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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第58回

高知で生まれた大地の恵みから、得られた未来とは。

師走も半ばを過ぎた。2018年もあと少し。だが僕の国内出張は、まだまだ続いている。このままだと、12月最終週の北海道が最後になりそうだ。

(第7回「天空の郷もとやま写真コンテスト」入賞作品より転載)

さて今回の出張は、四国は高知県本山町だ。わたしが、このFoodnia Japanブログでも紹介した、島根県浜田市弥栄町で育てられているお米のブランディングにおいて、「お米の最上級を知りたい」ということもあり、今回この高知県本山町で作られている「天空の郷(てんくうのさと)」というブランド米を作っている場所と活動を知っておきたかったのだ。

四国山系の中央に位置する高峻の地「本山町」。我々は、香川県から乗り込み、車で1時間半。トンネルをいくつか抜け、吉野川の上流を登り、ようやくたどり着いた。そこは、山地の盆地。平野はなく、長い年月をかけ、切り開かれた水田が現在まで大切に守られ、農業文化と共に伝承されてきた土地だった。当時の形状そのままで、棚田の性質上、作業効率は決して良くなく、必ずしも最適の土地とは言えない。

しかし、その土地に備わっている吉野川を源に水路確保はもちろん、250mから850mほどにまたがった標高差ある山々がもたらす寒暖差が、「霜降り」と呼ばれる特殊なお米の性質を作り上げ、さらに目をかけ、手をかけ、美味しいお米を育てる背景につながっていると聞いていた。

僕らがマークした「お米の最上級」とは、ここで作られているお米、土佐「天空の郷 にこまる」だ。日本一コンテストIN しずおか 2016 の特別最高金賞を受賞し、史上初2度目の日本一を受賞しているのだ(最近では、2度目の受賞を他の地域も受賞されたので、史上初ではなくなったが、、)。農薬や化学肥料を控えた高知県地域比5割減の特別栽培米を作り、生産者は全員エコファーマー(高知県認定)。お米の粒の大きさも「2mm」が通常で、それ以下は、ブランド米には指定されず、別銘柄に変更して販売されているとのこと。こうして作られた「天空の郷」は、そのブランドを担うことで、もっちり甘く、しっかりとした食感が口の中に広がり、また口当たりはやや固めだが、噛むほどに旨みが広がり、冷めても味が落ちない。炊き立て、おにぎりにも、素直に認めて「うまい」と言える商品に仕上がっている。それでいて、生産者への、お米の支払額も、JA金額とは雲泥の差で、更に驚いた。ビジネスとしても仕上がっている。ここまで20数年間の賜物として、生産物は裏切らないと感じた。

また、粒の大きさに限らず、毎年食味分析機により高得点のもののみ出荷し、高知ならではの「室戸海洋深層水」から「苦汁(にがり)」を作り、お米の栄養として使っている、手の込んだものだった。特にお米は、カリウムに対してマグネシウムの含有率が高いほど美味しいと言われている。「天空の郷」のお米は、栽培過程で室戸海洋深層水を使用することにより、さらに、この含有率を高めることに成功、日本一うまいお米に仕上げたのだ。

けれど、そんな彼らがぶつかっている課題は、実は「担い手不足」だった。日本一になろうが、米が売れようが「作り手がいない(もしくはいなくなる)」。僕なりに、わかっているのだけどショックだった。当初は「日本一になる為にはどうしたら良いか?」「その最高品質のお米を使った商品開発は何か?」「最先端の技術とアプローチでアウトプットのスピードを上げるにはどうすれば良いか」ということを僕は気にしていたし、そこに、僕らが応援している秘境奥島根弥栄お米の方向性を見出すきっかけを見つけたかったが、「まずは足元を見よ」だった。

売り手の活性化や、魅力的な消費者向けアプリやベンチャーがどんなに流行ろうが、「日本一のお米が手に入らなくなっている」ことが、ヒタヒタと迫っている。とても難しい課題で、単に「日本一のお米が必要か?」「お客さんが欲しいお米を作ればビジネスは回るのではないか」というものではなく、その日本一にたどり着く「工程の手間暇」が無くなることに、僕は、こわさを感じた。となれば、お米もさることながら、僕らが守ろうとしている「和食」「日本食」「食の国日本」の立ち位置はどこになるかということだ。そもそもそのスタイルが、時代と時間で「揺さ振られている」。

このお米に限らず、日本の食のトーンが変わりつつあることはご存知だろうか。美味しいお店を探し、食べることではなく、「そのお店自体をどう予約するかという仕組み」「どんな食材を集める方法があるか」「その生産者とどう繋がるか」というところに投資、人材が集まろうとしているが、その仕組み自体は実はたったここ5年の話だ。つまり「誰がイニシアチブを取れるか」というところになり、そこに価値が生まれているのだ。そのためのアプリやプラットフォームが、たくさん見受けられる。しかし、それを使いこなす消費者に必要なのは、その事業者を応援すること以上に「まず美味しいか」を説いているのだ。その問いに答えられなくなると、そのアプリやプラットフォームは、そのつど変化し、僕らの前に現れる。けれど、本気でその課題に応えていこうという人は、その時代の流行とは平行に、変わらず対応していかなければならない。お米を日本一にする方法は目の前にある。けれど、それをどうするか、どう続いて行くかがポイントなのではないかと感じる。

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中国で100年続く老舗は現在なんと「5件」(2017年)という事を聞いた。つまりそれまでに時代も変わり、流行も変われば、会社や企業も変わり、変化している。一方で、日本は100年以上続く企業はザラだ。今その老舗企業の世代交代の波に晒されている。サービスや企画が変わる一方で、生産者は変わらず、数十年同じ形である以上、どんなにやり方が変われど、実情は変わらない。どうやら、課題というより「問題の設定条件」に課題があるのではないかと感じる事がある。

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さて、Foodnia Japan。来年2019年は、少し趣を変えて、情報発信していきたいと思う。少し他者の方向性を入れながら、時にはインタビューも入れつつ、今、食に与えられた課題に対して、「和食スタイル」を2020に向けて作り上げていきたいと感じている。楽しみにして、いていただきたい。それでは皆さま、良いお年をお迎えください。

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp