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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第55回

僕らが気づかない、第一印象。

「新潟清酒(にいがたせいしゅ)」と呼ばれる地域団体商標にて、新潟の日本酒を、海外に販路展開していくプロジェクトを、日本貿易振興機構(以下JETRO)のお仕事として、昨年度より取り組ませていただいております。

2018年11月、対象国となる「中国・香港」をメインに、香港人に対して、新潟の日本酒の売り込みをかけている。今年も昨年度に続き、「生牡蠣」とペアリングさせ、「牡蠣と相性がよい新潟清酒」というプロモーションを仕掛けている。(昨年の取り組みは第38回をご覧ください)

今年のプロモーションの内容は、昨年度とは若干異なり、大きなホテルホールを扱わず、香港で実施されている「Wine & Spirits」という、主にワインやリキュールをバイヤーやディストリビューターを対象とした紹介、販売する催事に、「新潟清酒」が独自にブースをこしらえて出店。

また、昨年「ミニ酒の陣」という毎年3月に新潟県で行われている「酒の陣」の香港バージョンを開催。300人ほどのお客様がお越しになる大規模なイベントのなかのタイムスケジュールを一部、セミナー化して、白ワインの「シャブリ」、新潟の日本酒2種ほどを、生牡蠣とともに試食、そして試しながら試飲してもらうイベントが行われていたが、今年はそのセミナー部分を別の場所に切り出し、対象を「ソムリエ」といった、よりお客様に近い人たちに新潟清酒と生牡蠣の相性をわかってもらおうと、切り口を変えながら実践することにした。

特に新潟の日本酒は、日本の他の地域と比べて「辛口、いわゆるドライ」であり、かつ水の性質より口当たりが「柔らかい」のが特徴だ。最近、日本の日本酒の特徴として「香り高く」「口当たりがはっきり」「後味すっきり」ものが増えているが、「香りがほどよく」「後味がはっきり」「ずしっとする飲み口」という、明確な違いがあるとともに、濃厚でクリーミーな生牡蠣との相性も良く、またワインと比べて鉄分が1/100ということから、後味が「生臭くなくさっぱり」とした印象が、お客様にも好評のペアリングでもある。

それと今回の試みのもう一つのポイントとして、香港にある日本食レストラン「ZUMA」とタッグを組み、おおよそ1ヶ月ほど、実際に店舗で特別メニューを設け、新潟の日本酒6種と、生牡蠣をペアリングさせるプロモーションを実践した。

実は、今年8月にZUMAのドリンクディレクター、スーシェフ(いわゆる厨房のNo.2)が新潟に来訪し、実際に蔵元を訪ねて試飲、さらに食材を見て、新潟の情報をあらかじめインプット、さらに10月には、新潟の蔵元のスタッフが、実際にZUMAのホールスタッフやソムリエに対して、新潟清酒の説明と試飲を現場で実践、レクチャーしたこともあり、非常に情報量もおおく、お客様に進めやすい体制を作ることができたのである。限定した期間内で、新潟の日本酒をお客様に、生牡蠣とともにお奨めできていることが、非常に我々にとってもわかりやすい取り組みだと思っている。

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ただ、僕らが気づかない「日本酒」について、ヒアリングやアンケートの中で聞くことができた。大事な部分は割愛させていただきますが(笑)、意外だったのは「NIIGATA SAKE」を理解できない(?)ということだった。僕らは「はて?ニイガタノサケに間違い無いのだが・・」と思っていたが、中国人にとって「NIIGATA」の発音、読み方がわからず「どこのSAKE(かろうじて、日本酒は「SAKE」というイメージが定着していたのでよかったが)か?」となり、「日本酒のメーカー」「日本酒のブランド名」だと思った人も多くいたとのことだった。なるほど、新潟の〆張鶴も久保田も、どこかのメーカーやブランドが事業者とあって、1ブランドに見えていたのは意外というか、日本酒を初めて体験する人たちにとっては、確かにわからないかもしれない。

例えば僕らも逆に、フランス産のワインで「シャルドネ」や、それこそ「シャブリ」という形でカナをふって読ませているが、それはあくまでも「日本人がわかるように日本語を添えた」のであって、「新潟清酒」を「中国語」や「韓国語」として読ませやすいように情報を編集することまでは(特に地域団体商標のようなブランド名までは)気が回らない。ましてや、その「地域団体商標を登録すること」からスタートして成り立つプロジェクトやプロモーションなので、それはそれで今後の対策なんだろうなと、改めて実感したのである。まさに「第一印象」で、どんな風に見えているのか、海外においてはとても大切なことだ。

しかし、こうした新潟清酒の取り組みは、海外において非常に好感を持てると僕は思っている。特に地域における特産品や嗜好品を海外展開する際には、それこそ単発イベントや1−2年の短期間でのプロモーションは、正直難しい。特に催事などは、接点が極めて細いので、情報の伝達が狭い。また街角イベントも大々的に実施しているところもあるが、これもかなりの「レア」なプロモーションだと思う。そんな中、新潟清酒は、こうした取り組みを10年前から現地に入り込み、6年連続で「ミニ酒の陣」や各蔵元が出張って30社近く、地元の消費者やディストリビューターを相手に「戦っている様」は、僕自身も勉強になる。

来年も引き続き「生牡蠣」をポイントに持ってくるが、3年目のステップとして、より食や提供場所なども議論に入れつつ、新潟清酒の展開幅を作っていきたいと思う。本当に、新潟の日本酒が好きになってくる自分が、これもまた楽しい。

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp