和食STYLE

豆腐百珍のすべて 30 通品 絹ごし豆腐

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

『絹ごし豆腐』の販売を、江戸の町で最初に始めたのは、第6回の『高津(こうづ)湯豆腐』の回でも紹介させていただきました、台東区根岸に現存する、元禄4年(1691年)創業の「笹乃雪」です。

江戸っ子は当初、滑らかで柔らかい豆腐が性に合わず、『絹ごし豆腐』を世間に広めるのに苦労したそうです。
それもそのはず、当時の江戸の『木綿豆腐』は、現在の沖縄の島豆腐のように、どっしりと重くて硬く、水切りをしなくても田楽ができるほど水分が少なかったのですから、『絹ごし豆腐』など、まるで別の食べ物だったことでしょう(そもそも江戸の男性は硬いもの好きで、柔らかいものは、女性と子供と高齢者の食べ物と見下していたフシがあります)。

ここからもわかるように、大陸から伝わった、豆腐の基礎は木綿豆腐なのです。その証拠に『豆腐百珍』のレシピ100品の中にも、『木綿豆腐』のメニューはありません。つまりは木綿豆腐がベースにあって、絹ごし豆腐はアレンジ料理、というわけです。

■絹ごし豆腐レシピ
【材料】
無調整豆乳…300cc
にがり…大さじ1
粉寒天…2g

【作り⽅】
1. 鍋に無調整豆乳とにがりを入れ、泡立たないように気をつけながら、丁寧に混ぜる。弱火でゆっくりと温め、周囲が泡立ってきたら粉寒天を溶かして火を止め、型に流し入れて粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やす。
2. 四角く切って器に入れ、お好みの調味料でいただく。

※記事と写真の無断転載を禁じます

⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)、『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)など多数。
小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。最新刊は『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』(東京書籍)。
http://kurumaukiyo.com

『江戸っ子の食養生』
『免疫力を高める最強の浅漬け』
『蔦重の教え』
『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』