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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第56回

いい店は、「お客様を知っている」こと。(香港出張番外編)

さて、新潟清酒プロジェクトで香港に来ていたが、僕が香港に来た時に必ず足を運ぶ、日本食レストラン「三笠屋」がある。尖沙咀(チムサーチョイ)に場所があり、駅から徒歩5分。ビルの2階にあるそのお店は、暖簾をくぐると、店内を見張らせる場所に、きっちりと和食のカウンターが広がる。そこに魚を切りさばき、寿司をにぎる日本人、本山太一朗氏がいる。

(三笠屋)https://www.mikasaya-hk.com/ja/

僕がこのお店を知ったのは、香港にある飲食店を日本人観光客に知ってもらうメディアサイトを作っている大手企業の支店長の紹介だった。「わざわざ香港まで来て中華に有り付けないなんて!日本食かー」と、当時の僕は浅はかだったかもしれないと、いつも残念に思うわけなのですが、それ以降、香港に来るときは、いたって「日本の和食」を好むようになり、特に、ここの寿司を食べずには香港に来た気じゃなくなるのである。

最近、海外のお寿司屋が隆盛だ。特に、東京で出店していた名店が、わざわざ東京の寿司屋を閉めて、ハワイやパリ、ニューヨーク、ロンドン、そして最近では香港のようにアジアの都市を目指している人たちが増えている。商売をしていくとすれば、至極真っ当な選択だと僕は思っているのだが、さすがに美味しく作り上げる職人が、ごぞっと海外に出てしまうのは、寂しい思いもしていた。

そんな中、三笠屋を訪ね、寿司を食べてみた。物凄くうまい、うまいのである。なんら東京都心で食べる内容と遜色がなく、それでいて、海外にありきたりなもの(あえて表現するのはやめておくが)としての寿司ではない。れっきとした内容そのもので、僕以外のお客様にも非常に好評なのだ。

思わず「これは香港で手に入る食材でしょうか?」と質問したことがある。すると本山さんは「ほぼ日本からの仕入れです。僕は九州出身なので、主に九州ですが、やはりネタの良いものや、時期によっては、豊洲(新市場)から毎朝入ってきます。」と。「え?」と本気で思った。豊洲市場が、香港の目の前まで来ているのだ。僕からすると豊洲市場から徒歩10分くらいの所に住んでいるのだが(笑)、わざわざ豊洲から仕入れた新鮮な魚を、これまたわざわざ香港の寿司屋で頬張っている自分が、妙に笑えてきたのである。(普段は忙しくて豊洲市場に視察にも行けないというのは、本当に馬鹿げているなと僕はさらに思ったのだが・・。)一つ一つ丁寧に握られた寿司は、とても貴重で、僕自身、久しぶりにゆっくりと食事ができた時間だった。また、そういうお店には、良いお客さんも非常にくっついていて、場の雰囲気も明るいし、良い食事になることがほとんどだ。海外でも、僕の大好きのお店でもある。いつもありがとう、本山さん。

さて、三笠屋もさることながら、他の香港レストランもその潮流にいる。

もちろん通常に流通も発展してきており「ほぼ毎朝、日本から入荷」という流れを組めるぐらい、食材が手に入りやすくなっていることも事実だ。より市場「飲食店向けの食材流通システム」の必要性が徐々に上がってきていることを確認する。もっというと、日本ではなく、爆発的に人口が増加している国にとって、いま宅配便が発展していないが、AmazonなどがBtoBに特化し、飲食店をベースに商品流通を、日本の市場の仲卸と組みながら、食材流通させたら、これも爆発的に伸び方が変わるかもしれないと感じたのである。(すでに取り組み始めている企業もいることも確かだ)。

今年、自分の会社でも意識して「食の接点を、よりよくする」ということを謳い、プロジェクトに取り組むようにしてきた。香港の寿司屋で、自分の腕を存分に使い、お客様に最上級のおもてなしをする体制を作るために、そのサポート体制を作らなければならない。それは、単にコンサルティングではなく、もっと実務的で、もっとハードでスピードよく、感度が高くなくてはならない。日本とは全く違うステージ、そして「スピート感」を、香港にたった2年だが通っただけで感じることが多い。

お金の流れが「キャッシュレス」の時代だ。「買うことが容易(たやす)い時代」になったからこそ、「流通が容易い時代」へシフトチェンジしていく。もっというと、「モノが売れなくなっている時代」から「コトを作る時代」が加速している様相だ。良いお客さんがついているのもそれが証拠だと思う。単に良い調理人だけではなく、その調理人がサービス以外も含めた「コミュニケーション力が高いか否か」で別次元にいけると感じる。それが現在、ワールドレストラン50にあるような、シェフ主導のプロモーションが弾けている理由かもしれないと僕は思っている。

こんなお店が世界各地に増えていくことが、次の2020年代の新たなステップかもしれない。

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp