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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第80回

爆発的に広がる中国での「日本料理屋」の出現!

11月。いよいよ2019年も残りわずかになった。ちょうど、天皇陛下御即位をお祝いする国民の祭典も終わり、令和元年も、新しい時代の幕開けとなった。

私は、中国・上海に、今年の1月から10カ月ぶりに視察として向かった。目的は、中国最大の食の展示会「FHC2019」だ。生鮮以外の、加工品、製造商品、またそれにまつわる設備もろもろ一堂に会した展示会だ。珍しく空は真っ青で、この時期には珍しく20度を超えた天候だった。

まず中国全土と言われるだけあって、その展示会の物量(出店者数)にはど肝を抜かれた。日本で言えば、千葉・幕張にある「幕張メッセ」のおおよそ3倍の大きさ。まさに、大きな町一個分が展示会場になっている。またこの展示会のレイアウトは、大きく三角形の配置となっており、一辺は、グローバルエリアとして、日本をはじめ、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各国からの出展者で連なる展示となり、もう一辺は、中国市場で展開しているものが、カテゴリー別に、ベーカリー、スイーツ、フレンチという具合に分かれた展示、さらにもう一辺は、酒類、おもにワイン、リキュールといったラインナップで展示された、それぞれ3つの大きなエリアで分かれていた。

私たちは、その中でもグローバル、特に日本エリアの、JETRO主催ブースを中心に拝見させていただいた。今回の出店のラインナップを見るに、主に島根県の酒造組合、福岡・北九州の酒造組合などの出店が目立った。上海からすれば、九州・福岡から片道2.5時間の距離。海外事業展開としては、大きなマーケットであることは間違いない。

そして「日本酒」という商材展開も見逃せない。特に2018年は、日本酒の輸出量が、過去最高となり、また先日、海外向け販売に特化した、日本酒醸造に関する法律が制定され、2020年度以降、新たな動きが生まれる準備が進められている。一方、食に関しては、以前多く見られた「日本の地域における特産品を活用した商品」が少なくなった。むしろ、そうした商品より、簡単に調理ができるソースや調味料、冷凍食品の展開が数多く見られた。この展開から「できるだけ簡単に手早く」という主旨が見られ、訪れたバイヤーたちも、賑やかに出店者との交渉をしている様子が伺えた。(また一般のお客様も多く見られたが、試食・試飲を実施している店舗ほど多く賑わっていた。)

今回、出店者ほか、様々な方々にヒアリングさせていただいたが、みな一同に「日本料理店が爆発的に増えている」という印象を述べていた。この「日本料理屋」という部分が重要で、例えばラーメン屋から回転寿司、トンカツ屋から居酒屋、果ては高級和食業態まで、日本に紐づくレストランは、ほぼ全て「日本料理屋」と言われているところだ。2019年の現在、中国全土では少なくとも5万件を超え、2015年、2017年とまさに倍々、という形で増えているのだ。

僕がもった印象は、大きく分けて二つ。1つは、まずビジネスとして捉えた場合、その多くの日本料理屋が増えていくことにより、「味の日本化」を進めていくために、いわゆる「調味料」の輸入が盛んになってくるはずだ。これは、先ほどのFHCでも同様だが、醤油などの調味料、また例えばお好み焼きにかけるソースも日本からの輸入、あるいは、国産として、中国で製造を実施し、すでに流通し始めている。また、多くの日本料理屋は、「日本食材に特化した卸会社からの流通」も多くなっている。実は中国では大手2社の、日本食材に特化した企業が存在する。その2社から、それこそ、日本とは変わらない食材を(青果以外だが)仕入れることができるようになっている。その仕入れができるようになれば、多店舗展開も可能で、10店舗、100店舗はすぐに可能になる。それだけ中国は「広い」。実は上海で、いくつかの日本料理屋を訪ねて食べ歩いた。主に、日本で経営展開し、中国に業態ごと輸入している会社のレストランだ。その成り立ちは、すでに日本と変わらず、店内のメニューも、中国人スタッフも日本語ペラペラだ。それでいて味は、多少違いはあるけれど、おおよそ日本と変わらない(し、ほぼ微差だ)。

そしてもう一つは、「日本料理屋を担う料理人の育成」だ。これだけ倍々という形で店舗が増えれば、そのニーズとビジネスデザインによって、お店にも人材が必要だが、だれでもラーメンからトンカツ、高級和食料理はできっこない。むしろ、その人材を育成するために、日本料理とは?という部分を、一から学ばないといけない。日本では、築地にお寿司の学校があるように、中国上海には、日本料理を中国人料理人に学ぶための学校や、研修が盛んだとのこと。また業態によっては、長年の修行が必要なものではなく、1週間〜1ヶ月単位で、しっかり研修を受ければ、店舗運営には問題はないはずだ。(あくまでもプロ目線の話だが。)また、そうした日本料理の研修をビジネスのベースにする企業も発生している。それだけ「爆発的に」日本料理は、中国で広がりつつあるのが現状だ。

単に、話題や店舗数だけではない。フランスが国策としてフレンチという料理を世界中に広げ、さらん「ミシュラン」のようにレストランを評価し、お客様を集客する手法を広げていったように、中国の爆発的な勢いに、スキルやクオリティが担保してくれば、日本料理の新しい境地や発展が生まれる可能性は十分にある。

けれど、私は日本料理をあくまでも「和食」とは捉えていない。このブログの主旨でもある「和食スタイル」は、そのスタイル自体の趣もあるが、いわゆる「日本」「日本人」「日本ならではの」という、かなり特殊性を持ちうるコンテンツだと考えている。だからこそ、中国で「和食」が定着するのはまだまだ先だし、大きく捉えて、そもそも困難、という捉え方であってよい。

むしろ、そうした「和食」に興味を持ち、日本を訪れる中国人が増えていくことは、加速的に考えられる。2020年オリンピック以降、アジアというエリアを見る際に、こうして和食のクリエイティビティが輸出される一方で、その源を探る日本探究が増えてくるのではないかと。

僕はこの上海で「味噌」の可能性を2年ばかり追っかけてきた。味噌の見えた、魅せ方、ブランディングの方向性を考えた場合、あえて「和食」として、味噌の情報発信をしていきたいと考えている。新しい味噌の使い方もさることながら、日本人が好んで、毎日の日常で飲み続けてきた「味噌汁」を上海でどのように展開させていくかを検討したい。

松田龍太郎

松田龍太郎

慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後企画・プロデュース業に転職ののち、2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を立ち上げる。
主に食にまつわる事業開発・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在2019年11月1日にオープンした渋谷スクランブルスクエアB2階に、ハワイのヴィーガンカフェ人気店「PeaceCafe Hawaii」をデリスタイルに業態変更、店舗展開のお手伝いをしている。また一般社団法人日本パイ倶楽部理事を務める。
http://www.oiseau.co.jp