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“盛る楽しみ”を伝える 若手作家、安達健さんの器

素朴な手料理や、買ってきたお惣菜でも器次第でご馳走に見え、気持ちを豊かにしてくれるもの。料理を引き立て、日々の食卓をグレードアップしてくれる器だが、色や形、質感の違うものに差し替えるだけでは不十分で、実は「違った“盛りどころ”のある器に替えるほうがより効果的」と、話す器作家の安達健さん。
武蔵野美術大学在学中にサークル活動でやきもの作りを始め、愛知県瀬戸市にて築窯後、岐阜県での活動を経て、現在横須賀市で作陶している安達さんは、“盛りどころ”を意識した器使いを提案する若手作家である。



“盛りどころ”というのは、器の内側の料理を盛るスペースのこと。すべての器には、盛り付けることで料理も器自体も美しく見える位置や範囲があるそう。
たとえば、揚げ物に餡をかけて盛りつける場合、円形の皿には中央に揚げ物と餡をバランスよく配すのが一般的だが、長皿に移し替えると自然と横広がりになり、餡はソースのように横に添えてもいい。また、深い角型の器だと高さが出て、餡の中に浮かぶような盛り付けができる。同じ料理を同じ量盛ってもこのように料理の表情がガラリと変わるだけでなく、香りの立ち方までも違ってくるという。



安達さんが“盛りどころ”に着目するようになったのは、“食器”を考えるうえで、懐石料理をひとつのしるべとしてきたことにある。数年前から、瀬戸市を拠点とする陶芸家たちが立ち上げた勉強会に参加していて、懐石の器を基軸テーマとして研究していく中で、向付のサイズ感や盛る分量感などが実にうまく考えられていることに気づいたそう。
形が変わった器には“向き”が生まれ、どの方向がお客様に一番美しく見えるかを考えるようになる。器を介して相手を思いやる細やかなおもてなしの心なども見えてくるのだとか。



撮影/竹花康

先日は、毎年開催している「knulpAA gallery」での個展に併せて、近くにあるデリカテッセン&イートインの店を貸し切り、さまざまな器に安達さん自らが盛り付けを担当し、盛りどころ”の妙を一般の方に伝える食事会を行い、好評を博したそう。

家にある器でも“盛りどころ”を意識して盛り方を工夫すれば気分も味わいも変わり、いつもの食事がより新鮮に映るはず。ときにはそんな使い方も楽しんでみては。


●安達 健(陶芸家) 

http://www.adachi-takeshi.com

展示会の予定はHPでご確認ください。

※器のお問い合せ先:「knulpAA gallery」
東京都練馬区石神井町1-21-16
☏03-3996-8533
不定休 
http://www.knulp-a1.com/knulpgg/