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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第96回

歴史ある工場を先進アートの発信地に。美術館付帯レストラン「BRICK」の産声。

7月は弊社の決算期。会社としては「大晦日」が近づいている。会社を10年経営、まもなく11期が終了する。立ち上げた当時は2010年。シェアオフィスが隆盛し、そのシェアオフィス立ち上げから会社の仕事はスタート。その後、すぐに2011年、東日本大震災が発生。天災としては、僕が生きている時間の中では、最大級の出来事として、会社の役割、東北、僕の実家のある青森に対しての想いが変わった。そしてSNSもtwitter、facebookが日常生活にグッと入ってくるようになった一方、仕事の幅も「地方創生」の時代がはじまったタイミングでもあった。当時青森県十和田に、3年ほど事業所を設け、活動をしていた。事業も「フリーランスで働く女性クリエイターの集団」として、数多くのデザイン、商品開発をお仕事として実施させていただいた。そこから徐々に、地域の生産者、東京の料理人、飲食店との関係も多くなり、現在の、食生活に関する企画・プロデュースの仕事に進化し、今の仕事を継続させていただいている状況だ。また僕自身も一時期、事業拡大を視野に入れ、メンバーを増やし、事業を推進していく矢先に、くも膜下出血にて倒れ、入院。そこから事業の方向転換、経営の見直し、新たな可能性を探るべく、常に新たな動きを検討している。これが10年で起きたことだ。

そして次の10年目のスタート、2020年、コロナが起きた。2011年の東日本大震災の時に感じた「怖さ」とともに、「終わりが見えない状況」に直面していると感じている。どんな状況になればよいのか?この事態が進んだときから、常に考えさせられるのだが、現段階では「答え」は見つからない。むしろワクチンふくめ「他人任せ」だ。自分の活動が答えにつながるわけではないからだ。ただ「他人に迷惑をかけない」ことは変わらない。たとえコロナにかかっても、かからなくても、どういう行動をすべきかは、明白である。だからこそ、いま「余白の時間」を大切にしている。余白の時間が新たな言葉、活動、目標を作り上げてくれる。

コロナは、世の中の経済状況の動きを変えた。そして飲食、外食という産業も同様に、「これ以降」の動きにシフトしていっている。その中でこそ生まれる価値こそ、今後10年続く流れを生むのではないかと考えている。

PHOTO BY ©畠山直哉

実は2020年春、青森県で新会社を立ち上げた。名前は「弘前BRICK株式会社」。この会社は、青森県弘前市に、この春生まれた「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ・ショップを運営する事業会社だ。とうとう自分の故郷、弘前に会社を立ち上げ、そしてまさか「美術館カフェ&ショップ」の経営をすることになったのだ。かつてはシードルの生産が行われていた「吉野町煉瓦倉庫」(旧吉井酒造煉瓦倉庫、1923年頃竣工、2015年7月より弘前市が所有)を芸術文化施設としてリニューアルしたプロジェクト。建築設計にはエストニア国立博物館などを手掛けた田根剛氏、美術館総合アドバイザーには森美術館館長を務める南條史生氏を起用した、まさに弘前市においてのビックプロジェクトだ。

左からスマイルズ遠山正道社長、カフェ責任者板東俊樹氏、弘前BRICK株式会社代表 松田龍太郎、前森美術館館長/弘前れんが倉庫美術館 総合アドバイザー 南條史生氏、青森県立美術館館長 杉本康雄氏、弘前賑わい創造株式会社 平出和也社長

ちなみに自社事業ではなく、新たに会社を立ち上げた大きな理由は、本事業に関して「ご縁」をいただいたからだ。ご存知の方もいらっしゃるかと思うが、株式会社スマイルズ、あの食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)」を立ち上げ、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ネクタイブランド「giraffe」など、飲食に限らず、文化やアートにも事業拡大した会社からお声がけいただいたことがきっかけだった。スマイルズの社長である遠山正道さんは、以前、私が勤めていた会社が運営していた学校「スクーリング・パッド」の頃からの縁で、今回、まさか一緒に会社を立ち上げるとは夢にも思わなかった。

もちろん、僕が現場に立ち続けるのは難しく、特に飲食に関する現場に立ち続けるメンバーも必要だったこともあり、高校時代の先輩であり、飲食の現場に強く関わっていた人物を、現場の責任者として起用することにした。

そして生まれたのが、「CAFE & RESTAURANT BRICK」というお店だ。BRICKは「れんが(煉瓦)」の英語。このカフェ・ショップも、元は煉瓦造りで、りんごのお酒「シードル工場」だった場所をリノベーション。古くからある既存の壁を一部活用し、カフェ、ショップと、改めてシードルが作られる「シードル工房」を増設し、出来上がったものだ。

立ち上げまで、かなり短い時間の中で、相当苦労した。そしてこの「コロナ禍」。実はお店のオープンも危ぶまれた。実際、美術館自体はオープンを延期し、ようやく先日7月11日(土曜)にグランドオープンを果たしたばかり。僕らは当初美術館グランドオープン予定だった日付、4月11日に「プレオープン」という形で試験的に営業を開始した。コロナ対策を十分実施し、営業時間を短縮、テイクアウト料理の導入、メニュー改編など、対応に追われたがスタッフ含め、非常に頑張って乗り切ってくれたことは、本当に感謝している。そして何より、その環境下で、お店にお越しいただいた皆さんに、改めて御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。

さて今回、お店の料理や内容については、このコロナ禍が治った以降、是非青森県に足を運んでいただき、存分に楽しんでいただきたいと思うので、あえて記載は省きますが、僕らのコンセプトは、「弘前のファミリーレストラン」を掲げております。ひとつずつ丁寧に、青森県産の旬の食材を使いながら、各々が異なるシーンで楽しんでいただくため、時間ごとにバリエーションを豊かにし、そして少しでもお腹がいっぱいになるメニューを用意しました。

そしてなにより、このカフェスペースに併設する形で「シードル工房」が出来上がったのだ。JR東日本青森商業(株)が2010年、新幹線が新青森まで出来上がった際に生まれた「A-FACTORY」が同時に入居、7基のタンクを設置した工房で作ったシードルを販売する「A-FACTORY 弘前吉野町シードル工房」

では、そこで作り上げたシードル「A-FACTORYアオモリシードル弘前吉野町1(スイート)、2(ドライ)」や「吉野町アップルソーダ(ノンアルコール)」を醸造し、現在カフェではグラスで提供、ショップでは、ボトルで販売しております。

美術館のカフェを作るにあたり、1年、2年という経営計画ではなく、5年、10年という中長期の店舗を運営、事業計画を立て、お客様にサービスを提供していかなくてはならない。もちろん1名では無理で、経営、現場、カフェであれば生産者や酒屋さん、ショップであれば作家さん、商品を扱っている企業さん、そしてなによりお客さんとの関係を作り上げることでなり得る「時間」だと感じている。特にコロナ禍を体験して思うことは、社会全体、そして飲食に関する、この先10年のおおよその方向性が朧げながら見え始めていると考えている。単に飲食店を開くだけではなく、その地域、そして外食に求められていることはどんなことで、その中で「飲食店」はどんな存在になり得るべきなのかという問いと答えが裏表のように、その場を現在取り仕切る人たちの気持ち、責任感で生まれ、育つのではないかと思う。このコロナ禍の中で、実施してきたこと、これから起こり得ることは、これまでの10年では到底クリアできない問題で、新たな答えを模索しながら、進むことにチャレンジする、そんな時代がそこまできているだと思う。

[概要]
・カフェ/CAFE & RESTAURANT BRICK
・ショップ/ museum shop HIROSAKI MOCA

https://www.facebook.com/cafe.restaurant.brick
[グランドオープン] 2020年7月11日(土) 09:00 ~
[ 所在地 ]青森県弘前市大字吉野町2−11
[ 電話番号 ] 0172-40-2775
[ 営業時間 ] カフェ/ショップ 09:00-22:00(L.O. 21:00)
[ 定休日 ] カフェ/ショップ 火曜(美術館に準ずる)

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp