和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第86回

食材が生まれる現場が、味を物語る。

非常に天候があやふやな2020年。雪は例年以上に少なく、すっきりと晴天が続く毎日、僕は高知県土佐清水を訪れました。

2013年にユネスコ無形文化遺産として認められ、和食(日本食)が世界中の人々から注目されるようになり、和食の基本となる「だし」という言葉も注目され始めました。日本の「だし」という言葉を聞いて、多くの人がイメージするのは鰹(かつお)節。和食(日本食)の繊細な味付けは、だしの原料となる鰹節の風味や味を活かした料理がベースとなっています。

今回訪れたのは、有限会社ヤマアさんという宗田節一筋80年を超える製造業社です。宗田節とは“ソウダカツオ”から作られた節のことです。スーパーや百貨店で販売している鰹節削りは荒本節という鰹節を削ったもので、荒本節の素となる鰹は“マガツオ”と言われるものです。同じ鰹という名前が付いていますが、種類が違うため、節になった時の見た目やだしをとった時に味の違いが出ます。また、ソウダガツオには表面に優良なカビを人工的に発生させた枯宗田節もあります。ソウダカツオは西日本で“めじか”とも呼ばれることから、宗田節のことを目近節(めじかぶし)とも呼びます。

宗田節の主要生産地は高知県です。ソウダガツオは釣り上げてからの鮮度が落ちやすく、水揚げから節の製造までにあまり時間が掛けられない魚なのです。そのため漁港の近くで加工する必要がありました。なかでも高知県土佐清水市は2017年のソウダガツオの漁獲量が3500トンと第2位の長崎県800トンと比較しても4倍以上の水揚げ量があるため、宗田節の生産量は多く、宗田節づくりの一大産地となっています。

そして、ソウダガツオは1年を通し漁獲されるのですが、時期によってソウダガツオの脂肪分が違うため、宗田節からだしを取った時に味に違いが出るといわれています。

これは、脂肪分が多いソウダガツオを宗田節にすると、だしを取った時にだしに脂肪分が溶け出してしまい、だしの旨味や色調に影響が出る場合があります。もちろん脂肪分が多いとだしを取った時に影響が出やすいのですが、少なすぎても旨味を感じにくくなってしまいますので、程よい脂肪分が必要となります。その中で土佐清水市では年間を通してソウダガツオ(めじか)の呼び名が変わります。これは、ソウダガツオの大きさと脂肪分をどの程度含んでいるのかが分かりやすくなり、宗田節作りの指標ともなります。

その宗田節づくり現場は、1階から3階にかけて作業が分かれており、3階屋上にでると、土佐清水 中浜の海岸がひらけて、天日干しされた「宗田節」を拝むことが出来ます。

いくつか、宗田節をいただきましたが、思いの外「さっぱり」とした味わい。麺つゆにしたり、そのまま食べたり、開発中の商品も試食しました。味わい深いものばかりです。宗田節だけではなく、それを扱う商材ふくめ展開すると面白いと感じました。また、今まさに商品開発している商材があり、いくつかサンプルを味合わせていただきましたが、宗田削りの美味しさともいえる、「香りとだし」のコクが素晴らしい。特に、宗田節は香りも良く、コクのある旨味も感じる事が出来るので、香りと味を楽しめる煮物や鍋物・麺つゆなどで使用すると美味しさが引き立ちます。

こうした味わいをこしらえているのは、この製造に関わっている、若いスタッフたちです。主にこうした食品工場では、玄人のシルバー人材が多いのですが、ヤマアさんのところは、20代の男性が多いのが印象的でした。だから、といってはおこがましいのですが、非常に「イキのいい宗田節」が出来上がっている印象です。(節、なので、イキがよいとはおかしな表現ですが、、)

たまたま訪れた日が快晴の日でした。そんな環境で働く人たちを応援するために、どういう風にスポットを当てていくのかがポイントだと常に感じております。

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp