日本料理のお品書き難読漢字クイズ 第1回は先付&椀物編です!
日本料理のお品書き難読漢字クイズ第1回:先付&椀物編
会席料理とは酒を楽しむ料理とされていて、もともとは江戸時代の俳句の会を「会席」と呼んだことから、そこで提供される食事のことを「会席料理」と言うようになりました。お茶を楽しむ料理とされる懐石料理とは献立名も順番も違ってきます。 この企画では機会の多い会席料理の献立の流れに沿って、難読漢字クイズをご紹介していきましょう。また会席料理の献立の流れは名称もまちまちであったりしますが、ここでは1・先付 2・椀物 3・向付 4・鉢肴 5・強肴 6・止肴 7・食事 8・水菓子という順で、番外編も含めて5回連載企画で出題させていただきます。 各回20問づつの合計100問は、少し難易度の高い出題かもしれません。正解率は、一般の方で4~5割、和食関係の方なら8割以上というあたりを想定しておりますが、いかがでしょうか?
1品目:先付
読み方は「さきづけ」です。料理の最初に出す、「酒の肴」にあたります。これは酒を楽しむ「会席料理」に出てくる言葉で、茶懐石や本膳料理では使わない言葉です。 「先付」「突き出し」「お通し」は、一緒の意味で使われることも多々ありますが、厳密にはそれぞれに違う意味を持ちます。「突き出し」は客の注文にかかわらず、最初に突出す料理。これに対して「お通し」は、客の注文に対し、店側が了解したとの旨をあらわすために出されるようになったと言われています。「お客さまの注文は間違いなくお通ししました」との意味から、「お通し」と呼ばれるようになったようです。 まずは先付に出てくるお料理の難読漢字、チャレンジしてみてください。
① 唐黍豆腐玉蜀黍の別名です。世界三大穀物のひとつ。
② 胡桃豆腐ごま豆腐ではありません。長野県東御(とうみ)市が生産量日本一。
③ 烏賊塩辛軟体動物です。塩辛にする代表的な食材です。
④ 姫栄螺の磯煮マンガのキャラクター名にもなっていますね。
⑤ 鰻と枝豆の煮凝魚のゼラチン質が煮汁に溶け出し、冷えてゼリー状になったもの、またその料理。
⑥ 蕗の薹と菜の花、椎茸の白和えご年配のかたなら、70年代にこの名前のフォークグループがあったのをご存知?
⑦ 鮟鱇肝真薯最初の漢字は鍋料理でも有名な魚。2番目は料理法です。
⑧ 海鼠と海鼠腸の共和え共和え(ともあえ)がどんなものかをご存知ならば、ヒントになりますね。
⑨ 金目鯛と近江蕪の唐墨和え最初の漢字は代表的な根菜。2番目は珍味のひとつで長崎のものが有名です。
⑩ 蒸し鮑と紅白膾、葉山葵1番目の漢字は「鰒」「蚫」とも書かれる巻貝。2番目は正月料理にも出される料理法。3番目は薬味で有名な植物です。
【解答】
① 唐黍豆腐●とうきびどうふ……唐黍(とうきび)は玉蜀黍(トウモロコシ)の別名です。世界三大穀物は小麦・米・トウモロコシです。日本の国内生産量は北海道、千葉県、茨城県という順番です。
② 胡桃豆腐 ●くるみどうふ……クルミの実をすりつぶしてくず粉をまぜ、水を加えて煮て豆腐のように固めたもの。
③ 烏賊塩辛●いかしおから……塩辛は魚介類の身や内臓を塩づけにして、保存性を高めた発酵食品。
④ 姫栄螺の磯煮●ひめさざえのいそに……サザエは壺焼きなどで知られる巻貝。姫栄螺(ひめさざえ)は小ぶりなサザエのことでサザエの種類ではありません。
⑤鰻と枝豆の煮凝●うなぎとえだまめのにこごり……煮凝りは和食の代表的な酒肴ですね。
⑥ 蕗の薹と菜の花、椎茸の白和え●ふきのとうとなのはな、しいたけのしらあえ……山菜として人気があるフキノトウは、フキのつぼみの花茎(花を支える茎の部分)です。独特の苦みがあるので和え物に、そして天ぷらとして良く調理されます。
⑦ 鮟鱇肝真薯●あんこうきもしんじょ……アンコウは捨てるところがないと言われる魚で、その肉・肝・水袋(胃)・ぬの(卵巣)・えら・ひれ・皮を「鮟鱇の七つ道具」ということも。真薯(しんじょ)は魚の白身などをすりつぶしたものに、山芋や卵白、だし汁などを加えて、蒸し、ゆで、揚げなどで調理したもの。
⑧ 海鼠と海鼠腸の共和え●なまことこのわたのともあえ……コノワタはナマコの内臓の塩辛です。同じ食材から生まれた具材で和えたものだから共和えなんです。
⑨ 金目鯛と近江蕪の唐墨和え●きんめだいとおうみかぶのからすみあえ……蕪(カブ・カブラ)は全国各地に伝統野菜として育てられていて、出題の近江蕪のほか、聖護院蕪( しょうごいんかぶ)、天王寺蕪などがあります。カラスミはボラなどの卵巣を塩漬けし、その後塩を抜いて天日干ししたもの。
