豆腐百珍のすべて 13 尋常品 速成凍豆腐
時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)
【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。
前回ご紹介しました12番『凍(こごり)とうふ』の工程を途中で止めたものが、今回ご紹介する『速成凍(はやこごり)豆腐』です。8等分に切った豆腐を、極寒の夜に外で凍らせ、翌朝溶かして絞ったら、乾燥させずにそのまま料理に使う、というわけです。
溶かして鬆(す)が入った豆腐を固く絞ると、ボロボロとミンチ状の塊が出来上がります。水分が抜けているため、大豆の味が濃厚で、大豆ミートのように様々な料理に使えます。
『豆腐百珍』には、これをどのように料理したかは書いていないのですが、炒め物に合わせれば卵の代わりになり、鶏そぼろのように甘辛く炒めたり、合挽肉に混ぜてハンバーグをカサ増しすることもでき、おからより食べやすく、とてもヘルシーです。
肉類や卵の代用にするには木綿豆腐で作るのがお勧めですが、絹ごし豆腐で『速成凍豆腐』を作ると、カッテージチーズのような状態になるので、ホワイトソースやスイーツの素材としても使えます。
賞味期限の危うい豆腐などあれば、とりあえず切って凍らせてみてはいかがでしょう? 冷凍庫のある現代であれば、ものの2時間もすれば完成です。
■速成凍豆腐レシピ
【材料】
豆腐…1丁
【作り⽅】
1. 豆腐は8等分してひとつずつラップに包み、冷凍庫に入れる。
2. 凍ったら自然解凍し、水気を絞って料理に使う。
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(くるま うきよ)
時代小説家/江戸料理・文化研究家。
企業内グラフィックデザイナーを経て、故・新藤兼人監督に師事し、シナリオを学ぶ。現在は、江戸時代の料理の研究、再現(1000種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『美の壷』他のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。
著書に『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)『1日1杯の味噌汁が体を守る』(日経プレミアシリーズ)など多数。小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。新刊『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)発売中。。
http://kurumaukiyo.com