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さかな歳時記「二十四節気・大雪」 ちょっと贅沢、日本海の冬の味覚。

二十四節気●大雪●12月7日

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上品で奥深い味わいは、まさにかにの女王の風格充分。
福井の漁港で揚がると越前がに、山陰では松葉がにと呼ばれます。
さらにオスとメスとを別の名で呼び分けるこのカニを選びなさい。

①ガザミ
②ケガニ
③ズワイガニ
④タラバガニ

【解説】

毎年のことながら、心が千々に乱れるズワイガニのシーズンが今年も到来した。
11月6日に富山から西の日本海で漁が解禁。翌日松葉ガニの産地、鳥取からとどいたのは、7日早朝の初競りで過去最高の1匹130万円の値がついたという、なんとも複雑な思いにかられるニュース。
長い脚には、甘くむっちりした身が詰まっていて、見ているだけで涎(よだれ)が出そう。ズワイガニの身はこの上なく繊細で、とろりとした甘みが強く、かに本来のうまみを堪能できる。漁師や料理人の推すもっともおいしい食べ方・・・、みな口をそろえてシンプルにゆでて食べるのが一番という。


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うまみの成分はグリシンというアミノ酸。魚と同じくかにも鮮度が命なので、水揚げ後はとにかく早くゆでるのがおいしい。浜ゆでは、海水くらいの塩分の湯で茹で上げるそうだが、かにの大きさ によって塩加減やゆで時間、湯の温度を加減するなど、熟練した技がいるそうだ。その身のごとくはかなく、手の届かぬイメージがあることが、このかにのなによりのエキスかもしれない。

石川では加能(かのう)ガニ、福井では越前ガニ、丹後で間人(たいざ)ガニ、山陰で松葉ガニ。
呼び名は変われど、中身は同じ冬の味覚の王者。築地では、北海道から入荷したものをずわいと呼ぶ。

越前ガニ、松葉ガニの名で呼ばれるのは実はオスだけ。
メスは北陸で香箱(こうばこ)やセイコ、山陰でオヤガニなどと呼ばれる。高値で取引きされるオスに比べ、メスのセイコなどは手頃な値段。地元の人々にとって一番身近な冬の味覚だ。
純白の身、緑のみそ、オレンジ色の内子(卵巣)、えんじ色の外子(卵)がおりなす彩りはまさに海の宝石箱。オスの漁期が3月20日までなれど、メスは資源保護もあって年明け1月10日で終わる。

冷え込みが厳しくなるこれからは、甲羅に熱燗の酒を注いだ甲羅酒も楽しみたい。甲羅に熱々の日本酒を注ぎ込み、それをゆっくりまわすようにして内側に付いている黄緑色のかにみそを酒に溶かしつつ、じっくりいただく。かにの匂いと日本酒の香りが混ざり合い、口の中ではかにみそのコクが日本酒の甘辛酸味と融合し・・・。

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ワタリガニのほうが通りがいい①ガザミはゆでて香り高く、甘みのある身とみそや内子のおいしさを楽しめる。
②ケガニ(毛蟹)は字のごとく、全身が短い毛で覆われ、脚が短く身が少ない代わりにみそがおいしい。このみそのおいしさから、北海道ではもっとも好まれる。
④タラバガニはカニじゃないって知ってました?
焼きガニにすると美味この上ないタラバガニ、カニという名は付いているし、見かけも立派なカニではあるが、分類上はカニではなく、ヤドカリの仲間。よく見ると、確かに形がヤドカリっぽいし、ハサミを除くと脚が6本しかない(ズワイガニイなどは8本)。鱈場蟹は文字通り、北海道以北のタラの漁場でとれる。

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】③ズワイガニ

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。

魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年の第1回を東京・大阪でスタート、今年の第7回(6月26日(日))では函館・八戸・石巻・東京・静岡・富山射水・若狭小浜・大阪・宇和島・福岡の全国11会場で開催、小学生から80歳代まで世代性別を超え、累計2万名を越える受検者を47都道府県から輩出しています。