豆腐百珍のすべて 12 尋常品 凍とうふ
時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)
【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。
『凍とうふ』の「凍」は「こごり」と読み、現代の『凍(こお)り豆腐』と同じものです。
種類としては、高野山発祥で関西以西に流通している『高野豆腐』と、信州および東北以北の農村で生まれた『凍(し)み豆腐』があります。『凍み豆腐』は冬の寒い日に、豆腐を家の中にしまい忘れたために、偶然できた産物だと言われています。
製法はやや違うものの、どちらも豆腐を一旦凍らせ、溶かして水分を抜くことにより、豆腐に鬆(す)が入り、スポンジ状になったものを乾燥させて作ります。
腐敗の元である水分を、凍らせて抜くというのは寒い地域ならではの素晴らしい知恵で、原本のレシピを読むと、「豆腐一丁を八ツほどに切って籠に並べ、熱湯をかけて夜半から極寒の外で一夜かけて凍らせ、翌日茹でて浮いてきたところをすくい上げ、少し重しをかけて籠に並べ、何日も天日干しにする。梔子(くちなし)の実を割り入れた湯で茹でれば虫がつかない」とあり、自然環境の中で時間をかけて作られていたことがわかります。
ちなみに『凍り豆腐』を美味しく戻すには、2個に対して1リットルの熱湯を鍋で沸かし、そこに凍り豆腐を浸し、蓋をして4分置きます。すると、驚くほどきめ細かく、なめらかな湯豆腐状態になりますので、だし醤油、ポン酢、天然塩など、お好みの味付けでどうぞ。
■凍とうふレシピ
【材料】
木綿豆腐…1丁
クチナシの実…1個
【作り⽅】
1. 木綿豆腐は8等分してひとつずつラップに包み、冷凍庫に入れる。
2. クチナシの実を割り入れた湯を沸かし、凍ったままの豆腐を弱火で茹でる。浮いてきたら引き上げて、少し重しをかけ、天日干しにする。
3. ある程度乾いたら、重しを外して完全に乾燥するまで天日で干す。
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(くるま うきよ)
時代小説家/江戸料理・文化研究家。
企業内グラフィックデザイナーを経て、故・新藤兼人監督に師事し、シナリオを学ぶ。現在は、江戸時代の料理の研究、再現(1000種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『美の壷』他のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。
著書に『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)『1日1杯の味噌汁が体を守る』(日経プレミアシリーズ)など多数。小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。新刊『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)発売中。。
http://kurumaukiyo.com