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さかな歳時記「二十四節気・白露」秋の愉しみ、ただいま南下中。

二十四節気●白露

さかな歳時記「二十四節気・白露」

ご覧の図はある魚の群れが、夏から秋にかけて大海原を回遊するルートを示しています。
7月初旬に北海道沖で初水揚げの報せが根室から届き、秋の訪れとともに親潮にのって、太平洋を南下します。
三陸沖を経て房総沖へ、初冬には紀州熊野灘にまで下る、この魚を選びなさい。

①秋味 ②秋鯵 ③秋鯖 ④秋刀魚

【解説】

台風一過で秋本番。青空が広がり、秋風が吹くと、さんまがむしょうに恋しくなってくる。秋刀魚の文字どおり、刀身のようにスリムで銀色に腹を光らせたさんまの大群は、秋の訪れとともに親潮にのって太平洋岸の沖合いを南下する。
その体形から狭真魚(さまな)と呼ばれていたのが訛って“さんま”になったともいわれる。とはいえ、この時季、たっぷり脂がのり、けっこう肥満体。小さな頭に、力士さながらに肩が盛り上がり、アンバランスなほどウエストも太る。南下するにつれ、適度に脂も抜けて、食べごろになっていく。

秋刀魚焼く 煙の中の 妻を見に 山口誓子

かつて路地裏では、七輪を持ち出し、ぼうぼう青白い煙をたて、さんまを焼く光景がどこでも見られた。戦後、電灯を使った「さんま棒受け網漁」という漁法が開発され、1960年ごろまでに漁獲量は飛躍的に拡大。どの家も晩ごはんのごちそうといえばさんま、それを焼く煙がよく火事に間違えられたという。ワタの苦味は格別で、強火でないと生臭さがとれない。

残念ながら、いまの都会のマンションでは、思いきり煙を立てて焼くことができにくくなった。が、やはり忘れられない、あのうまさ。がまんできぬと、自治会が「さんま大会」を開催するように。
1996年から開かれている「目黒のさんま祭り」はその代表格で、今年も東京・品川区の目黒駅前商店街で9月4日(日)に催された。岩手県宮古漁港から直送のさんま7千尾が届き、徳島産のスダチや栃木産の辛み大根おろしと一緒に炭火焼がふるまわれた。
殿様が鷹狩りの途中に農家で塩さんまを食べて感激するという、「さんまは目黒に限る」のオチで知られる落語「目黒のさんま」も付近の神社で披露された。

定番の塩焼きもおいしいが、脂が落ち、身が引き締まったころは、酢でしめると絶品。紀州の名物はさんまずし。和歌山県新宮市ではさんまをごはんと一緒に漬け込んだなれずしが名物だし、新宮駅には全国ここだけの駅弁「さんま鮨」もある。
一昨年まで豊漁だったさんま、昨年は前年から半減し、統計が残る1981年以降で過去最低の記録的不漁に。近年減っている上に、寒流の親潮が沿岸に入ってこないため水温が上昇し、冷水を好むさんまが沿岸に近づきにくくなっているという。今年も出足が鈍く、気をもむ毎日が続く。
ちなみに選択肢の①~③とも文字どおり、秋の味覚。①秋味はアキザケのこと。②あきあじ、③あきさば。

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】④秋刀魚
さかな歳時記「二十四節気・白露」

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年の第1回を東京・大阪でスタート、今年の第7回(6月26日(日))では函館・八戸・石巻・東京・静岡・富山射水・若狭小浜・大阪・宇和島・福岡の全国11会場で開催、小学生から80歳代まで世代性別を超え、累計2万名を越える受検者を47都道府県から輩出しています。