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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第68回

鎌倉に生まれし、限定2組向けの古民家ホテル&レストラン「鎌倉古今」

東京の都心部から電車で約一時間、羽田空港からもアクセスの良い、古都鎌倉。初夏となるこの時期も、多くの観光客が訪れて、外国人にも人気の場所だ。鎌倉駅から車で10分。住宅街を通り抜け、山肌近くに、今回ご紹介する古民家ホテル「鎌倉古今(かまくら ここん、以下古今)」をぜひ紹介させてください。

このホテルの運営は「日本の伝統文化の象徴である古民家を活用することで、次世代のストックとして未来へ向けて継承し、日本の真の豊かさを実現したい。」をビジョンに、元高級ホテルの支配人として様々な経験とノウハウをもつ代表の松宮氏が、「くらつぐ」という会社を興し、主に「古民家再生による地域活性化支援」「古民家宿泊施設の企画開発および運営」を軸にした事業展開から始まりました。

この古今は、2019年1月にオープンしたばかりのホテル。明治天皇により創建された「鎌倉宮」から徒歩すぐ、多くの史跡と豊かな緑に囲まれ品格漂う二階堂エリアにあり、その閑静な邸宅地で江戸時代から住み継がれてきた古民家をフルリノベーションしたもの。また「古民家ホテル」と書きましたが、鎌倉で古民家を活用した、いわゆる「民泊」においては、民泊新法に基づき、180日限定営業。特にこの鎌倉市は、多くの訪日外国人が訪れる一大観光地だが、古都保存法で歴史的風土保存区域に指定されたエリアが多く、宿泊施設が慢性的に不足している状態。しかし、民泊新法の施行に伴い、古民家を宿泊施設として利用が可能になったこともあり、この 古今も、鎌倉における古民家ホテルの先駆けとして、新たな観光体験を提案する格好になったのです。

またオープンとあわせて同施設内で「Restaurant COCON」としてレストラン事業も展開。世界でも高い評価を受け、国内オーガニックレストランの先駆けとしても知られる「アル・ケッチァーノ」奥田政行シェフが料理をプロデュース。イタリアンベースのオーガニック料理が提供され、鎌倉ならではの“鎌倉野菜”も使用しています。実は先日、この初夏の季節に合うようなディナーとワイン、日本酒などが含まれるペアリングコースをいただいてまいりました。

古木のカウンターの向こうで料理を振る舞う池田慎一氏は、この春からRestaurant COCONの料理長として、奥田シェフのお店「サーラ ビアンキ アル・ケッチァーノ(三重県菰野町/アクアイグニス)」から転籍してきた方。ディナーは、12,000円のコースでデザート含めて8皿の展開。

まず、一皿目は「苔(こけ)」。太刀魚をフリットにしたものがベースなのですが、粉状に「青のり」がふりかけてあり、見た目以上に塩味がピリッと効いて、最初の一皿として、「口元をすっと締める」感覚になりました。

次に、「石鯛のカルパッチョ ハイビスカス」。青々とした新鮮な有機野菜とともに、イシダイがカルパッチョされ、爽やかな味わいとともに、そこに添えられたハイビスカスを使った冷製ソースが、これまた酸味ある味わいで、イシダイの膨よかさと、ソースの味わいがこれまたぴったり。

3皿目は、「これは?」とびっくり、たけのこの皮が炙り焼きされており、それを解きほぐすと、手羽先が現れる。「筍と手羽先」だ。この手羽先、頬張ると、手羽先の肉とともに、この時期としては最後になる「筍」が細かくブロック体で入っており、筍の香ばしさと、手羽先の肉、さらにその手羽先に塗られたごま油の風味が合わさって、濃厚だけれども「軽々しさ」を演出する味わいをつくっている。

ここまで、シャンパンと白ワイン(シャルドネ)、そして日本酒(久保田ほか)がそれぞれの皿にあわせてペアリング。最初は味わい軽めでスタートし、食事とともに、分量ボリュームも丁寧に調整されて、非常に飲みやすい。

「次に出すお魚は、火入れ45度の『サワラ(鰆)』です。まだ皮目が生の状態なので、火炙りしてお出ししますね」と池田シェフ。目の前でバナーを使い、瞬時に皮目を炙りながら、お皿にまとめられたのが「鰆45℃ 新玉葱」。

季節ものの新玉ねぎをソース化して、玉ねぎ独特の絡みと甘みを残し、先ほど火炙りしたサワラがハーブ野菜とともに和えてある。ちょうど新玉ねぎの苦さと、サワラの甘さが相まって、非常によい感覚。僕にとっては、今回のコースでは一番だと思う味わいです。ぜひタイミング良ければ食べて欲しい。

ここで池田シェフ、「ちょうど次回からコースに入れ込んで見ようと思っているものがありますので、少し試食しませんか?」とおもむろに「ウチワエビ」を冷蔵庫から出してきた。「実は、『酔っ払いすぎたウチワエビ』なんですけど」と、ウチワエビを真ん中から一刀両断。まだ生のウチワエビの肉質が、すこし茶色がかっている。「これは、紹興酒、ブランデー、マルサラ酒のミックスで漬け込んだウチワエビです。日本酒にぴったりだと思います!」と、豪快な一品。

食べてみると、とても「繊細」な味わいで、この料理コースのなかでは「異彩」という認識だった。しかしこれは食べやすい。お酒が苦手な人がパクパク食べてしまうと酔ってしまいそうな絶品料理だ。

コースも終盤、6皿目「しらすと唐墨のパスタ」で口直し後、愛知県「知多牛のビステッカ」を頬張る。池田シェフは宮崎県出身。前職が三重県ということもあり、非常に、肉、魚に詳しく、これからの夏、秋のメニューについても、見事な展開を検討、宿泊客にも好評なものを展開すると期待している。この「知多牛のビステッカ」についても、火入れも程よく、デザート含みの8皿という内容だが、ペアリングあわせて、腹八分目で非常に満足度が高い内容だと感じた。

良い意味で、食材が喧嘩せず、ハーモニーがあり、それでいて、和食、イタリアンといった料理カテゴリーでの枠もなく、どちらかというと、「鎌倉で食べられる料理」「古民家ホテルで食べる料理」といった部分に気持ちよく入ってきていて、料理自体が「バタバタ焦らず、自信を持って出せるもの」を提供している印象があり、食べていて「安心感」が漂っていた。これは池田シェフの力量でもあると思うが、それ以上に、この古今という場所が醸し出すポテンシャルなのかもしれないと感じている。自分は東京に暮らしているので、鎌倉にわざわざ一泊二日宿泊して食事もとってゆっくりする、という気持ちは、今までもなかったのだが、その根底を覆させられる印象を持ったホテルだった。また代表である松宮氏が提供する「ホテル」のサービスにおいては、やはり細部が行き届いている。今回は宿泊はできなかったが、まずはRestaurant COCONに足を運び、まずはこのレストランで舌鼓を打ってほしい。ちなみに僕は貸切ができるように、仕事を頑張ろうとお店を後にしましたが(笑)。

●鎌倉古今(かまくら ここん)

[住所]
神奈川県鎌倉市二階堂836(鎌倉駅より車10分/「大塔宮」バス停より徒歩3分)

[宿泊料金](税別)20195月時点の情報です。
1
名様:48,000円(1泊朝食付プラン)
1
名様:60,000円(1泊夕朝食付プラン)

[ウェブサイト]
https://www.kamakura-cocon.jp
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鎌倉古今

 

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp