和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第79回

「安全」「安心」という言葉が生み出す、絶対条件。観音山フルーツガーデンの挑戦。

「絶対、手選別です!」と、僕を和歌山の山奥に連れて行き、そこに芽生えた青い実を、そのまま食べてみろと児玉会長さん。手に取った青い実は、甘酸っぱくて、酸っぱい「青いみかん」だ。ちょうど食べさせていただいたのが9月下旬頃。手のひらにすっぽりおさまるミカンをむいてみると、鮮やかなオレンジ色で、酸っぱさと言うより「温かみ」を感じる色だった。

例えば、大型機械を使ってサイズ分けしますと、長い工程でくだもの同士がぶつかり合い、その摩擦で沢山のショックやストレスを受ける。そのため、くだものの呼吸が活発化してわずか数日後、味に大きな劣化が起こる。特に、柑橘栽培農家の間では、この劣化した味を「コロコロ転がり、味がボケる」ことから通称「煮えた味」と言うそうだ。

だから、観音山フルーツガーデンでは、手作業で果物1個1個をまるで「生タマゴ」を取り扱っているように選別し、出来るだけ実へのショックを無くする手間をかけている。「大量生産、大量流通」の効率性も大事だが、少し非効率でも美味しさを劣化させることなくお届けすることに多くのファンをつくっている。

例えば、こちらのフルーツパフェ。児玉会長からパフェの特徴だけに限らず、経営しているカフェの数字(経営状況)も見せていただいた。和歌山の山奥で、東京や大阪の繁華街のカフェでも出すことができない売り上げを立てていることにまず驚いた。そしてなにより、著名なパティシエが作り上げたものではなく、自前のスタッフが修行し、素晴らしい商材を作り上げていることも目を見張る。これは「安い!」「高い!」ではなくて、「美味しいものにたどり着くコツ」を果物屋目線で分析し、きちんとビジネス化しているさまが素晴らしいと感じている。(写真の「いちじくのパフェ」は国産いちじくをふんだんに使っており、都会でもなかなか食べることができない代物だ)

11月より京都にもパートナーを介して、このパフェ屋が完成した。

参考:2019年11月1日オープン 観音山フルーツガーデン京都店

http://osumituki.com/hack/kyotokanko/sweets/129591.html

またいま北海道にも新たなパートナーを見つけ、同じくパフェと果実のお店を作ろうとしている。そしてそこで面白いのが「果物屋のフランチャイズ化」だ。単純に名前貸しではなく「その土地で生まれ育った果実を中心に店作りの実施」をしているところだ。確かに、和歌山の、観音山フルーツガーデンの果実はうまい。けれど、旬や季節に応じてその果実は採れない日々も生まれる。もちろん和歌山から運び、移動させることにも移動ロスが発生し、経済的にもうまくいかないだろう。だからこそ、北海道ならではの果物展開があると見込んだ児玉会長は、そこにチャンスを見出そうとしている。この動きは僕も気にしている。

果物の取り扱いは、八百屋をしていた身として、非常に難しいと感じているが、人を喜ばせ、ポジティブにする食材は、他にない。この果物の展開が、新たな勢いを作るだろうと考えている。

●和歌山県紀ノ川・観音山フルーツガーデン

https://www.kannonyama.com/

〒649-6531 和歌山県紀の川市粉河3186-126
電話: 0120-593-262(フリーダイヤル)

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp