和食STYLE

豆腐百珍のすべて 40 佳品 一種の黄檗とうふ

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

『一種の黄檗とうふ』の一種の、とはどういうことかと申しますと、尋常品10番『雷とうふ』の解説に、「豆腐の水気をよく絞って、雷とうふのように調理したものを『黄檗とうふ』とも、『ケンポロ豆腐』ともいう。40番に登場する『黄檗とうふ』と作り方が少し違い、一説である」と書かれているように、『黄檗とうふ』の別ヴァージョンということになります。

丁寧なことに、こちらの40番の解説にも「一説に、水をよく絞って10番の『雷とうふ』のように作るのを、また『黄檗とうふ』という」と書かれています。

作り方としては、水気をよく切った豆腐を胡麻油で炒めて醤油で味付けする10番と、水気を切った豆腐を油通しして、酒と醤油を煮立たせた出汁で煮る40番は、手順がかなり違うように思いますが、どちらが“真の” と言えないあたり、何か譲れない事情があるように思えてなりません。

料理名に「黄檗」の名を冠するということは、1661年に明の隠元禅師によって開かれた、京都府宇治市にある黄檗宗大本山の「萬福寺」の流れを汲む精進料理の一つと考えられるからです。開山から120年以上経って発売された『豆腐百珍』。この間に『黄檗とうふ』も違ったレシピで変化して行ったのでしょう。

■黄檗とうふレシピ
【材料】
木綿豆腐…1/2丁
胡麻油…適量
水…100ml
酒…大さじ2
薄口醬油…大さじ2

【作り⽅】
1.小鍋に水、酒、醤油を入れ、煮立たせておく。
2. 水切りした豆腐を平たい骰(さいころ)型に切り、網杓子に乗せて熱した油の中で2、3度振って引き上げ、熱いうちに1に入れて煮る。

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⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)、『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)など多数。
小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。最新刊は『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』(東京書籍)。
http://kurumaukiyo.com

『江戸っ子の食養生』
『免疫力を高める最強の浅漬け』
『蔦重の教え』
『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』