和食STYLE

豆腐百珍のすべて 21 尋常品 ふはふは豆腐

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

『ふはふは豆腐』と書いて「ふわふわ豆腐」読みます。
鶏卵と同量の豆腐を混ぜて泡立てることで、高級料理である『玉子ふわふわ(「ふわふわ玉子」とも)』を真似しています。

参考資料:「玉子ふわふわ」

「玉子ふわふわ」は、『豆腐百珍』が発売される以前に出た料理書、『料理物語』(1643年)、『江戸料理集』(1674年)、『料理塩梅集』(1683年)、『合類日用料理抄』(1689年)、『料理網目調味抄』(1730年)、『伝演味玄集』(1745年)、『黒白精味集』(1746年)に掲載されている有名な料理です。

徳川家の饗応料理の一品に入っており、『東海道中膝栗毛』では袋井宿(静岡県袋井市)の名物料理としても登場。かの新撰組局長・近藤勇の好物であったことでも知られています。

「玉子ふわふわ」が高級料理である理由は、当時の生卵の値段が、1つ300円以上もしたからで、卵の量が半分で済む『ふはふは豆腐』は、いわば廉価版。

原本によると、「鶏卵のふはふはと風味変わることなし。倹約を行ふ人、専ら用ゆべし」とありますが、実際に作ってみると、卵100%で作った「玉子ふわふわ」の方がよりふんわりしていて、風味も良いように思います。

■ふはふは豆腐 レシピ
【材料】
絹ごし豆腐…1/4丁
卵…1個
濃いめのすまし汁(出汁、酒、醤油、塩)…200ml
割り胡椒…少々

【作り⽅】
1. 絹ごし豆腐をすり鉢でよくすり、泡だてた卵と合わせてよく混ぜる。
2. 濃いめのすまし汁を土鍋で沸騰させ、1を静かに流し入れて蓋をして火を止め、1分ほど蒸らす。
3. 2を椀に入れ、割り胡椒をかける。

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⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)『1日1杯の味噌汁が体を守る』(日経プレミアシリーズ)など多数。
小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。新刊『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)発売中。
http://kurumaukiyo.com