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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第70回

僕らが摂るべき「食」とは? 三陸は、世界と繋がっているのだ。

(写真:本会議参加者によるフォトセッション)

東日本大震災津波発災後に国内外から寄せられた多くの支援に感謝の意を表し、ガストロノミー(美食術・食文化)の視点から、いわて三陸の魅力、豊かな食材や食文化等を発信する機会として、国内外の著名なシェフや専門家等が一堂に会する国際会議が、6月10日(月)、11日(火)と2日にかけて、開催されました。

(写真:フランス・パリ「BOTANIQUE」シェフ、山口杉朗氏と。実はこのブログに過去掲載されています!ベトナムのチョコの話題、覚えていますか? 覚えている人はすごい!)

今回、フランス・パリ「BOTANIQUE」にてシェフをしている友人、山口杉朗さんが、わざわざ専門家として呼ばれることと、私の地元青森県弘前市のイタリアン「OSTERIA ENOTECA SASINO」のシェフ笹森通彰氏も応援でイベントを手伝うということもあり、急遽東京から夜行バス(!)に乗り、一路岩手県宮古市に足を運ぶことになりました。

会議はあっという間に終わり、それを噛み締めながら新幹線でこのブログを書いているのだが、私が感じたこととして「三陸におけるガストロノミーのバランス、イメージの共有を作るための場」を作ったのだと思っている。

単純に、僕ら以外の食に興味があまりない市民や県民にとって、「なぜ三陸でガストロノミー?」ということも共感ができないし、そもそも興味がないということもあるだろう。また少し興味のある人でも、そうしたイベントにちょっと参加してみようとか、これから実施される美食サロンに出てみようと思うくらい。僕のように夜行バスに乗り込み、ぜひ聞きたいという人はどのくらいいたのだろうか。どちらかというと、世の中の「三陸ガストロノミー」の意味合いは、この会議が始まらなければ、その程度だったのかもしれない。僕のように友人や食にまつわる仕事に携わっていなければ、全くと言っていいほど、来る必要のない旅なのかもしれないのだ。

(写真:主に会議は、公民館ホールを活用したものだった)

しかしこの会議に出席することで、僕の中では、「なぜ三陸だったのか」ということが明確になった。もちろん日本中の多くの場所には「美食」「食文化」が多く存在し、例えば伝統料理や地元でしか味わえない郷土料理がある。それも日本における「ガストロノミー」だと僕は思っている。

その中で、この三陸が取り上げるべきガストロノミーは食材というより、テロワール(=風土)でもある「海」なのだ。もちろん三陸は「世界三大漁場」であることは知られているが、そもそも世界三大漁場である意味を知っている人はどのくらいいるのだろうか。リアス式海岸が長く延び、太平洋という大きな海がもたらす暖流や寒流、そして日本という場所が、その太平洋のどの位置に配置されているのか。どんな魚種が、春夏秋冬泳ぎ、子を産み、そして戻ってくることを、どのくらいの数で、どんな回数で、何年継続しているのか。その全ては、連結してつながっているとても大切な連動だったのだ。

そして、それがずっと続く永遠なるものではなく「限度あるもの」であること(=サスティナビリティ)、また三陸という場所を培う、山や森、海をつなぐ川の様子、そしてその界隈で住まう人たち(=テロワール、風土)が、この世界三大漁場に少しでも関わっていることに、各発表者の発表の中にも、気づかせようとしていることが印象的だった。

(写真:オリヴィエ・ローランジェ氏。フランス随一の巨匠シェフ。世界57カ国の高級ホテル・レストラン約500軒が加盟する会員組織「ルレ・エ・シャトー」副会長。魚料理が注目され三つ星を獲得したシェフでありながら早くから海洋の絶滅問題に着目し、2009年より絶滅危惧種をメニューから外すなど、世界のグルメ界に影響を与え続けている。 )

前述したオリヴィエ・ローランジェ氏の講義の中で、いくつかの言葉が心に残った。改めてメモしておく。

1、「地元の食材が、他の地域では輝きを放っている不思議さ(→補足:「三陸」という食材が例えば「東京」「香港」という、他の場所で付加価値をだし認められる一方で、三陸自体では、価値はなく、気軽に食べられる家庭料理の食材としてとして扱われている、料理の妙。)」

2、「ガストロノミーが存在しなかった土地でレストランを作ること(→補足:オリヴィエ氏ご自身が作られたレストランの場所は、海外のお客様などにとっては不便で全く行きづらい場所ではあるが、そこで生み出された料理が、やがてミシュラン3つ星を獲得する店に導いたとのこと。)」

3、「僕らは目の前にある海のことを全く知らなすぎる。料理に使われる魚はせいぜい魚種のうち60%。そのうち50%がすでに絶滅、のこりの50%は、絶滅の危機にさらされている。単にメニューに載せている、美味しいものを巡って乱獲される魚種よりも、資源がまだ多く、僕らに知られていない魚種をもっと使っていくべき。」

(写真:オリヴィエ・ローランジェ氏の講演テーマ。いわゆる海を守ろうというのではなく、守っていく人の大切さを説いている。)

4、「土地の肥沃さ、森、水、海。この『手づかずの自然のまま、あるがまま』であることが、三陸ガストロノミーが生み出す『連帯力』だ。この力がなければ、世界三大漁場は生まれない。」

5、三陸で生まれた若い人たちへのメッセージとして、これからの時代に必要なことは、どんな水、どんな食材をどのように食べていくべきかを考えたうえで、この地で生まれる新しい命、食材とともに「この地域にとどまってほしい」ということを訴えたい。食べることの喜び、生きることの多様性、人の健康を守ること。それらを「守る人たち」になってほしい。そしてやがて、世界中の人たちが、この太平洋を巡ってきた魚たちの、「太平洋の味」を自然に敬意を持って食べてほしい、それが「未来の言葉」だ。

久々にグッときた言葉たち。僕らが毎日食べている白米、味噌汁の味噌、その他の食材が、やがて採れなくなる時。僕らが生み出すレストラン、飲食店、食物販はどんなものになるだろうか。世界は、いまもなお開発は止まらない。時代は、人間を始め大きな食物連鎖の中で生きている。100年後の地球という場所はどんな「食」をもたらすのだろうか。実は単純に、僕たちの食に対する捉え方なのかもしれない。

(写真:神宮前「フロリレージュ」川手氏の講演会。塩の苦汁を使った商品開発案は目を見張るものだった。)

(参考情報)

●三陸国際ガストロノミー会議(6月10日〜11日/終了)

https://gastronomy-sanriku.com/

※6/10,11の会議スケジュール

https://gastronomy-sanriku.com/wp/wp-content/uploads/2019/05/program0520.pdf

●三陸美食サロン(6月1日〜8月7日/開催中)

国内外の著名なシェフと岩手のシェフとのコラボレーションにより、岩手の食材を使って創作した料理を岩手沿岸部の13市町村のレストランで提供します。

https://gastronomy-sanriku.com/salon/

●食のキャラバン(6月5日〜8日/終了)

国内外の著名シェフがいわて三陸の漁場や生産地を視察し、地元漁業者や学生等との交流を行います。

https://gastronomy-sanriku.com/caravan/

 

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp