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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第91回

外食における「家族の食事」、新時代到来。2020年、僕らの時代の「ファミリーレストラン」とは?

コロナウィルス感染拡大防止より、日本国内に「緊急事態宣言」が発令されて1ヶ月。ミシュラン星付きレストランからファーストフードまでの、ありとあらゆる飲食店、そしてお客様で賑わう商業施設、公共施設が軒並み休業となり、特にゴールデンウィークは『オンライン帰省』が謳われ、車両に誰も乗っていない新幹線とは逆に、それぞれの在宅活動がSNSを賑やかしていたというのが印象的だったと思う。

しかしそうした新しい気づきを得られる一方で、5月14日(木)緊急事態宣言が一部解除になったが、ウィルス第2波に関する恐怖や不安、そして、そのウィルスを駆逐するワクチンの開発はいつになるのかを換算していくと、どんなに短く見積もったとしても1年ほどは、この影響は継続していくと僕は考えている

そんな中、僕は前回のブログで「食に関する接点」が大きく変化していくと書かせていただいた。例えば我が家でも、妻や子どもが自宅に待機し、仕事をしたり、遊びをしたり、普段では考えられなかった時間を生み出した、新しい時間の感覚を得られた1ヶ月でもあった。もちろん自炊に関しても、プロの料理人が提案するレシピが手に入りやすくなったり、そもそも料理人がオンラインで一緒に料理し、アドバイスしながら最後に一緒に食べて飲み合う状況が生まれたり、ECやウーバーイーツ含め、出来上がったものを自宅で提供される環境が、一瞬のうちに、世の中に提供、広まったことはとても大きいと感じている。そうすると、単に人と人がコミュニケーションや商談で使っていた「外食」の考え方もだいぶ変わるはずだ。

その外食。みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。ハンバーガー店や牛丼屋、ファミリーレストランなど、現在では多様な外食産業が盛んです。「チェーン展開」を特徴とするこれらの外食産業はおもに1970年代以降に登場したものですが、料理店や食堂など、家庭外で食事を提供する飲食店は、より古くからありました。1970年以前の話は、少し長くなるので、今回は割愛しますが、この「1970年」は外食の歴史上画期的な年でした。例えば、ファミリーレストランの「すかいらーく」が第1号店を出店し、同年大阪万博に「ケンタッキーフライドチキン」が出店しました。この年は業界において「外食元年」と呼ばれています。翌71年には銀座に「マクドナルド」の第1号店がオープンし、以後ファミリーレストラン、ファーストフードの大規模なチェーン展開がなされていきます。このころからマスコミで「外食産業」という言葉が使われだします。「外食産業」とは、『広辞苑』によれば、「飲食店業、特にレストラン・チェーンやハンバーガー・ショップなど規模が大きく、合理化された飲食業の総称」と書かれています。ファミリーレストランやファーストフード店の登場により、手ごろな値段で食べられ、食事の準備も後片付けもしなくてよいという、人々の要求が満たされ、外食は日常化していきます。

この「外食産業=合理化された飲食業」をもう少し噛み砕くと、例えば、ファミリーレストランは「家族連れ」に対応した業態ともされ、その料理の幅は老若男女に添ったものが提供されます。また、多くの客に同時進行で食事が供されるように、広い店内が特徴的といえるでしょう。また料理の価格帯は概ね大衆的で、500−2000円くらい。注文から提供時間まで3分以上(逆に3分より少ないとファーストフードと呼ばれます)、質と量共に低価格で満腹感が得られる傾向が強いのです。そして酒を飲まないお客様への細かい配慮が多く、例えば「ドリンクバー」などはファミレスから生まれたものです。ちなみに、欧米においては、レストランの多くが子供の入店を禁じているのがほとんどなので、この「ファミリーレストラン」という言葉は、「子供の入店が可能なレストラン」という意味で、確固としているのが通常です。

ま僕たちを揺さぶっているコロナウィルスの問題は、「合理化された飲食業=外食」を大きく揺さぶっているのは間違いない。先ほど「家族」「ファミリーレストラン」を取り上げたが、「家族が外食をする」という行為を改めて振り返る必要があると感じている。

この事例を検討していく際に、気になった飲食業態が、株式会社スマイルズが運営している「100本のスプーン」というレストランだ。いくつか調べてみると、この100本のスプーンは『子どものころに家族で行った外食の想い出は、今でも忘れないもの。「コドモがオトナに憧れて、オトナがコドモゴコロを思い出す。」そんな場所を作りたい』という気持ちで、「ファミリーレストラン」をスタート』させている記述がある。

(参考:https://www.smiles.co.jp/business/#/project/spoon/spoon05

実際にお店を訪ねてみると、どのお店も50席以上、価格帯は1メニューあたり1000-1500円とお値段はそこそこ上がるが、だれでも持ち帰ることができる新聞紙のようなメニューには、写真がふんだんに使われ、どれも美味しそうなラインナップが躍る。

その中でも『好きなものが少しずつたくさん乗っているお子さまランチをイメージした、大人も食べたくなるワンプレートメニュー「リトルビッグプレート」』は人気メニューで、大きな木皿に10品が載せられた通常サイズのほか、こどもや年配者も、大人と同じ料理を食べられるようにボリュームをおさえた7品の提案が、今の時代において新しく感じた。また飲食以外にも、記念日のお祝いやハレの日の家族の食事、離乳食の提供、コドモもオトナも楽しめるイベントといった「家族が外食すること」に特化した飲食店を作り上げていたのが印象的だった。そもそも僕らが「外食する」というのは、食事以上に「コミュニケーション」が主だったと感じることに、ふと思い当たるお店の作り方をしている。

例えば、僕がいま手掛けている、とある美術館に付帯するカフェも、「家族」をメインにしたレストランを考えていた。特に「美術館」のような文化醸成する場において、「美術館にわざわざ来る時に、食事する場」「今日は家族で美術館へ、帰りにカフェへ」「あの日、デートしたのは、美術館のカフェだったな」とその時間を印象付ける場の提供こそ必要ではと感じたのだ。どれも食の接点、いやその場を体験した「時間の接点」としての場、外食を提供するレストランとしての役割が必要だと感じている。もちろん、うまいまずい、そんなカフェだったら、こんな料理や提供サービスが必要だとアイディアは膨らむが、結果、飲食としてだけではなく、その場を提供する「時間プロデュース」こそが、そのカフェには必要だった。

100本のスプーンは、「スタンダードを、より上げていく」という方向性が見えた。僕らオアゾも、なにか一つを極めていくのではなく、皆がほしいもの、スタンダードを、より上げていくことがテーマと感じている。「家族と過ごす外食の場」をどのように作り上げるか。このスタンダードを上げることが、新しい家族のコミュニケーション、時間作りのお手伝いができるのではと感じている。

100本のスプーン:https://100spoons.com/

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp