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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第51回

知って食べる、食。

私たちの暮らしの中で、「食」との接点はどのくらいあるだろうか。生きていくために、深く息を吸い、水を飲み、暖かい太陽の光を浴びる。その日々の中で、野菜や果物、肉といった食材を手に入れ、それぞれの土地の個人のスキルで調理し、口の中で頬張ることになる。朝、昼、晩。絶食しなければ、本当に毎日、毎時間、僕らは「食を通じた時間」を「接点」として持ち続けている。「衣食住」とはよく言ったもので、着るもの、すまう場所もまた、似たような境遇を作り出す。その環境が、僕らに生活力(生きていく活力)を与えて、誰のものでもない個人の時間を作り出しているのだと思う。そのため、僕らは生きていくために「知ること」から始める。火の興し方、水の汲み方、ものの保存の仕方。そして「文化」もまた、一つの「知ってほしいこと」の保存、アーカイブと感じている。

※写真は先日青森で開催されたセミナーの様子です。

いま、食に関するブランディングを仕事として向き合う時に大切にしている部分は「知る」ということだ。生産者はもとより、それを流通させる人、その届いた商品を販売する人、さらにその商品を使って調理する人、すべての人が“知ってほしい”を通じてビジネスをしているのだと思う。

「知ってほしいこと」のスタートは、「どのように知ってもらうのか?」だ。わかりやすいのは、「デザインを見直すこと」。キャッチコピー、色使い、パッケージ、ロゴデザイン、シンプルに伝わるリーフレットやウェブ。様々な「指標」を用いて、その商品にたどり着く人たちを導く役割を「Design」は担っていると思う。デザインは時にその商品を「王子」や「姫」のように、全く別物に見せるマジックを見せるときもあれば、それまで出会わなかったポイントで、元々持っている良さを輝かせるときもある。この所作に僕もいくつか出会ったことがある。

そして知ってもらうからには、多くの人に出会う必要がある。その土地に生まれた食材が、だれかに育てられ、出荷され、人の手を辿って、誰かの口に運ばれる流れだけではなく、もっと広く知ってもらうために僕らは「PR」「広告」といった手法で、ありとあらゆる「ストーリー」を生み出し、それを「価値」と呼び、単に口の中にはいるだけではない、道筋を作り出す仕事をしている。「知る」ということに、僕らの生活はうまれ、社会の中で「食」という接点がビジネスを生み、新たな価値観と生活力を生み出す原因になっているのだから、人間にとって「食の接点」というのは、限りなく深く、そして絶えず変化していく商材だなと、5年、10年と絶えず付き合っていくと、とりとめなく悩ましい。それだけ食に関する仕事では「知る」ということがメインになってきているだと思う。だから「ブランディング」という言葉が、食のプロジェクトに生まれたと認識したら「これは知ることを問われている」と考えると、物事がシンプルになるのだと実感している。

※先日弊社が企画サポートした、JAベジカレッジ・ベジスムージー

だから、食に関する地方や商材のプロジェクトにおいて「ブランディング」は非常に大切だ。その知るを構築していくためには、僕は「認知力」「連想力」「所持力」「愛着力」の4つの要素を外せないと考えている。知って食べてもらうためには、その努力はかけがえのないものだと認識している。

「認知力」。その商材のフィールドにおいて、「知らない人はいない」という力強さだ。サッカー界でメッシや中田英寿を知らない人はいない。「連想力」。その商材といえば、「この商材しか浮かばない」という発信力だ。困っていたら、味の素だ、というくらい、どこに行っても存在する商品だ。「所持力」。その商材を「誰ものが持っている」という許容であり、独占力だ。これがないと生活そのものが成り立たない。「愛着力」そうした力を持ったものでも、「自分はこれが大好きだ」という愛、エモーションだ。

この4つの力には、すべて「知る」ということから全てが始まっている。

今日は、美味しいものを食べに行きたいと思い、通いたくなるお店の場所、連絡先。あの美味しいミニトマトが食べたいと思い、どんな生産者で、かつ販売しているお店の存在。

僕らはいま、その大半をネット、特にSNSから情報を得ている。Amazon、楽天もさることながら、知ってもらうことが、ビジネスに繋がっていると申し上げたが、面白いことに、ネット企業はリアルな場所として小売店をやりたくなるし、根っからのリアルな小売店はSNS発信や通販事業に力を入れたくなるという「隣の芝生は青い」現象が見られる。それは大企業だけではなく、小さな生産者、物流会社も動向は変わらない。

けれど、「絶えず与えられる情報」ではなく、ふと出会う、偶然のような「情報」に出会いたくなるのではないか。僕は、そうした小さな、ちょっとした事故のような情報が好きである。その小さな情報が、時に目玉のようなTOPニュースを与えてくれる。また小さな情報の集積で、僕らの活動の中にみっちり入ってくるものからも似たような感覚を与えられる時がある。

これは「旅」に似たような感覚だ。新しい場所すべてが、人生において、ささやかな気づきを与えてくれるものは、大切にすべきだ。それが「食の接点作り」の醍醐味でもある。僕らにとって、どこで食に出会うか。あなたにとって、大好きな場所に食はありますか?もしかしたら、新しい出会いは、食から生まれるのではと、僕は思います。

 

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp