和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第93回

梅雨入り、コロナ明け。虎ノ門横丁開業。

日本は「梅雨入り」が叫ばれ、鬱陶しい湿度と暑さがで始める季節が始まった。新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言が解かれ、週末は、街中には人手が増え始めている。特に3月、4月オープンをする予定だった商業施設が軒並み、オープンを始めている。

その中で、オープン早々人気を集めているのが「虎ノ門横丁」だ。6月11日に「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」が開業。おおよそ7,600平米(2300坪)に新しい商業施設が59店舗出店。物販やスーパーマーケット、そしてランチからディナーまで活用できる飲食店・レストランが目玉で、この横丁には東京をはじめ全国各地の名店26店舗が集結。

その中でいくつか紹介させていただくと、まず「振り塩とイタリアン イル・フリージオ」は、弊社oiseauがロゴデザインをさせていただいた飲食店だ。

山形県鶴岡市の『アル・ケッチァーノ』や、銀座の『YAMAGATA San-Dan-Delo』など、人気店のオーナーシェフを務める奥田シェフが新たに手掛けた『イル・フリージオ』は、なんと醤油の代わりに塩とオイルでいただく「オイル寿司」とイタリアンのお店だ。実は、山形・鶴岡に2年前、同店を出店。日本海側の漁港と連携し、うまい魚を仕入れ、オイルと塩で食べさせる味わいは、特に海外のお客様に大人気!そして今回の出店にあたり、なんと鶴岡のお店を閉じて(!)そこの店長ごと虎ノ門に出店してきたのは、流石に驚いた出店戦略です。当時、弊社は和食の料理人を派遣、お店を立ち上げからお手伝い、その時のロゴを、虎ノ門用に改変して、再出店!したのである。

一見すると、「?」という人も多いはずだが、イタリア料理の定番の一つ「カルパッチョ」からも想像できるように、ネタにオイルをぬることで魚介に不足している油脂分をプラス。人間が美味しいと感じる「糖分、油脂分、塩分、旨味」のバランスを絶妙に調整することで、究極の美味しさを実現しているのだ。

ネタとなる魚介は、日本海をメインに全国各地の旬の味覚を厳選。オリーブオイルは「ピスタチオナッツオイル」など世界各国から30種類以上をチョイス。塩に至っては「クリスマス島の海水塩」など100種類以上をそろえる。

わずかに苦味を感じる青魚にはミネラルの多いちょっとだけ苦味のある塩を。酸味のある赤身には少し酸っぱさを感じる塩を…といった感じに、アジには「チェントンツェ(オーガニック エキストラバージンオリーブオイル)」と「月の雫の塩」、スズキには「バジルオイル」と「玉藻塩」で仕上げる。「寿司は醤油」と既成概念を覆すことで、ワインとの相性もぴったりになった「オイル寿司」に是非チャレンジしてほしい!

もちろん、「オイル寿司」とともに、アル・ケッチァーノ定番イタリアン料理も揃っていて、特に、魚料理と、それを合わせたパスタが絶好にうまい!カウンターでイタリアンを食べながら、新感覚で食べられるお店であることは間違いない!

そして、この「虎ノ門横丁」をプロデュース、26店舗のリーシング(一般的に、商業用不動産の賃貸を支援する仕事)を担ったのが、マッキー牧元さんだ。「タベアルキスト」として立ち食いそばから割烹、フレンチ、はたまたエスニック、スイーツや居酒屋にいたるまで、旨いものがあると聞きつければ、距離を厭わず東西南北足を運んで舌鼓を打ち、年間600回超の外食生活を送る。

そのマッキーさんの店舗選びが抜群に面白い。なにより「超高層タワーの1フロア」という前代未聞のロケーション。丸の内HOUSEを少し思い出す。そして、各店にちょい飲み用のカウンターを設えると同時に、フロア内の数カ所に「寄合席」と呼ばれるフードコート的なコーナーを作ったこと。そこには、各店の寄合席用メニューを持ち寄って、ワインショップや蒸留所で購入した飲み物と一緒に、自由自在に楽しめるのだ。

そのお忙しいマッキーさんを、現在ほとんど虎ノ門横丁で見かけるのだが(笑)、マッキーさんが手がけているプロデュース店舗が、「築地金だこ」だ。コンセプトは「もし世界中にたこ焼が存在していたら、どんなたこ焼として愛されていたか?」だ。

たとえばフランスなら、「サフラン」と「アメリケーヌソーズ」でアレンジした「マルセイユ風」、「ブルーチーズ」を使った「ピレネー風」。さらに中国は「四川風麻婆豆腐」、タイなら「ガパオ風」…と、それぞれの国や地域の食材や食文化から考案したメニュー、常時2~3種類を展開していく。オープン月の6月に登場するメニューは「スイス ツェルマット風 ~チーズソース&生ハム~」と「タイ バンコク風 ~グリーンカレー」の2種類。「銀」ではない、「金」の第1号店が、『虎ノ門横丁』に誕生。『東京オリンピック』に向けて、東京がさらに新しく生まれ変わろうとしている今、『築地金だこ』が、世界に向けた「NEOたこ焼」を提案していく。

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こうして、新店舗がオープンすることは、僕自身とても嬉しく思っているが、すこしでも3、4、5月と弱り切った飲食業界をサポートしていくには、こうした新店舗だけではなく、自宅の身近にあるお店だと思っている。もちろん人気店や、美味しいお店は必然的に生き残っていくだろうし、生き残っていくためのポリシーがものすごく強く、そうした「強さ」に、お客様はエールを送りたくなる。しかし、街中の店舗はそうはいかない。どうやって飲食店を支えるべきなのか、僕も3、4、5月と時間をかけてはいたが、使う側、使われる側両方にとって、非常に重要な選択と決断を迫られた期間だったと思う。「コロナ明け」とは書いたが、ワクチンも依然と明確ではないまま、夏を迎えようとしている。この状況をどのように乗り越えていくのか。まだまだ先は長い。

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp