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さかな歳時記「二十四節気・処暑」 夏の太陽も跳ね返す銀白の輝き

二十四節気●処暑●8月23日

銀色の光沢が鮮やかな大型のこの魚。長細い体は1㍍以上にもなるため、一般の小売店では切り身になって店頭に並びます。脂肪が多いわりに、あっさりとした上品な味ゆえ、塩焼きやバター焼き、蒲焼き、竜田揚げなどの料理に利用できます。
夏から秋に旬を迎えるこの白身魚を選びなさい。


①アナゴ
②ウツボ
③タチウオ
④ハモ

【解説】

ほぼ1年を通じて日本近海で水揚げされるタチウオは、沿岸に回遊してくる夏から秋にかけて漁の最盛期を迎える。



提供:福山市

細身の魚体は全長1㍍超にも達し、銀白色に光って刀剣の太刀を思わせる。その姿から太刀魚の名がつけられたという。
江戸の小咄に
――とある一軒家に深夜「金を出せ」とギラギラ光る抜身をさげて強盗が押し入った。主人は恐ろしさに布団を頭から被ってふるえていたが、その時足許にもぐり込んでいたネコが突然刀にとびかかった。飼い主の危急を救うため身を挺して立ち向かうとはなんとも感心なネコよと、よくよく見れば、強盗のさげていたのはタチならぬタチウオだった――。
また、小魚などのエサを獲る際、なんと立ち泳ぎをして襲いかかることから立ち魚と呼ばれるようになったという説も。
漁師さんたちからは、幽霊魚とも呼ばれるタチウオ。神出鬼没でその姿をすぐに消してしまうという。魚群探知機に出る魚影は、パッと消えたり現れたり。これも、立ち泳ぎしているから魚影がつかみにくいといわれる。

身質がよく、どんな料理にしても美味で、熱を通すと淡泊な白身が旨みがグンと増すのが特徴のタチウオ料理の筆頭はやはり塩焼きだろう。骨離れがいいうえに、やわらかい白身がしっとり甘くておいしい。



焼けば脂がしたたり、脂肪の多い魚とわかるが、口にすれば身はきめ細かくあくまで上品淡泊、余韻にはほのかな甘みが。

淡泊な味だから、塩焼きのほかバターとの相性もよく、ムニエルなどフランス料理にも好まれる。塩焼きがいちばんの料理とされるが、鮮度がよければ刺身。クセがなく、こんなに食べやすくおいしいのかと驚かされる。
脂がのっているのに味わいはあっさり、刺身にすればタチウオの旨みが舌にはじけるのだ。



左は皮付きの炙り。皮をつけたまま炙ると、歯切れのいいやわらかさと香ばしさが愉しめる。右の刺身は、クセのない白身のほどよい脂にほのかな甘みが後からやってくる。


すし屋さんでは、銀の皮目をこんがり炙ってタネにすることも。提供:玉寿司

刺身はたしかにうまいが、ほかの魚以上に鮮度のよさを必要とする。タチウオ釣りが人気なのは、釣り人たちが刺身のおいしさを知っているからにちがいない。また、ギラリと光る大タチが釣れあがって宙に舞う姿は荘厳ですらある。
うろこの代わりに体をおおっている銀粉、この銀粉がどれだけ残っているかが鮮度の目安になる。新鮮なものは文字どおり太い刀のような白銀色を放ち、美しい。一年を通じてあまり味がかわらないのに夏が旬とされているのは、そんな涼しげな外見のせいもありそうだ。
味も美味な太刀魚だが、生活のうえでも実は関わりが深い魚。というのも、タチウオの体表を覆うグアニンと呼ばれる銀白色の物質はかつて模造真珠の表面を覆う材料にされ、近年では マニキュアやシャドウのラメにも使われていたのだ。

冒頭の画像は、山口県周防大島の新名物「太刀魚の鏡盛り」。
県内の漁獲量の6割を占める周防大島で、引き縄釣り漁で1尾ずつていねいに漁獲されたタチウオをブランド化しようと、5年ほど前に島の観光協会や漁師、料理人が一つになって誕生した。銀箔きらめく刺身を大皿にもりつけると、顔が映るほどにまぶしく光る鏡盛りになり、旬のすだちなどを香らせて食すそうだ。

 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】③タチウオ    
 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年の第6回では八戸から福岡の12会場、昨年の第7回では函館から福岡にいたる11会場へと広がり、小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出しています。
平成29年は、6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡の全国9会場で、6歳から88歳まで2800余名を集めて開催しました。
また今年行われる第9回の日本さかな検定は「2018年6月24日(日) 札幌 酒田(初)石巻 東京 静岡 名古屋 大阪 兵庫香美 下関(初)――5月21日申込み締切り(5名以上のグループ受検は5月14日締切り」となっております。
詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/