和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第80回

爆発的に広がる中国での「日本料理屋」の出現!

11月。いよいよ2019年も残りわずかになった。ちょうど、天皇陛下御即位をお祝いする国民の祭典も終わり、令和元年も、新しい時代の幕開けとなった。

私は、中国・上海に、今年の1月から10カ月ぶりに視察として向かった。目的は、中国最大の食の展示会「FHC2019」だ。生鮮以外の、加工品、製造商品、またそれにまつわる設備もろもろ一堂に会した展示会だ。珍しく空は真っ青で、この時期には珍しく20度を超えた天候だった。

まず中国全土と言われるだけあって、その展示会の物量(出店者数)にはど肝を抜かれた。日本で言えば、千葉・幕張にある「幕張メッセ」のおおよそ3倍の大きさ。まさに、大きな町一個分が展示会場になっている。またこの展示会のレイアウトは、大きく三角形の配置となっており、一辺は、グローバルエリアとして、日本をはじめ、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各国からの出展者で連なる展示となり、もう一辺は、中国市場で展開しているものが、カテゴリー別に、ベーカリー、スイーツ、フレンチという具合に分かれた展示、さらにもう一辺は、酒類、おもにワイン、リキュールといったラインナップで展示された、それぞれ3つの大きなエリアで分かれていた。

私たちは、その中でもグローバル、特に日本エリアの、JETRO主催ブースを中心に拝見させていただいた。今回の出店のラインナップを見るに、主に島根県の酒造組合、福岡・北九州の酒造組合などの出店が目立った。上海からすれば、九州・福岡から片道2.5時間の距離。海外事業展開としては、大きなマーケットであることは間違いない。

そして「日本酒」という商材展開も見逃せない。特に2018年は、日本酒の輸出量が、過去最高となり、また先日、海外向け販売に特化した、日本酒醸造に関する法律が制定され、2020年度以降、新たな動きが生まれる準備が進められている。一方、食に関しては、以前多く見られた「日本の地域における特産品を活用した商品」が少なくなった。むしろ、そうした商品より、簡単に調理ができるソースや調味料、冷凍食品の展開が数多く見られた。この展開から「できるだけ簡単に手早く」という主旨が見られ、訪れたバイヤーたちも、賑やかに出店者との交渉をしている様子が伺えた。(また一般のお客様も多く見られたが、試食・試飲を実施している店舗ほど多く賑わっていた。)

今回、出店者ほか、様々な方々にヒアリングさせていただいたが、みな一同に「日本料理店が爆発的に増えている」という印象を述べていた。この「日本料理屋」という部分が重要で、例えばラーメン屋から回転寿司、トンカツ屋から居酒屋、果ては高級和食業態まで、日本に紐づくレストランは、ほぼ全て「日本料理屋」と言われているところだ。2019年の現在、中国全土では少なくとも5万件を超え、2015年、2017年とまさに倍々、という形で増えているのだ。

僕がもった印象は、大きく分けて二つ。1つは、まずビジネスとして捉えた場合、その多くの日本料理屋が増えていくことにより、「味の日本化」を進めていくために、いわゆる「調味料」の輸入が盛んになってくるはずだ。これは、先ほどのFHCでも同様だが、醤油などの調味料、また例えばお好み焼きにかけるソースも日本からの輸入、あるいは、国産として、中国で製造を実施し、すでに流通し始めている。また、多くの日本料理屋は、「日本食材に特化した卸会社からの流通」も多くなっている。実は中国では大手2社の、日本食材に特化した企業が存在する。その2社から、それこそ、日本とは変わらない食材を(青果以外だが)仕入れることができるようになっている。その仕入れができるようになれば、多店舗展開も可能で、10店舗、100店舗はすぐに可能になる。それだけ中国は「広い」。実は上海で、いくつかの日本料理屋を訪ねて食べ歩いた。主に、日本で経営展開し、中国に業態ごと輸入している会社のレストランだ。その成り立ちは、すでに日本と変わらず、店内のメニューも、中国人スタッフも日本語ペラペラだ。それでいて味は、多少違いはあるけれど、おおよそ日本と変わらない(し、ほぼ微差だ)。

そしてもう一つは、「日本料理屋を担う料理人の育成」だ。これだけ倍々という形で店舗が増えれば、そのニーズとビジネスデザインによって、お店にも人材が必要だが、だれでもラーメンからトンカツ、高級和食料理はできっこない。むしろ、その人材を育成するために、日本料理とは?という部分を、一から学ばないといけない。日本では、築地にお寿司の学校があるように、中国上海には、日本料理を中国人料理人に学ぶための学校や、研修が盛んだとのこと。また業態によっては、長年の修行が必要なものではなく、1週間〜1ヶ月単位で、しっかり研修を受ければ、店舗運営には問題はないはずだ。(あくまでもプロ目線の話だが。)また、そうした日本料理の研修をビジネスのベースにする企業も発生している。それだけ「爆発的に」日本料理は、中国で広がりつつあるのが現状だ。

単に、話題や店舗数だけではない。フランスが国策としてフレンチという料理を世界中に広げ、さらん「ミシュラン」のようにレストランを評価し、お客様を集客する手法を広げていったように、中国の爆発的な勢いに、スキルやクオリティが担保してくれば、日本料理の新しい境地や発展が生まれる可能性は十分にある。

