和食STYLE

豆腐百珍のすべて 46 佳品 稭豆腐

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

『稭(しべ)豆腐』の「稭」とは、「わらしべ」のことです。籾(もみ)を取った後の稲の芯の部分で、日本人は昔からこのわらしべを、様々に活用して来ました。

[衣料品]
草鞋(ぞうり)、雪沓(ゆきぐつ)、蓑(みの)、蓑傘(みのがさ)、蓑帽子、腰蓑、背中蓑、脚絆(きゃはん)
[生活用品]
飯櫃、籠、釜敷き、各種の縄、筵(むしろ)、俵、菰(こも)、箒(ほうき)、籠(かご)
[建築資材]
畳、土塀の下地、藁葺き屋根
[その他]
わら半紙、藁人形、藁苞などの包装材、飼料、堆肥など

こうしてみると稲という植物は、実である米はもちろんのこと、日本人にとってなくてはならないものだったことがわかります。

さてこの『稭豆腐』は、前回ご紹介した45回『線麪豆腐』を、焼いただけの料理です。
焼くと卵白の効果で中が空洞になるので、まさしくわらしべ状態になります。わらしべを英語で「straw」と言いますが、ストローはここから来ているのですね。

■縮緬豆腐レシピ
【材料】
稭豆腐レシピ
木綿豆腐…1丁
卵白…1個分

お好みのつゆ…適量

【作り⽅】
1. 豆腐の水気をしっかりと切り、擂り鉢ですってさらに裏ごしし、卵白を入れてよく混ぜる。
2.美濃紙(クッキングシートでも可)をまな板の上に敷き、1を薄く均一に包丁で延ばす。
3.2の豆腐に、流れてしまわないように注意しながら熱湯をかけて固め、冷水に浸けて冷ます。
4.3の紙をそっと剥がし、できるだけ細く切り、フライパンの上にクッキングシートを引いて弱火でゆっくりと焼く。

※記事と写真の無断転載を禁じます

⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』『歴史探偵』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。
著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)、『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)など多数。小説『蔦重の教え』はベストセラーに。
最新刊は『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』(東京書籍)。
http://kurumaukiyo.com

『江戸っ子の食養生』
『免疫力を高める最強の浅漬け』
『蔦重の教え』
『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』