和食STYLE

日々是和食

さかな歳時記「二十四節気・小暑」 煮る関東 焼く関西

二十四節気●小暑●7月7日

ふっくらとした口当たりのあとにまろい舌ざわりが広がり、口中いっぱいに心ざわめかす複雑な生きものの味わいを残してのどをすべり込んでいきます。江戸前の天ぷらや寿司が有名ですが、関東では煮る、関西では焼くのが主流と、くっきり嗜好が分かれます。江戸前の羽田沖や宮城県の松島湾、瀬戸内海に面した明石や赤穂、広島などが産地として名高いこの魚を選びなさい。


①アナゴ
②ウツボ
③ウナギ
④ハモ

【解説】

ウツボやハモと同様、ウナギの仲間であるアナゴはいまでは一年中見かけるが、梅雨時から脂がのってうまくなる魚だ。穴子は名のとおり穴を好む習性があり、夜間にイワシやイカなどのエサに誘われて筒に入ったところで漁獲される。



見た目とは、当てにならないものである。お茶目な顔して実は肉食。スリムなくせして大食らい。美食が彼らのモットーだ。なにしろ主食はエビやカニ、貝などだそうだから相当のグルメで、それをとってきて料理して食べるだからまずい筈はない。
家庭で簡単にできておいしいアナゴ料理といえば、あなご煮だ。だしに酒、みりん、醤油を加え、開いたアナゴを煮るだけという簡単な料理法。ポイントは落としぶたをして、できる限り細いとろ火でゆっくりと時間をかけて煮ること。時々菜ばしを使い、触れてみて、好みのやわらかさになったら出来上がり。アナゴ煮の際に、頭もあれば使うとよい。一度あぶった頭を鍋の中に一緒に入れるだけで、アナゴのだしが出て、ぐっと風味が増す。



ふんわりした食感、さっぱり上品な味を生かしたアナゴ煮は家庭料理にうってつけ。

関東の煮穴子には、短時間で醤油の色合いを漬けずに白く仕上げた沢煮と、とろけるほど柔らかく煮たものがある。



開き(冒頭の写真)を買うときは、身に弾力があり、体に透明感とぬめり感があるものを選ぶ。ところどころ色あせているものは鮮度が落ちている。


一方、焼き穴子は関西から瀬戸内にかけてよく見られるもので、「あなご飯」はこれをご飯にのせたもの。 アナゴを使った駅弁も全国各地に見ることができるが、とりわけ宮島口(広島県廿日市(はつかいち)市の「あなごめし」は売り切れご免の人気駅弁だ。宮島のアナゴ筒漁で使うエサは、カキのむき身だとか。


ふだん“ふわとろ”の穴子を食べなれている関東人からすると、別物ともいえる味わいと食感が愉しめる焼きアナゴの弁当。香ばしく、あとから濃厚なうまみがやってくる。提供:あなごめしうえの

ハモがいない北海道や東北ではアナゴをハモと呼ぶ。体側にならぶ白い斑点から、東京で秤竿(はかりざお)の目盛りに模してハカリメ、愛知ではメジロ、関西では特大のアナゴをデンスケと称す。



江戸前の天ぷらにはメソッコと呼ばれる15~35㌢ほどの脂肪の少ない若魚が好まれる。素揚げした「骨せんべい」はカルシウムの宝庫。

低カロリーで高たんぱく。しかもアナゴは目の働きを助け、肌を健康に保つビタミンAが豊富。ビタミンD、E、カルシウム、DHA、EPAなども多く含む。
そんなアナゴには解明されていない謎が多々ある。つい最近、ようやく産卵場所―日本最南端の沖ノ鳥島の南約380㌔でふ化後間もない仔魚(しぎょ)が採取された―が特定されたものの、産卵回数も不明、産みつけた卵も未だ発見されていない。しかも稚魚といわれる「ノレソレ」は、成長していく段階でいったん体長が縮み、体重が減るらしい。



白く透き通った美しい姿が、シラウオを思わせる「のれそれ」。生臭みがなく、さっぱりした上品な味の珍味で、主産地は瀬戸内海。生のままポン酢をつけて食べる「べらた」は岡山の郷土料理のひとつ。 提供:大阪府水産課  
 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】①アナゴ    
 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年の第6回では八戸から福岡の12会場、昨年の第7回では函館から福岡にいたる11会場へと広がり、小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出しています。
平成29年は、6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡の全国9会場で、6歳から88歳まで2800余名を集めて開催しました。
また今年行われる第9回の日本さかな検定は「2018年6月24日(日) 札幌 酒田(初)石巻 東京 静岡 名古屋 大阪 兵庫香美 下関(初)――5月21日申込み締切り(5名以上のグループ受検は5月14日締切り」となっております。
詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/