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さかな歳時記「二十四節気・冬至」 師走の千両役者

二十四節気●冬至●12月21日

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昔は大晦日の日暮れが一年の終わりとされ、新たな年の夕食から元日にかけて家族そろって食する魚を「年取り魚」と呼んでいました。
日本各地に年取り魚は数あれど、東日本の代表といえば新巻でおなじみの塩サケでしょう。
西日本を代表する年取り魚を選びなさい。

①鮭
②鰆
③鱸
④鰤
【解説】

冬至ともなると師走も大詰め。もう頭のなかは正月のごちそうのことでいっぱい。その立役者をつとめる大物となれば、正月魚の横綱、まるまる太った天然のぶりにつきる。
東が鮭なら、西は鰤。西日本では「年取りぶり」といわれ、正月料理に欠かせない。
名の由来は「あぶら」の多い魚だから「ぶり」。あるいは、「年経りたる魚」の「ふり」によるという説もある。師走にもっとも味がよくなるから漢字では鰤。中国語で「魚師」とは「老魚」「大魚」のことを指すので、これに由来するとも。

ご存知のように、大きくなるにつれ名が変わる、おめでたい出世魚。で、幼名は? これがスラスラ言える人がいたらエライ。東京近辺では、わかし⇒いなだ⇒わらさ⇒ぶり。関西では、つばす⇒はまち⇒めじろ⇒ぶり。全国各地、呼び名は120もあるそうだが、どこでも1㍍以上になると「ぶり」と呼んでいる。

もちろん最高においしいのは、真冬の「寒ぶり」。なかでも日本海、そのなかでも富山県氷見(ひみ)漁港に、定置網漁で水揚げされる寒ぶりは日本一とされる。11月も末になると、富山湾には雷が鳴り響き、寒風が吹き荒れる。これがいわゆる「ぶりおこし」。ぶりが岸に近づいた報せだ。海が荒れれば荒れるほど豊漁に。体長1㍍、10㌔以上の大物が何百匹と海面に勢いよく体をたたきつける。


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富山湾にのぞむ射水(いみず)市に平安時代から伝わる正月行事「鰤分け神事」。
元日の朝、加茂神社の拝殿に塩ぶり6尾が供えられ宮司の祝詞(のりと)とともに、
一尾ずつ高々と持ち上げて塩ぶりを奉納した氏子(うじこ)の地区名を読み上げる。
神事の後、塩ぶりを切り分け、奉納した地区のすべての世帯に配られる。提供:射水市

でも、かつては何万匹と獲れたのに、近頃は減少傾向に。とくに昨シーズンは、記録的な不漁で品不足、高値となった。
ぶりを食べないと正月がこないとお嘆きの諸兄、ご安心あれ。ことしは12月に入り豊漁の報せが届き、しかも魚体が大きく脂がのっているそうな。氷見でも、寒ぶり漁のシーズン入りを告げる「ひみ寒ぶり宣言」が2年ぶりに、早々に出た。

正月料理にはやっぱり、刺身。それもいつもより心持ち厚めに切った刺身にかぎる、という御仁が多そうだが、実は加熱調理をしたほうがぶり本来のうまみを堪能できる。照り焼き、塩焼き、みそ漬け、とりわけ照り焼きは、ぶりの定番中の定番といった料理で、身が締まりつつ甘辛いタレと絡み合う脂が食欲をそそる。


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提供:ヤマキ株式会社 http://www.yamaki.co.jp

塩焼きは塩だけのシンプルな味付けだけに、魚の風味が楽しめる。粗塩を使って焼き、皮はパリッと、身はふんわりとしたぶりには大根おろしとレモンを添えたい。
みそ漬けは、西京みそをはじめ、好みのみそにみりんを加え漬けたものを焼く。酒粕に漬けた粕漬けもオススメだ。
ぶりとくれば、忘れてならないのがぶり大根。もとは能登の漁師料理と伝わるこの料理の醍醐味は、ぶりのうまみがたっぷりとしみ込んだ大根。寒い冬には欠かせない。


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提供:ヤマキ株式会社


古来、多くの人が往来した街道はまた、山間部へ魚介を運んだ魚の道でもあった。現在の国道41号線にあたる飛騨(ひだ)街道は別名「ぶり街道」とよばれる。江戸時代、富山湾でとれた寒ぶりは、塩漬けにされて飛騨高山へと運ばれた。
さらに野麦峠を越えて信州・松本や伊那地方にまで運ばれ、正月魚としてハレの日に食べる大切な魚であった。年内に間に合わせるために、歩荷(ぼっか)とよばれる行商人が人の重さほどもあるぶりを背負い、夜を徹して雪の峠を越えていったのである。

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】④鰤(ぶり)

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。 この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。 魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。 2010年の第1回を東京・大阪でスタート、今年の第7回(6月26日(日))では函館・八戸・石巻・東京・静岡・富山射水・若狭小浜・大阪・宇和島・福岡の全国11会場で開催、小学生から80歳代まで世代性別を超え、累計2万名を越える受検者を47都道府県から輩出しています。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/