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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第88回

千葉・房総のおいしさを「伝え手」としてつなぐ、Fusabusa。

新型コロナウィルスの影響で、とうとう2020東京オリンピック・パラリンピックが、最大2021年夏まで延期が発表。その後、東京を始め、日に日に感染者が増えている。週末の、都心での商業施設は軒並み休館。できるだけ多くの患者を増やさないよう、外出自粛ムードは拭えない。3月、そして4月以降のイベントや催しが軒並み延期、中止が叫ばれる一方で気晴らしに、千葉県鴨川に足を運ぶ機会を作った。

以前、鴨川の海岸沿いに「里海食堂+カフェ FUSABUSA(ふさぶさ)」という飲食店があった。このFUSABUSA、「房総」を訓読みでよむと「ふさふさ」からきていて、「房総の食の素晴らしさをもっとたくさんの方たちにつなぎたい、『伝え手』になりたい」という思いから「ふさぶさ」と命名。主に、食堂やカフェ、お取り寄せのロールケーキ やプリン、セレクトショップで販売する商品、またお店を活用したワークショップなど多岐に渡り、「食の接点」を演出していたお店であった。千葉房総半島の、旬の素材に拘った料理、地元の牧場からわけていただく新鮮な牛乳から作るスイーツが人気で、僕も時折、気分転換に足を運んでいた。

そのFUSABUSAが店舗を閉め、2017年春から、オーナーである小野さんの実家が代々所有する鴨川市内の休耕田を、里山の豊かな生態系を背景とした「耕さない田んぼ」として再生する活動を始めたのだ。荒地となった田んぼを、生き物と共生し、環境に負荷をかけない田んぼに蘇らせる活動だ。

「近くまで来たのですが、どのあたりですか?」と小野さんに電話をすると、すすっと、近くの民家から、愛犬「マルコポーロ(ジャック・ラッセル・テリアという小型犬で、名前から『マルコ』と呼ばれる、実はコンテストでアメリカでナンバーワン(!)を獲った可愛い犬がいるのです。。)」とともに小野さんが現れた。実は、小野さんのご実家であり、ご自宅の場所が、新たなフィールドだった。

その民家の横に「naya(なや/納屋)」があった。中に入ると、きれいにリニューアルされた場所で、以前海岸沿いにあったFUSABUSAの名残として、椅子や机、そして、小野さんの、相変わらずセンスの良い家具や小物が飾られている。

また、以前、小野さんとやりとりして進めていた、「摘果みかん」を活用して作った果実酒まで置いてある。小野さんの世界観が、ひとつずつ、ものすごく丁寧に、表現されているのがとても感心した。

ちょうど小野さんの手料理を、いくつかいただくことになった。小野さんとときおり、話をしながら、小野さん手作りの、房総半島の食材を纏った料理をいただき、小野さんが、このふさぶさファームを通じて、食に限らず、生き方の提案をされている印象を感じ取った。そこの中心に「食」を据えているのは共感できる。

このFUSABUSAの、「ふさぶさファーム」はもちろん誰でも参加が可能だ。鴨川の山側の地域だが、その里山風景は、日本の各地の風景に似ている。なにより空が広い。新型コロナウィルスを、この2020に経験し、食もさることながら、生き方の再定義が求められている気がする。だからこの空の広さこそ、再定義のきっかけを与えてくれる「余裕」を感じるのだ。

FUSABUSAが伝えていく「おいしさ」こそが、人として生き抜く時間と、その余裕を演出していくのではと思う。家具ひとつ、使用する食材ひとつ。春の、良い時期に、鴨川を訪れて感じたことだ。

FUSABUSA:http://fusabusa.jp/

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp