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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第85回

福島県のくだもの屋が仕掛けた、ふくしぼりりんごジュース

2019年夏より、先日まで、福島県福島市にある「くだもの畑」さんのお仕事をさせていただいておりました。今回は、りんごジュースの販促に関わるお仕事についてです。

当初お話をいただいた時は、「東北パッケージデザイン展2018 優秀賞(東北農政局長賞)」を受賞した「ふくしぼりりんごジュース」をどのように消費者に届けるのかというお題でした。

「ふくしぼりりんごジュース」は、福島盆地が育んだ「サンふじりんご」を100%使用したもので、これまで、通常のりんごジュースとして、「くだもの畑」さんで販売されていた。そのりんごジュースを、多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒、現在神奈川にお住まいの大原菜桜子さんが、コンペ用にデザインし、晴れてデザインを一新、販売に漕ぎ着けたのである。

大原さんは、

「福島で作られたりんごジュースらしさを福島の伝統工芸である『土湯こけし』をアレンジして表現した。こけしというモチーフを用いる事で、①老若男女を問わず福島らしさ・安心感が伝わるデザイン。②売り場での目立ち感と共に家に飾りたくなる愛らしさがあり、人に贈りたくなるデザイン。③こけしの様にこだわって一品一品作っている事が伝わるデザインである事を目指した。

顔の形や絵柄にりんごの要素を散りばめたこけしのイラストを瓶に大きく配置。店頭でこけしが賑やかに並んでいる様に見える事を狙った。贈答用の箱はりんごの段ボール箱をイメージし、クラフト調と色数を絞った印刷で親しみと産地ならでは感を表現している。シリーズ展開時はこけしの高さを調整して他容量へ展開が可能で、モチーフの果物を変えることで他のジュースにも対応可能となっている。商品名は「福島のおいしさをぎゅっと絞った」という意味の「ふくしぼり」と名付けた。」

とし、くだもの畑さんが経営している場所の近く「土湯温泉」の伝統工芸、「土湯こけし」をアレンジし、これまでのりんごジュースのパッケージにはなかった、個性的で見栄えの良いアレンジを施したのである。

一方、くだもの畑さんは、そのジュースを、福島に限らず、もっと世の中に広めていきたい、マーケットを広くしたいという思いから、「2、3本をセットにして販売したい」「りんごに限らず展開を検討したい」「りんごはもちろん、そのほかの『福島の果物』にもスポットを当てたい」という要望があり、大原さんに引き続きデザイン部門を依頼しながら、「消費者へのお渡し方法」をさらに検討させていただきました。

一番苦労したのは、「2本、3本セットの化粧箱」です。アウトプットが「ガラス瓶」ということで、それなりに重くなります。まずその2、3本を入れ込む化粧箱の「強度」がポイントなります。また、「お持ち帰り」ではなく「贈答用」という部分も議論しました。いわゆる小売店やスーパーでそのまま購入して持ち帰る方にとっては、2、3本のリンゴジュースはなかなか重い。よって、宅配でお客様の元に届くような状態が望ましいということで、「紙」「木」といったそれぞれの版を何度かこしらえ、最終的に「紙箱」という部分で落ち着きました。もちろん、その箱についても、細部にこだわりをもつべく、「木目柄」「デザインにとりこんだ、そのほかの福島の工芸スケッチの紹介」といった部分も入れ込み、「贈答用」「お届け用」として、より「福島を感じてもらう」デザインに溶け込ませた内容にしております。

また今回に合わせて、りんご数個といった「果実のお持ち帰り袋」も検討させていただきました。僕も八百屋事業を経験したことから、こうしたビニール袋の良いものの検討はしてきましたが、最終的なコストや内容に応じて、通常のビニール袋になるのが妥当です。ただ、今回は「福島らしさ」という部分で、ポジティブに持ち帰って欲しい、そうした袋をつかって、福島のくだものを「つつみこみ」、そのつつみこまれた果実に愛情を持って接してもらいたいという意図から、透明袋に、印刷をかけ、あたかも「籠に盛られたフルーツ」として見栄えるようなデザインを施しました。ちょうど、こうしたオリジナルの型を持った会社がおり、その会社とともに、デザインを見直すきっかけをいただいたのですが、デザイナーの大原さんも、積極的に、福島の果実とデザインが邪魔にならないように、工夫して検討してくださったことも大変助かりました。

福島は、東日本大震災からまもなく10年、まだまだ関東より以西にむけての販促効果が出にくく、影響はこれまでも、これからもまだまだ続くと思います。そうした中で、今回お手伝いさせていただいたのは、その現場で戦おうとしている事業者の心意気でした。商売は「儲けてなんぼ」の世界です。りんごジュースをつくって販売するのであれば、それこそ僕の地元でも青森県のリンゴをつかい、デザイン性の高いリンゴジュースを販売することが一番でしょう。しかし、福島に限らず、日本の全国各地で、地元の食材を販売し、より多くの消費者につたえ、商売していくことは、至極大変と思っています。しかし、その大変さを凌駕し、より多くの人に伝わり、購入いただくためには、今回のようなチャレンジ、デザイン性の高いものの価値は、より重要だと感じております。その価値をどのように発信していくのかが僕らの仕事と思っています。デザインはもちろん、りんごジュースのスペックも非常に高いので、ぜひこの機会に購入、飲んでいただけると嬉しいです。

くだもの畑:http://www.kudamonobatake.jp/

松田龍太郎

松田龍太郎

慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後企画・プロデュース業に転職ののち、2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を立ち上げる。
主に食にまつわる事業開発・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在2019年11月1日にオープンした渋谷スクランブルスクエアB2階に、ハワイのヴィーガンカフェ人気店「PeaceCafe Hawaii」をデリスタイルに業態変更、店舗展開のお手伝いをしている。また一般社団法人日本パイ倶楽部理事を務める。
http://www.oiseau.co.jp