和食STYLE

豆腐百珍のすべて 32 通品 玳瑁環

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

今回ご紹介する『玳瑁環』、原書の読み仮名は『ちくは(わ)とうふ』となっています。
「玳瑁(たいまい)」とは海ガメのこと。日本では古くから、海ガメの甲羅である鼈甲(べっこう)を「タイマイ」と呼んでいました。つまり『玳瑁環』は「鼈甲のような柄のある筒状のもの」ということになります。

そして、『ちくは(わ)とうふ』は写真をご覧いただければわかる通り、まさしく「竹輪」。「竹輪」は、細い竹筒の周りに、すりつぶして練った魚肉を巻きつけて焼いたところからと名付けられた料理です。

竹輪の焦げ跡が鼈甲の柄に似ていると言われればなるほどですが、漢字と読みで異なる2つの見た目を表しているということは、『玳瑁環』はおそらく中国発祥の料理です。それが日本に渡って来た時に、鼈甲よりも、古来からある竹輪にそっくり、ということで呼び名が変わったものと考えられます。

ちなみにこの料理、[通品]にカテゴライズされているため、調理法は書かれていませんが、豆腐100%で作ると竹筒に巻き付けられないので、第21回の『ふはふは豆腐』が『玉子ふわふわ』の節約料理であったように、竹輪の魚肉を節約したものと思われます。見た目はそっくりですが、豆腐を多く使っている分、弾力はありません。

■玳瑁環(ちくはとうふ)レシピ
【材料】
木綿豆腐…1/2丁
白身魚のすり身…100g
小麦粉…大さじ1
塩…小さじ1

【作り⽅】
1. 豆腐はよく水切りして潰し、魚のすり身と小麦粉と塩を加え、すり鉢でよく練る。
2. 竹筒に1を巻きつけ、直火で回しながら炙る。お好みの調味料で。

※記事と写真の無断転載を禁じます

⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)、『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)など多数。
小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。最新刊は『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』(東京書籍)。
http://kurumaukiyo.com

『江戸っ子の食養生』
『免疫力を高める最強の浅漬け』
『蔦重の教え』
『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』