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さかな歳時記「二十四節気・大寒」 釣りたてをその場でかぶりつきたい

二十四節気●大寒●1月20日

氷に穴を開け、糸を垂らして小さなアタリをじっと待つ。ワカサギ釣りは日本の冬の風物詩。大寒のこの時季に獲れる冬のワカサギは、脂がのり切って身が締まった食べ頃です。天ぷらにしていただくと、白身魚ならではの口当たりのよい食感が楽しめます。
徳川将軍家に献上されたことに由来するワカサギの漢字表記を選びなさい。


①香魚
②公魚
③千魚
④年魚
   
【解説】

湖でのワカサギ釣りのイメージが定着していることもあって、ワカサギは淡水魚と思われがちだが、実際には海水魚に分類される。水温や水質に対して適応力が高いため、湖や沼などにも生息できる。



銀色に光る10センチ前後のワカサギ。飽きのこない優しい味わいをもつ、冬便りを告げる食材だ

日本最大の漁獲量を誇る青森の小川原湖、そして茨城の霞ヶ浦(かすみがうら)、秋田の八郎湖、北海道の大沼、アマサギ、シラサギといった風雅な名で呼ばれる島根の宍道(しんじ)湖などが有名な漁場である。
氷上釣りの本場、長野県の諏訪(すわ)湖は大正4年に霞ヶ浦から移植され、いまや有数の稚魚生産地でもある。
このワカサギが漢字で「公魚」と書かれるのは、江戸時代に霞ヶ浦で獲れたワカサギは11代将軍・徳川家斉(いえなり)に献上され、「公儀御用魚」として扱われたためと伝わる。



脂のりのよさと骨の柔らかさが身上、霞ヶ浦産のワカサギ

江戸時代に始まった霞ヶ浦のワカサギ漁は7月から12月まで。脂がのり骨がやわらかいことが特徴といわれる。地元ではこの特徴を生かした「半生の煮干し」を食べるのが伝統だ。ほかにも甘露(かんろ)煮、いかだ焼き、佃煮などの加工品は名産として昔と変わらず親しまれている。



霞ヶ浦名物「半生の煮干し」(左)といかだ焼き(右) 提供:天正

氷結した湖での穴釣りで釣り上げたばかりのワカサギを、寒さしのぎの手あぶり用のコンロで焼いて食うのはうまいに違いない。またその場で揚げてもたまらないだろう。揚げ物は衣をゴテゴテつけるより、小麦粉をまぶす程度の素揚げにし、そこにひと塩すれば充分だ。



家庭ではひと手間かけるとご馳走に変身する。フライのマリネ

スナック感覚で食べられる加熱したワカサギは、何尾でもいけそうだが、揚げ物が余ったらぜひ南蛮漬けにしたい。このときは二度揚げするとよい。そもそも骨が柔らかく、骨ごと食べられる魚だが、より柔らかく食べるために、ひと手間を惜しまないように。
一度揚げたワカサギはしばらくそのままおいて常温まで冷ます。そうすると中の骨まで油がしみ込み、もう一度揚げたときの熱でしみこんだ油が骨をやわらかくしてくれる。ほかの魚にも適用できる二度揚げのコツだ。



パン粉に胡麻をまぶして揚げる、ごま風味のフライ

また南蛮漬けは酸味と甘み、ピリッとした唐辛子の辛味がポイントだ。酸味を強くすればかなり長持ちするから、大事に味わって、冬を堪能したい。



淡泊な白身ゆえバリエーションが豊かなワカサギ。柳川風の卵とじ

頭から尻尾まで丸かじり。骨ごと食べられるので、カルシウム補給にはもってこい。さらに低カロリーで鉄分、ビタミンBの含有量も豊富なワカサギ。
立春から3月にかけてのこれから、産卵期の子持ちが格別においしい時季を迎える。

ワカサギは独特のキュウリ臭がすると、嫌がる人もいる。それもそのはず、実はキュウリウオ科に分類されている。同じ科に属する③千魚(チカ)は北海道や三陸以北にすみ、姿も味もワカサギに似る。ただ、身も骨もよりしっかりしているので、天ぷらにするとやや硬く感じ、フライの方がむく魚。①香魚はスイカもしくはキュウリの香りが好まれるところから、④年魚は春に生まれ、秋に産卵、冬にはその一生を終えてしまう儚(はかな)さからついたアユ(鮎)の別名。 


         

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】②公魚    
 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年に東京・大阪で初めて開催。その後、地方開催の要望に応え、北は札幌、函館、八戸から南は沖縄糸満、鹿児島まで25の市町で開催へと広がり、小学生から80歳代まで世代を超えた累計2万4千名もの受検者を47都道府県から輩出しています。 来年10回目を迎え、2019年6月23日(日)に石巻・酒田(予定)、東京・静岡・名古屋・大阪・鹿児島などで開催いたします。
詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。
日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/