるイワシ。それは海の食物連鎖の底辺に位置するということ。カツオやカジキ、マグロなど、イワシを餌にしている魚は多々いる。一致団結して集団で敵から身を守るため、大きな群れをつくり回遊している姿は、まるで巨大な一つの魚のよう。その色は海の青と同化する保護色にもなっている。
 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】④マイワシ     

●夏至●6月22日●きらめく夏、清流に女王奔(はし)る。

6月、日本各地の河川でこの魚の釣りが解禁になります。姿、味、香りのよさから“清流の女王”ともよばれ、古来、多くの釣り人や食通たちを唸(うな)らせてきました。初夏の清流の贈り物ともいうべき、この魚を選びなさい。


①雨子
②鮎
③岩魚
④鯉

【解説】

初夏の日差しを受けながら、清らかな水の流れに銀鱗(ぎんりん)を躍らせる鮎。そのすらりとした容姿の美しさ、香気溢れる食味のよさから“清流の女王”ともたたえられ、昔から日本を代表する川魚として愛されてきた。
神話のなかにも、鮎は縁起の良い魚としてたびたび登場する。たとえば『日本書紀』には、神武(じんむ)天皇が大和平定の成否を占うため奈良の丹生(にう)川に酒の入った壺を沈めたところ、大小の鮎が木の葉のように浮き上がる。これを吉兆として平定を成し遂げた、とある。また、神功(じんぐう)皇后が新羅(しらぎ)遠征の前に鮎釣りで戦況を占ったとの記述もあり、ここから「魚」と「占」を組み合わせて「鮎」の漢字が生まれたともいわれている。



川魚のなかでも、鮎ほど人々を魅了する魚はほかにない。季節の移ろいを愛でる日本人の感性を刺激する優美な姿と、香り高く繊細な味わいがその所以(ゆえん)だろう。

また、鮎は将軍家や皇室への献上品とされてきた歴史があり、あらためて日本人との深いつながりがうかがえよう。鮎は背びれと尾びれの間に脂びれがあることやその習性から、鮭や鱒と近縁の魚といわれる。産卵期は秋。川の中流から下流域でふ化した仔魚(しぎょ)は海に流され、岸に近い浅い場所でプランクトンを食べながら冬を越す。春になり、川の水が海と同じくらいの温かさになると川に戻って上流を目指す。体長5~7㌢ほどの成長した若鮎は川の流れに負けないほどのたくましさをもち、川底の石についた藻類を食べながらぐんぐん大きくなる。
とれたての鮎がスイカに似た独特の清々しい香りを放つのは、餌(えさ)となる藻類に由来する、とも。また、鮎は育った川によって香りや味が違うといわれるが、これは藻の違いや川の流れなどの環境によるものとされている。



「魚の塩焼きといえば、何といっても鮎だろう」と著したのは池波正太郎。淡泊ながら、香り高い風味は格別。塩焼きならば、脂ののる7~8月が最もおいしい時季といわれる。


清流に躍動する姿そのままに串を打つ‘おどり串’。鰭までおいしく食べられるよう化粧塩はまぶさず、焦がさず焼き上げる。

夏の間、川の上流で過ごした鮎は秋になると卵を抱え、産卵のために再び下流におりてくる。これを「落ち鮎」と呼び、卵を産み終えると海に流れて、わずか一年でその短い一生を終える。
川と海とを旅しながら、四季のなかで儚(はかな)い命をまっとうする鮎は、文献に取り上げられた歴史も古い。712年(和銅5年)に編纂された『古事記』には、すでに「年魚(あゆ)」という名前で登場する、つまり、この時代には秋になると産卵し、死滅する生態まで知られていたことになる。 平安時代中期に作られた辞書『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』にはこうある。

春生じ 夏長じ 秋衰え 冬死す 故に年魚と名づくなり

初夏の若鮎から、真夏のしっかり脂ののった成魚、卵を抱いた秋の落ち鮎まで、短い期間に風味が刻々と変化するのもこの魚が愛されてき理由のひとつだろう。



秋の落ち鮎を燻製にして一年を通じて食べられる保存食に。そのままでも佃煮でも、正月には雑煮の出汁にも。

一般に鮎の旬は夏とされており、7月頃までは小骨もやわらかく、丸ごと食べられる。なかでも独特の苦みのあるワタ(内臓)は、鮎ならでは美味。美食家として有名な北大魯山人(きたおうじろさんじん)は、6月にとれた若鮎を頭から食し、はらわた、身、皮を同時に味わう食べ方が一番おいしいと著している。調理法も多彩で、最もポピュラーな塩焼きは、頭を下に向けて焼くと良い具合に脂が落ちて、おいしく焼けるそうだ。このほか、背ごし(刺身――冒頭の写真――骨が柔らかい若鮎の頃、透きとおるような身の美しさと皮の香り、そして骨の食感を愉しむ逸品)や干物。
甘露煮、炊き込みご飯、内臓でつくった塩辛“うるか”など、鮎は夏の日本料理に欠かせない食材のひとつになっている。



栄養を蓄えた秋の鮎でつくる、内臓の塩辛「うるか」。鮎の鮮烈な香りと独特の苦みが愉しめる珍味で、酒との相性が抜群。腹ワタだけでつくる「渋うるか」(左)。雌の卵と雄の白子を混ぜて塩漬けする「子うるか」(右)。


日本三大清流にも名を連ねる長良川で育った鮎のおいしさは全国屈指といわれるが、なかでも鵜飼でとれた鮎は「鵜鮎」と呼ばれ、希少な高級品として扱われている。

①は日本固有の魚でヤマメ(山女)に似ているが、体側に朱点があって美しいアマゴ。③は日本の淡水魚のなかでも標高の高い川に生息するイワナ。天然ものは幻の魚といわれるほど貴重。
④は古くから各地で養殖されているコイ。洗いやこいこく、甘露煮で親しまれる。

 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】②鮎(あゆ)      

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年に東京・大阪で初めて開催。その後、地方開催の要望に応え、北は札幌、函館、八戸から南は沖縄糸満、鹿児島まで25の市町で開催へと広がり、小学生から80歳代まで世代を超えた累計2万4千名もの受検者を47都道府県から輩出しています。
今年10回目を迎え、2019年6月23日(日)に酒田・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・鹿児島などで開催いたします。

詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/