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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第64回

お米で麺づくりを、本気で考えてみる。

先日、茨城県潮来(いたこ)市の道の駅、「道の駅いたこ」に足を運んだ。実は、この道の駅で開発された「お米の麺」を見にきたのである。

さて、「お米の麺」って皆さん、ご存知でしょうか?米を原料にした麺(ライスヌードル)は、主に中国や東南アジアといった、米作が盛んな地域でよく食べられています。例えば、「ビーフン」は、中国南部や台湾で作られたものがよく知られています。細い「米粉」をはじめ、幅広のものや極細のものなど様々な形があり、肉や野菜と炒め合わせた焼きビーフンや、スープに入れた汁ビーフンなど、食べ方も色々とあります。最近日本でも浸透してきた「フォー」は、ベトナムの麺。平たい半透明の麺で、あまりコシが無いのが特徴です。鶏肉や牛肉などの具と野菜を入れた、スープ仕立てで食べるのが主流です。タイでは、極細の「センミー」、細めの「センレック」、平たい「センヤイ」という、3種の米の麺があります。こちらも、スープをかけたり、和える、炒めるなどして食べられています。この他にも世界には、多種多様な米の麺とその料理があります。その米麺を食べるとすると、日本のこうしたアジアン料理のお店で提供される麺はおもに輸入麺なのです。実はアジア本国では「生麺」が主流ですが、その製法や保存方法の難しさから国内で流通している麺のほとんどが「輸入乾麺」なのです。

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しかし、この「道の駅いたこ」では、自分たちで「生米麺」を製造し、調理販売しているのです! そこで気になってわざわざ足を運んだ次第。

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実は、この生米麺の製造と販売について、抜きん出ている地域と企業がいます。それは、首都圏を中心にタイ料理20店を含む38店のレストランを展開する㈱ミールワークスさんです。ミールワークスさんも、2014年までタイからの米麺を直輸入して使用してきましたが、輸入制約上、本場タイの生麺に比較して味・食感が劣る乾麺しか入手できず、国内で高品質の生米麺の調達を模索していました。そんな中、彼らは、「レストランでの使用に納得のいく品質の麺が見つからないのであれば、オリジナルで作るしかない!」と、新潟・上越市の農家と製造メーカーと組んだチームで試作を繰り返した結果、本場を超える味の生米麺「クイッティオ」の開発に成功しました。試験導入から1年5ヶ月で当初の月産量0.6トンから実に8倍の4.8トン強に急成長。現在では、米の作付け量から見直す(今期220トン!)など着実に増産体制を構築しています。

ただ、この数字と実績を見ていくと、レストラン及び小売マーケットでの認知が進むにつれ、確実な需要の増大が確信できる商材に見えますが、実は良い生米麺を作るためには、いくつかの条件をクリアしなければならないのです。

まず、ご飯として炊いて美味しいお米は、麺にしても美味しいはず!なのだが、実はごはんのお米で米麺を作ってみても、なぜか「もちもちとした食感」と「つるっとしたのどごし」が再現されない。その原因は、生米麺を作るための米に含まれる「アミロース」と言われる成分のことであり、いわゆる「高アミロース」でないとうまくいかない。そこでタイ米など長粒種米同等のアミロース分が高品種改良米、新潟の「越のかおり」を使用することに。

次に、製造分野。高アミロース米「越しのかおり」を使うのだが、すりつぶした粉を練って押し出す製麺法とは異なり、米汁を炉で蒸してシート状にしてカットした麺は水分保持量が均質で、調理後も「もちもち」「つるしこ」が続くことが判明。その食感を叶えるためにタイより製造機械を輸入し、独自の改良を加え、日本に唯一のタイ式生米麺製麺機を作り上げたのです。日本ではつなぎを多く使用した乾麺が主流ですが、タイ式では極力つなぎを少なくしているので、アレルゲンもなく、消化吸収がよく、小麦麺より低カロリーな米麺を実現したのです。

流石に、いますぐ生米麺は作れる、というのは難しいですし、新潟県上越市の農家さんやミールワークスさんの試みは流石としか言いようがありません。

もちろん、こうした大規模展開だけではなく、上越市やミールワークスさんの動きを見ながら「道の駅いたこ」でもチャレンジ。もともと「米どころ」として知られる潮来市のPRやコメの消費拡大を目的に、同市や商工会などが2016年から取り組む「水郷潮来プライド米プロジェクト事業」で開発したもの。コメの品種はやはり、高アミロース米の「夢十色(ゆめといろ)」。製粉機と製麺機はベトナムまで行き、直接買い付けた。スープは、都内のベトナム料理店シェフや市内のベトナム人らからアドバイスを受け、日本人好みに調整したものだ。さっそく道の駅で提供されていたので食べることにした。

スープは牛骨と野菜でだしを取り、さっぱりとしているのですが、飽きがなく、食べやすい。道の駅のフードメニューとしては、新しいチャレンジだと思う。

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こうして「生米麺」の提供状況を見ていくと、上記で書いた2つの方向性には大きな違いがある。まず、ミールワークスさんは「売り場が確実にある」、つまり「マーケットイン」の発想からスタートした商品開発だ。使う側=飲食店が使用していた乾燥輸入麺を生米麺に徐々に切り替え、40店舗近い飲食店に展開している。さらに生米麺を軸に飲食店の業態開発を行っており、手堅いビジネスモデルだなという印象。一方で、潮来市は「道の駅」として、地元の消費や話題性を狙っているところを感じるが、まだまだ展開に余地があり、詰まり切っていない印象だった。

商品を作れる、展開できる、が、売り先は?という問題にぶち当たる。それが、「プロダクトアウト(商品はあるが売り場がない)」される商品の行く末だ。一方の「マーケットイン(売り場に必要な商品を作る)」の商品は、売り場が確保されているので、中長期的なビジネスモデルが作りやすいと言える。もちろん、それを買い切る飲食店が中心にあるから、ことが足りるのだ。もっというと、いわゆる補助金ベースで、作り上げたものではなく、飲食店が自らプロジェクトを切り出し、自分たちで生かしながら、商売につなげ、自主採算で事業が回る仕組みを作りつつ、生米麺を生かしている事実がある。これは大きな差だと、僕は思う。

商品の資質は、おいしさ以上に、場づくり、売り場づくりが重要だ。生米麺、引き続き僕もチェックしていく。この商品は面白いが、まだまだ知らないことが多い。日々是精進。

 

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp