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さかな歳時記「二十四節気・冬至」 数の子、だれの子?

二十四節気●冬至●12月22日

卵の数は数万粒。数の多さから子孫繁栄を連想させ、縁起物としておせち料理に欠かせない数の子。
アイヌの言葉で「かど」という魚の卵なので、「かどの子」が語源といわれています。
数の子の親魚を選びなさい。

①スケトウダラ
②トビウオ
③ニシン
④ボラ
   
【解説】

ニシンは伝説の魚だ。漢字を当てると「鯡」。魚に非ず―。そもそもは江戸時代に米のとれない蝦夷(えぞ)地の松前藩が、代わりにニシンを年貢として徴集したことに由来している。
江戸から明治にかけての春、北海道に押し寄せたニシン。食用にしても余りあるそれは、脂を搾られると、北前船で西に運ばれ、畑の肥料になった。魚に非ず。肥料と卑下こそすれ、それは巨万の冨を生み、海沿いに鯡御殿が並んだ。
“魚に非ず”とは、あるいは、魚とは思えないほど大きな富をもたらす意味をこめてのことだったのか。
ニシンは伝説の魚だ。群がるニシンを漁獲する漁師の姿が民謡、ソーラン節に歌われた盛りの時期は昭和30年を境に消えうせた。♪海猫(ごめ)が鳴くから ニシンが来ると 赤い筒袖(つっぽ)のやん衆がさわぐ ――北原ミレイが歌った「石狩挽歌」(作詞:なかにし礼)は♪あれからニシンはどこへいったやら 破れた網は問い刺し網か・・・と続く。



ニシンという名は、かつて身を2つに割いて片方を肥料に、もう一方を身欠きニシンに加工されていたことからと云われている。つまり「身を二つに割く」から「二身」(にしん)と。


歳末になるとニシンの昆布巻きも店頭に登場。おせちに加えたいひと品

魚に非ぬニシンは、鯡のほかに東の方でよくとれたことから「鰊」、北国の春告げ魚であることから「春告魚」とも表す。
また、東北地方にはいまでもニシンをカド、あるいはカドイワシと呼ぶ地域がある。山形県北東部の最上地方では、ニシンをカドと呼び、好んで食べる風習がある。古くから、春とともに最上川をさかのぼる舟で運ばれてくるニシンは、重い雪の季節が去ったことを告げる縁起物なのだ。人々はニシンを箱買いし、家族や友人たちと炭火で焼いて食べ、酒を酌み交わした。戦後、ニシンの減少や物流の発達とともに一時廃れたが、1974年に新庄観光協会が春祭りのイベント「新庄カド焼きまつり」として復活させた。
カズノコの名はアイヌの言葉で、ニシンが「糧(かて)」を意味するカドと呼ばれたことに由来している。ここから、ニシンの子が「かどの子」になり、訛ってカズノコという名が定着した。



ひと腹に平均5万粒といわれるカズノコがニシンのお腹の中にいる時に近い形。船上でさばいてその場で塩漬けにする。手で握ったようなふぞろいな形になるが、香り高く仕上がる。これを市場では「にぎりこ」と呼んで珍重している。

春にとれたカズノコを飽和食塩水に漬けて保存し、いまでは塩数の子や味付け数の子で出回っているが、冷蔵技術が発達する前は天日で干して保存していた。



かつてはカズノコというと、干し数の子。一定の年齢以上の方には懐かしい一品。北海道の一部地域で干し数の子作りが続いている。初夏の晴れた日に数日間天日干しして、温度や湿度を調整しながら丁寧に乾燥させる。

昭和30年代、突然姿を消したかのようにニシンの漁獲が激減したことから、かつて乾物屋も店先に山盛りにされた大衆食材の干しカズノコが高騰し、“黄色いダイヤ” と呼ばれるようになった。
その後アラスカ、カナダ、ロシアなどからの輸入に頼るようになり、国産カズノコが見られるようになったのは平成18年のことだ。
長年にわたる地道な種苗放流など資源回復に努めた結果、国産の生鮮ニシンが流通するようになったのは平成15年から。その間、実に50年の歳月が流れている。



数の子料理の定番、北海道名物「松前漬け」。スルメイカと昆布、人参との絶妙のハーモニーにご飯がすすむ


ワインが欲しくなるバリエーション・メニュー「数の子のクリームチーズ和え」

回遊魚のニシンは春になると北海道などの沿岸に近づき、メスが産卵。そのあとにオスが出した精子は、海を乳白色に染めるほどダイナミックで「群来(くき)」と呼ばれる。長らく見られなかった群来が平成20年頃から沿岸域で見られるようになっている。


北海道小樽市の沿岸に見られたニシンの「群来」


すし種として珍重される「子持ちこんぶ」は、ニシンが昆布に卵を産みつけたもの。予想外の取り合わせがおもしろく、噛めばプチプチと卵が弾け、続いて昆布のうまみが口中にあふれる。

カロリーやプリン体が多いと魚卵を敬遠するむきもあるが、こと数の子にかぎっていえば、低カロリーにして、トマトやワカメなみの極めて少ないプリン体。くわえて、生活習慣病の予防に効果があるとされるDHAやアンチエいジングに有効なビタミンEが豊富ときている。
縁起と栄養、うまさを兼ねそなえた逸品、数の子で新年を寿ぎたい。
①ケトウダラの卵(巣)は辛子明太子にもなるタラコ、②トビウオはトビコ、④ボラはカラスミだ。

   

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】③ニシン    
 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年に東京・大阪で初めて開催。その後、地方開催の要望に応え、北は札幌、函館、八戸から南は沖縄糸満、鹿児島まで25の市町で開催へと広がり、小学生から80歳代まで世代を超えた累計2万4千名もの受検者を47都道府県から輩出しています。 来年10回目を迎え、2019年6月23日(日)に石巻・酒田(予定)、東京・静岡・名古屋・大阪・鹿児島などで開催いたします。
詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。
日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/