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さかな歳時記「二十四節気・霜降」 柳の葉が姿を変えた、日本固有の魚

二十四節気●霜降●10月23日


提供:カネダイ大野商店

秋が深まっていくこの時期、北海道胆振(いぶり)地方の太平洋岸、鵡川(むかわ)ではこの季節の風物詩の天日干しがみられます。
塩焼きや天ぷらにしてほどよい脂の身を、ほくほくしながら食べるのが最高。産地では獲れたてを刺身や寿司で味わいます。
北海道の太平洋沿岸にのみ生息する、日本固有種のこの魚を選びなさい。


①イカナゴ
②シシャモ
③ハタハタ
④メヒカリ

【解説】

スーパーなどで一年中販売している子持ちシシャモではなく、北海道近海で漁獲されるシシャモ。市場では区別するため本シシャモと呼び分ける。世界でも北海道南部の太平洋沿岸、釧路から襟裳(えりも)岬をはさむ鵡川にかけてのみ分布するシシャモは毎年秋になると、サケと同じように生まれた川に戻ってくる。
最近は資源を守るため漁獲枠が決められており、漁期も10月から11月の2ヵ月に限られる。シシャモは漢字で書くと「柳葉魚」。アイヌの伝説からつけられた名前とか。
今年9月6日におきた北海道胆振(いぶり)東部地震。震源地の厚真町に隣接し震度6強の揺れに見舞われ、甚大な被害を被ったむかわ町。シシャモの産地として最も著名で、地域ブランドに認定された“鵡川ししゃも”は大きいサイズは10尾で数千円になる。
塩水につけて生干ししたものを火でさっとあぶって食べるのが一般的だが、地元では刺身やすしネタとしても食され、シシャモを入れた柳川風の「柳葉魚鍋」もある。



シシャモの名は、アイヌの神によって柳の葉(スス「柳」とハム「葉」)からつくられたという伝説に由来する。伝説では、サケが獲れなくて困ったときにアイヌの人々がカムイ(神)に祈りをささげたところ、柳の葉が落ちて魚になった、これがシシャモであったとされる


シシャモの握り寿司は10月~11月、期間限定の産地の味だ   提供:カネダイ大野商店


北海道むかわ町の秋の風物詩「すだれ干し」。シシャモの口にヨシの茎を通し、風通しの良い軒下ですだれのように連ねて半日ほど陰干しに  提供:鵡川観光協会


ししゃもは身が崩れやすいので、家庭で焼くときはホットプレートやフライパンがおすすめ。クッキングシートを下に敷いて、弱火~中火で焼くのがコツ。冷凍のししゃもは解凍せず、凍ったまま焼く。ししゃもの身から脂が浮いてきて、焦げ目がついたら裏返し、メスの場合はおなかの卵がかたくなったら食べ頃

毎年恒例の11月上旬の1日かぎりで本ししゃもを味わうイベント「ししゃもあれとぴあ ⅰn むかわ」。今年は11月3、4日の両日、町立鵡川中央小グラウンドで開かれる。シシャモの炭火焼やから揚げなどの販売のほか、堀内孝雄さんらのコンサートや鵡川高吹奏楽部の演奏も行われる。“鵡川ししゃも”を町内外の大勢の人に味わってもらおうと、開催期間も1日多い2日間とし、復興に弾みをつける狙いだ。 


通年、スーパーや居酒屋チェーンなどでみかける「子持ちシシャモ」はカペリンとも呼ばれるカラフトシシャモ。北海道のオホーツク海など北太平洋北部から北極海、北大西洋北部にかけて分布する。日本にはノルウェーやアイスランド、カナダなどから年間3万トンほどが輸入されている。国産のシシャモの漁獲量が1000トン前後だから、本シシャモに遭遇する機会はきわめて少なく貴重なものだ

DHAやEPA、カルシウムが豊富で栄養満点。秋の風物詩、シシャモのすだれ干しが終わる頃になると、北海道は冬支度が始まる。

 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】②シシャモ    
 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年の第6回では八戸から福岡の12会場、昨年の第7回では函館から福岡にいたる11会場へと広がり、小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出しています。
平成29年は、6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡の全国9会場で、6歳から88歳まで2800余名を集めて開催しました。
また今年行われる第9回の日本さかな検定は「2018年6月24日(日) 札幌 酒田(初)石巻 東京 静岡 名古屋 大阪 兵庫香美 下関(初)――5月21日申込み締切り(5名以上のグループ受検は5月14日締切り」となっております。
詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/