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さかな歳時記「二十四節気・立冬」 熟成の旨みは「鮮度が命」にあらず

二十四節気●立冬●11月7日


提供:福山市

冬間近を感じさせる秋の深まりとともにうまみがのり、大きく育ってきました。
見た目に似合わずコクのあるその身は、白身の王様とも。白身魚の刺身では極上とされ、とりわけえんがわは食感も甘みも旨みも文句のつけようがないほどと称される、この魚を選びなさい。


①カレイ
②カワハギ
③ヒラメ
④フグ

【解説】

「たいやひらめの舞い踊り」の言葉通り、春のマダイと並び称される、冬にうまい白身魚の代表格。水深50~200㍍の深海、砂地の色や周囲の環境に同調するよう体色や模様を変え、砂に身を隠して棲んでいる夜行性の魚だ。口が大きく、小魚やエビを主食としている。



程よい歯ごたえのあとに、ふわぁ~と広がる上品なクセのない甘み。一度味わったことのある方にはヒラメのおいしさはご承知のとおりだが、時期によって味に大きな差がある。
「三月鮃(ひらめ)は犬も食わぬ(または、猫またぎ)」とも昔からいわれ、また古川柳に「知恵のなさ四月鮃の刺身なり」と詠まれるとおり、ヒラメのおいしい時季は10月から2月までといっていいだろう。「産卵を終えて味が落ちる春から夏にはヒラメを仕込まない」との見識をみせるすし屋は少なくない。



ヒラメの薄造り。うまみの成分、イノシン酸が豊富なため、白身でも味にコクがある

透き通るかのような白身はほどよく身が締まり、クセのない美味だから多くの人に好まれる。食味のよさで知られる縁側とよばれる部分は、くりくりっとした歯ざわりと口中でのとろけ具合がたまらない。ここはヒラメがよく使う背びれと腹びれを動かす筋肉。まずいわけがない。



食通が夢中になるヒラメの「縁側」とは、ヒレの基部にある骨にはさまる柱状の表裏・上下4本の筋肉をいう。1尾から少量しかとれない。

魚は必ずしも鮮度が命とは限らない。数時間から数日ねかせておいた方がおいしくなるものがある。サイズの大きいマグロや硬い身をもつフグなどがそう。ヒラメもそのうちの一つだ。
食べる直前に締めたものは、コリコリとした歯ごたえで食感がいい。死後硬直する前で、筋肉が硬くなりかけているためだ。でも、そこにはうまみが足りず、本当に美味しいヒラメの風味を味わうことができない。



背側の身の握り。腹身にくらべ脂が少ないが、旨みと香りが深い

締めてからすぐ食べても美味しい魚もある。しかしヒラメはもともと身が硬めなだけに、締めてから1~2日ねかせておくことで、死後硬直した身が酵素の働きで熟成され、うまみ成分が増し、身肉も適度にやわらかな食感になる。魚の性質を理解している店では、ヒラメは締めたてではなく、ねかせたものが出てくる。ヒラメの食べさせ方一つで、店のレベルがわかる。



ヒラメのもう一つの愉しみ、昆布締め。もともと冷蔵庫のない時代の保存食だ。


食通垂涎の的、ヒラメ「縁側」の握り。

ヒラメによく似ているカレイとの見分け方を示す「左ヒラメに右カレイ」という言葉がある。
体の左側に目があるのがヒラメ、右側にあるのがカレイという意味だが、もうひとつの見分け方が「口と歯」。ヒラメは魚食性のため、口が大きく歯がとがり、怖い顔をしている。一方。ゴカイ類などを食べるマコガレイやマガレイなどはおちょぼぐちで、歯も小さく、やさしげ印象がある。そのため「大口ヒラメの小口カレイ」ともいう。マガレイにはたとえば「口細(クチボソ)」という別名もある。



目の位置から「左ヒラメに右カレイ」という。向かって左がカレイ、右がヒラメ

「ヒラメ関東、カレイ関西」は、昔から好まれてきた地域をあらわす。関東人がこよなく愛するヒラメは江戸前ずしではタイ以上の人気を誇る。

 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】③ヒラメ    
 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年の第6回では八戸から福岡の12会場、昨年の第7回では函館から福岡にいたる11会場へと広がり、小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出しています。
平成29年は、6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡の全国9会場で、6歳から88歳まで2800余名を集めて開催しました。
また今年行われる第9回の日本さかな検定は「2018年6月24日(日) 札幌 酒田(初)石巻 東京 静岡 名古屋 大阪 兵庫香美 下関(初)――5月21日申込み締切り(5名以上のグループ受検は5月14日締切り」となっております。
詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/