⑩ 蒸し鮑と紅白膾、葉山葵●むしあわびとこうはくなます、はわさび……アワビはコリコリとした食感が特徴の高級食材ですね。古来、膾(なます)は、切った獣肉や魚肉に甘酢などを合わせて生食する料理でしたが、現在は酢を用いた和え物全般を指し、野菜や果物も使われるようになり、正月料理に出てくるだいこんを使った紅白なますが代表的です。調味料として使われるワサビは根の部分をすりおろしたもので、それ以外に葉ワサビ、茎ワサビと使う部分によって呼び名を変えています。
2品目:椀物
こちらも読めない方のために、「わんもの」です。先付の次に出される「吸い物」のことです。会席料理の後半にご飯と一緒に出されるのは「汁物」で、厳密には違ってくるのですが、昨今では呼び方が混同しているところもあります。懐石料理においての「椀物」は煮物料理を指す場合もあります。
① 鮎魚女葛たたき 上品な白身で淡白な味わいの高級魚ですね。
② 福子の奉書巻 代表的な出世魚の呼び名のひとつといえばお分かりでしょうか。
③ 焼き鰆の船場汁 西京焼きで有名な魚。あまり知られていませんが、実はこちらも出世魚です。
④ 笠子汁潮仕立て 定番的な料理は煮つけという、口の大きな高級魚です。
⑤ 芹と蛤、柚子 春の七草のひとつです。
⑥ 笹掻き牛蒡の沢煮椀 笹掻きは調理の仕方。牛蒡は柳川鍋に欠かせない食材です。
⑦ 穴子の白焼き、莢隱元 中国の僧侶が持ち込んだとされる豆ですが、若い頃の食用の呼び名です。
⑧ 焼き白葱、菖蒲独活 1.5メートルほどまで育つのですが、そのころは食用にも木材利用もできないので、ことわざにもなってますね。
⑨ 赤魚鯛の霰揚げ、うす葛仕立て 最初の漢字は近年漁獲量が減った高級魚。2番目の漢字は空から降ってくるものです。
⑩ 鱸の小袖巻き、蓴菜、三つ葉 最初の漢字は出世魚で、ルアーフィッシングのターゲットとしても有名です。2番目の漢字は水生植物です。
【解答】
① 鮎魚女葛たたき●あいなめくずたたき ……魚のアイナメは「鮎並」(鮎のように縄張りを持つから。鮎に形が似ているから)とか、「愛魚女」(賞賛すべき美味な魚)などの表記もあります。日本の沿岸の岩礁域に生息する根魚です。
② 福子の奉書巻●ふっこのほうしょまき ……フッコは出世魚スズキの呼び名のひとつ。セイゴ→フッコ→スズキという順番です。
③ 焼き鰆の船場汁●やきさわらのせんばじる ……サワラは、サゴシ(サゴチとも)→ナギ→サワラとなる出世魚。また船場汁は大阪の問屋街・船場(せんば)で生まれた料理とされ、本来は塩サバで作られた具だくさんの汁のこと。
④ 笠子汁潮仕立て●かさごじるうしおじたて ……カサゴは東京地方での呼び名で、関西地方のガシラやガシ、山陰地方のボッカなどの地方名があります。潮仕立ては魚から取っただしを塩のみで調理した潮汁(うしおじる)のことで、椀物の基本とも言えます。
⑤ 芹と蛤、柚子●せりとはまぐり、ゆず ……セリは日本では古くから食されていた多年草。宮城県などではセリ鍋、秋田の郷土料理、きりたんぽ鍋にも使われます。
⑥ 笹掻き牛蒡の沢煮椀●ささがきごぼうのさわにわん ……笹がきはゴボウやニンジンなどを、笹の葉のように細長く薄く切る料理法。ゴボウは「牛旁」とも表記します。
⑦ 穴子の白焼き、莢隱元●あなごのしらやき、さやいんげん ……サヤインゲンは、種子は小さくサヤが細長い、未熟なうちにサヤごと食べるインゲンマメのこと。白焼きは「しらやき」です。食材にたれや調味料を付けず、油も敷かずに直火で焼く料理法です。
⑧ 焼き白葱、菖蒲独活●やきしらねぎ、しょうぶうど ……スーパーや八百屋で見かけるウドは、地下で日光を当てずに育てた白ウドと呼ばれるものです。菖蒲独活は、うどを菖蒲の花のように切った飾り料理です。
⑨ 赤魚鯛の霰揚げ、うす葛仕立て●あこうだいのあられあげ、うすくずじたて ……アコウダイは「鯛」の字が付いてますが、分類上ではメバルやカサゴに近い魚です。水深500~700メートルの深海、日本では相模湾や駿河湾に多く生息しています。霰(あられ)揚げとは、米菓のあられなどを衣につけて揚げる料理。
⑩ 鱸の小袖巻き、蓴菜、三つ葉●すずきのこそでまき、じゅんさい、みつば ……スズキの出世魚名については問題②のところでも出てきましたね。ジュンサイは「純菜」や「順才」の字が使われることもあり、秋田県三種町が国内生産量の約90%を占めています。小袖巻きは、着物の袖に見立てた形や切り方をする料理。
いかがでしたか? この難読漢字シリーズはこれ以降 第2回:向付&鉢肴編 第3回:強肴&止め肴編 第4回:食事&水菓子編 第5回:番外 珍味&郷土料理編 と続く予定です。引き続きチャレンジしてみてください!