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さかな歳時記「二十四節気・小満」 赤身の風味を愉しむ季節の便り

二十四節気●小満●5月21日

清々しい風が吹き抜ける初夏。江戸時代には、女房子どもを質においてでも食えといわれた旬の味覚が初がつお。その魅力は赤身の澄んだ風味そのものです。
カツオは、はるか赤道付近からこの海流にのり晩春から初夏にかけて、日本にやってきます。この海流を選びなさい。


①親潮
②黒潮
③対馬海流
④リマン海流

【解説】

回遊魚であるカツオは春、フィリピンの海を旅立ち、イワシなどを追って、晩春から初夏にかけて日本の近海へとやってくる。南九州の沖に姿を現すのが3月ころ。その後、4月から5月にかけて紀州沖から房総沖へ、さらに7、8月頃には三陸沖から北海道沖まで到達する。つまり、黒潮にのって北上するのだ。
黒潮の始まりは赤道付近。北太平洋の膨大な水と熱をひとつに集め、日本へとやってくる。世界最大のエネルギーの奔流である黒潮のそのすさまじいパワーが日本列島の自然を動かしている。
南から運ばれてきた熱が雲を呼び、雨をもたらす。暖かで湿り気のある命のゆりかご。この列島に生きるものすべてが黒潮の恵みを受けてきた。季節ごとに届く海の神様からの贈りもの、なかでもカツオは“黒潮の子”とよばれる季節の恵みだ。



大きいものは60㌢にも達し、背は鉛青色で、腹は銀白色。全身滑らかな皮膚におおわれ、体側には縦走する数条の濃青色の線がある。身肉の味わいもさることながら、こうした姿体が、江戸っ子の粋といなせな感覚にマッチして喜ばれたのだろう

宮崎県日南市。すぐ沖合を黒潮が流れ、カツオ一本釣りの船が日本で一番多い街だ。2月、“黒潮の狩人”と呼ばれる男たちが旅立つ。3月までは2千キロ南のフィリピン海、次は初がつおを狙い高知沖や銚子沖へ。夏から秋は三陸沖に向かい、冬まで戻れない。黒潮の流れは日によって年によって大きく変わる。水温や風の動き、潮の変化によって、気の抜けない日々が続く。



カツオ漁といえば、一本釣り。生きたイワシをえさにまき、船のまわりにおびきよせて、釣り上げる

脂がのった秋の戻りガツオと対照的に、引き締まった身質を愉しむ初ガツオ。本場と呼ばれる土佐高知はさすがに食べる文化熟度も高く、主に皮目を稲わらの炎であぶることで香ばしくし、赤身の風味を際立たせた土佐造りが好まれる。薬味は生姜、茗荷、大葉などをたっぷりと。さらにポン酢のかんきつ類も加わり、風薫る初夏の海、山、野の香りと味が口のなかで響きあうようだ。



土佐料理の代表格にして、土佐造りとも呼ばれる“鰹のたたき”は、さっぱりとしたなかに感じる、深い旨みが持ち味


最近は“塩たたき”も人気。たっぷりの香味野菜とともに味わう

「鰹は刺身 刺身は鰹」の言葉どおり、鮮度(いき)のいいカツオなら、やはり刺身で食べるのが本命で、今日ではしょうが醤油か、にんにく醤油(またはにんにくのスライス)が添えられるが、江戸時代にはからし味噌が主流だったらしく、古川柳にも

        

初鰹 銭とからしで 二度泪(なみだ)

などと詠み込まれている。



銀皮造り 初がつおの腹身は皮つきのまま刺身にするとおいしい。すりおろした生姜とともにいただく

 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】②黒潮   
 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年の第6回では八戸から福岡の12会場、昨年の第7回では函館から福岡にいたる11会場へと広がり、小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出しています。
平成29年は、6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡の全国9会場で、6歳から88歳まで2800余名を集めて開催しました。
また今年行われる第9回の日本さかな検定は「2018年6月24日(日) 札幌 酒田(初)石巻 東京 静岡 名古屋 大阪 兵庫香美 下関(初)――5月21日申込み締切り(5名以上のグループ受検は5月14日締切り」となっております。
詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/