和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第81回

酒のあてを、スッとあてがう、ほろ酔い月島。

海外から国内と毎年秋冬は、まさに移動の季節。12月に入り「師走の季節」といわれているが、先日、出張で北海道に行った際にはすでに雪国。今年初のダウンジャケットをもち、首元までしっかり締めながら歩いた寒々しい北国から羽田に戻ると、そのダウンジャケットを脱ぎすて、今度は薄手の長袖で歩かねばならないほど暑い東京という場所は、忙しなくも、2020年オリンピックに向けて颯爽としている。季節は冬。秋があっという間に過ぎ去った。

そんな東京でも、少しの時間、「一服」したくなるような時間に、出会いたくなる。気の利いた友人から「月島駅から徒歩5分。ちょっと佃(つくだ)寄りだけど、友人が店を作ったのでぜひ!」と言われて、日暮れが早くなった17時、いつもより早い時間に、月島にむかった。「もんじゃ焼き」の街として知られ、日中は少し煙った香りがする月島。

友人がくれた地図を頼りに、そのもんじゃストリートを背中に、佃方向に足を向ける。とある高層マンションの裏手に、ひっそりと「ategatte(あてがって)」というお店を見つけた。11月初旬にできたばかりのお店だという。

お店の前にはオープンしたばかりの祝い花が。ガラス戸を引いてお店に入ると、「どうやって入れたんだろう?」と思うくらい、立派な木をかち割った、素晴らしい木目のカウンターにでくわす。僕もこういうカウンターは大好きだ。そのカウンターの中に、お客様の座った位置と同じ目線になるような低めのポジションにスタッフ男性2名がいる。なるほど、「飲食を知っている」。また、お店の雰囲気はbar(バー)のような感じで、特に、お店の造りが長細いということもあり、奥の壁は「鏡」で奥行きをだしていた。

先に来ていた友人は、入り口すぐのカウンターの端に座っていた。正面すぐのカウンターは、5−6名が座れるように、ぐるっと囲い込むようにカウンターの端が、四角いテーブルのようになっている。どうしても一直線のカウンターであれば、4名以上のお客さんは、それぞれ端どうしの人と話がしづらく、座り位置などを気にするものだ。けれど、このカウンターテーブル席は、そこをうまく使っていて、このbarのようなお店でも、十分「小料理屋」のように、常連がグループで来ても問題ない造りになっている。これもお店を運営し、飲食できちんとビジネスをしようという意気込みを感じた。

「酒、ツマミ(あて)を【あてがう】ことからお酒や、ツマミなどをあてがってほしい(提案する)ことから名付けました」。

酒の伝道師という肩書を持つ、店長の永友氏にお店の由来を聞いたときに話されたことだ。日本酒、ワインと、いろいろオーダーをだし、永友氏に「あてがってもらう」と、まさにコンシェルジュのように、うまい酒が出てくる。

「うまい酒」は、お店の店員に勧められたときに、実力がわかる。これは、久しぶりにほろ酔いになりそうだ。

宴席も中盤。ふと提供された鮮やかな「馬刺し」に目を見張った。赤身と脂身を合わせながら食べると、辛口の日本酒がぴったりだ。他メニューも季節に応じて、お客様の飲み物に応じてあてがわれる。友人はおもわずもう一皿注文した。もちろん、それにあわせてスッとサワー系のドリンクがあてがわれる。僕は永友氏が「バーテンダー」に見えた。

聞くところによると、永友氏は、天王洲アイルにある、某有名クラフトビール屋で働いていた強者で、今回、物件を探しに探して見つけたとのこと。夜に訪れた店だが、普段であれば、住宅の入り口のような物件だけど、そのなかで、世界観がきちんと入り込んだお店になっていて、好感がもてる。僕も、自宅周辺でしっぽり飲むときはたいてい、門前仲町だったが、築地・勝どきからも程近い月島で美味しいお酒とつまみを「あてがう」ことができるお店が新しくできたのは嬉しい。

ぜひ「ategatte」を探してみてください。たまに僕も「あてがって」います。

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp