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日々是和食

さかな歳時記「二十四節気・穀雨」 競演。紅白の宝石

二十四節気●穀雨●4月20日

4月上旬、北と南の海でそれぞれの漁が始まります。そして、4月も半ばを過ぎた頃から、市場で紅白の宝石がご対面。そう、白エビと桜エビの両者が出揃います。
双方の漁場の組みわせを選びなさい。

①陸奥湾と伊勢湾
②仙台湾と三河湾
③東京湾と大阪湾
④富山湾と駿河湾


【解説】

どちらも、駿河湾と富山湾という日本で有数の深い海に生息しており、引き網でとるという漁法も共通している。また、生きている間はどちらも透明感のある薄いピンク色で、桜エビは干すと鮮やかな桜色に変わり、白エビは漁獲後、徐々に白く変化する。



「シロエビ」 富山県 提供

「富山湾の宝石」シロエビは、体長5~8㌢、真珠に珊瑚の淡いオレンジ色をぼかしたような色調の、それは可憐な小エビである。実は全国でその姿は見られる、とはいうものの、市場ベースにのっかる量がとれるのは富山湾だけ。
その理由は富山湾の特異な地形にある。富山湾というのは、陸からいきなり深く落ち込んでいるのだ。そこに、庄川、神通川、常願寺川などの大河が流れ込み、プランクトンが豊富に。シロエビは深海の冷水を好むし、エサも豊富とあっては絶好のすみかとなる。
解禁は4月。晩秋まで小型底引き船による漁は続くが、店頭で目につくのは、やはり新漁のいま頃だ。水揚げ港、射水(いみず)市新湊近くの鮨屋では小さなシロエビを一尾ずつむき身にし、そのうえ昆布締めにした握りずしや刺身が登場する。



何尾使っているのだろう、と思わず数えたくなる握りずし。昆布の色がうっすらシロエビを染め上げる。


シロエビの刺身。プリッとした食感と後からやってくる甘みが印象に残る

ところでシロエビという名。真珠のように白いから、と思い込んでたらこれがどうも違うらしい。標準和名はシラエビ。新湊港あたりのお年寄りは「ヒラタエビ」と呼んでいるとか。実はシロエビ、身がちょっと平べったい。それでヒラタエビ、なまってシラエビ。でも、富山県のアンテナショップでも、商品化したものの名はすべてシロエビだそうな。



生の殻付きが出回るようになっている昨今。揚げると、殻はカリッとなり、エビ特有の甘みも堪能できる

今でこそ、ブリ、ホタルイカにならぶ富山湾名産御三家のひとつとなったシロエビ。かつては、鮮度落ちが早いのと知名度がないのとで商品価値がなく、食紅をまとわせ桜えびに似せていたというもの哀しい過去の持ち主。苦労の末に戴いた「富山湾の宝石」なのである。
こちら、「駿河湾の宝石」こと桜えびも4月に漁が解禁。秋にも漁期があるが、名前からしてやはり人気は春に集中する。こちらの名まえは素直に桜の花びらのような色合いだから。
プランクトンが豊富な駿河湾は、サクラエビにとってすみやすい深海だ。日中は水深数百㍍を群れで泳いでいるが、夜間には数十㍍まで浮上する。それを狙って2隻1組の「夫婦船」がまき網で漁獲する。
シロエビよりひとまわり小さい体長4㌢ほどと、エビの種類の中でも小ぶりながら、うまみはたっぷり。口に入れると、香りと甘みが一気に口中に広がる。殻ごと食べられるため、カルシウムや食物繊維を摂るにはもってこい。
乾燥させた干しエビとしての流通が多い。風味が濃厚なため、鍋や卵料理、混ぜご飯などさまざまな料理のアクセントに使える。



富士川河川敷の桜えびの天日干しを赤いじゅうたんに見立てた富士山の絶景は、駿河湾沿岸でも最高の観光スポット


地元静岡ではとれたての生エビを豆腐、ネギなどと煮込んだ鍋料理「沖あがり」が名物。夜を徹しての漁を終えた船頭たちが、沖から陸にあがって食べたことから、そう呼ばれる。



地元の定番メニュー「生えびのかき揚げ」。おいしく揚げるコツは、エビとエビをつなぐ衣の量を抑えること。すきまをもたせるとサクサクになる


最近は消費地でも生で出回るようになってきた。桜えびの軍艦巻き

このサクラエビ、ほんの偶然から発見された。
1894(明治27)年、静岡県由比町の二人の漁師が夜、引き網船でアジ漁をしていた。浮き樽(たる)がはずれたことに気づかず網を仕掛けたため、網が深く沈んでしまった。急いで引き上げると大量のエビが飛び跳ねていた、というのだ。こうして、桜えび漁が始まった。
毎年5月3日には由比漁港で「桜えびまつり」が開かれ、漁協婦人部による“かき揚げ丼”には長蛇の列ができる。



シロウオならぬ、桜えびの躍り食い
 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】④富山湾と駿河湾   
 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年の第6回では八戸から福岡の12会場、昨年の第7回では函館から福岡にいたる11会場へと広がり、小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出しています。
平成29年は、6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡の全国9会場で、6歳から88歳まで2800余名を集めて開催しました。
また今年行われる第9回の日本さかな検定は「2018年6月24日(日) 札幌 酒田(初)石巻 東京 静岡 名古屋 大阪 兵庫香美 下関(初)――5月21日申込み締切り(5名以上のグループ受検は5月14日締切り」となっております。
詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/