けれど、私は日本料理をあくまでも「和食」とは捉えていない。このブログの主旨でもある「和食スタイル」は、そのスタイル自体の趣もあるが、いわゆる「日本」「日本人」「日本ならではの」という、かなり特殊性を持ちうるコンテンツだと考えている。だからこそ、中国で「和食」が定着するのはまだまだ先だし、大きく捉えて、そもそも困難、という捉え方であってよい。

むしろ、そうした「和食」に興味を持ち、日本を訪れる中国人が増えていくことは、加速的に考えられる。2020年オリンピック以降、アジアというエリアを見る際に、こうして和食のクリエイティビティが輸出される一方で、その源を探る日本探究が増えてくるのではないかと。

僕はこの上海で「味噌」の可能性を2年ばかり追っかけてきた。味噌の見えた、魅せ方、ブランディングの方向性を考えた場合、あえて「和食」として、味噌の情報発信をしていきたいと考えている。新しい味噌の使い方もさることながら、日本人が好んで、毎日の日常で飲み続けてきた「味噌汁」を上海でどのように展開させていくかを検討したい。

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第79回

「安全」「安心」という言葉が生み出す、絶対条件。観音山フルーツガーデンの挑戦。

「絶対、手選別です!」と、僕を和歌山の山奥に連れて行き、そこに芽生えた青い実を、そのまま食べてみろと児玉会長さん。手に取った青い実は、甘酸っぱくて、酸っぱい「青いみかん」だ。ちょうど食べさせていただいたのが9月下旬頃。手のひらにすっぽりおさまるミカンをむいてみると、鮮やかなオレンジ色で、酸っぱさと言うより「温かみ」を感じる色だった。

例えば、大型機械を使ってサイズ分けしますと、長い工程でくだもの同士がぶつかり合い、その摩擦で沢山のショックやストレスを受ける。そのため、くだものの呼吸が活発化してわずか数日後、味に大きな劣化が起こる。特に、柑橘栽培農家の間では、この劣化した味を「コロコロ転がり、味がボケる」ことから通称「煮えた味」と言うそうだ。

だから、観音山フルーツガーデンでは、手作業で果物1個1個をまるで「生タマゴ」を取り扱っているように選別し、出来るだけ実へのショックを無くする手間をかけている。「大量生産、大量流通」の効率性も大事だが、少し非効率でも美味しさを劣化させることなくお届けすることに多くのファンをつくっている。

例えば、こちらのフルーツパフェ。児玉会長からパフェの特徴だけに限らず、経営しているカフェの数字(経営状況)も見せていただいた。和歌山の山奥で、東京や大阪の繁華街のカフェでも出すことができない売り上げを立てていることにまず驚いた。そしてなにより、著名なパティシエが作り上げたものではなく、自前のスタッフが修行し、素晴らしい商材を作り上げていることも目を見張る。これは「安い!」「高い!」ではなくて、「美味しいものにたどり着くコツ」を果物屋目線で分析し、きちんとビジネス化しているさまが素晴らしいと感じている。(写真の「いちじくのパフェ」は国産いちじくをふんだんに使っており、都会でもなかなか食べることができない代物だ)

11月より京都にもパートナーを介して、このパフェ屋が完成した。

参考:2019年11月1日オープン 観音山フルーツガーデン京都店

http://osumituki.com/hack/kyotokanko/sweets/129591.html

またいま北海道にも新たなパートナーを見つけ、同じくパフェと果実のお店を作ろうとしている。そしてそこで面白いのが「果物屋のフランチャイズ化」だ。単純に名前貸しではなく「その土地で生まれ育った果実を中心に店作りの実施」をしているところだ。確かに、和歌山の、観音山フルーツガーデンの果実はうまい。けれど、旬や季節に応じてその果実は採れない日々も生まれる。もちろん和歌山から運び、移動させることにも移動ロスが発生し、経済的にもうまくいかないだろう。だからこそ、北海道ならではの果物展開があると見込んだ児玉会長は、そこにチャンスを見出そうとしている。この動きは僕も気にしている。

果物の取り扱いは、八百屋をしていた身として、非常に難しいと感じているが、人を喜ばせ、ポジティブにする食材は、他にない。この果物の展開が、新たな勢いを作るだろうと考えている。

●和歌山県紀ノ川・観音山フルーツガーデン

https://www.kannonyama.com/

〒649-6531 和歌山県紀の川市粉河3186-126
電話: 0120-593-262(フリーダイヤル)

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第78回

「ちょっと一服」のご褒美を、シングルオリジンの抹茶にて。

実は最近「業態開発の限界」を感じている。どんな魅力的な企画内容、それを実現するシェフやスタッフの力量では賄えないほど、時代の早さは、特に都心部においては、異常な速さで進む傾向があり、多くの新規出店数を見ながらも、それに伴い、ひっそりと閉店していく飲食店もまた、比例するかのように増えているのも事実だ。

さらに、人材不足と呼ばれている昨今においては、新規出店でさえ、出店するための人材確保に追われているのも事実だ。しかし、新規出店は待ってくれない。渋谷や銀座、至る所で新規物件、商業施設のオープンが盛んで、至る所で「新規人材募集!」「新規出店目指しませんか?」という、心躍る言葉を見かけるに、新規出店もさることながら、そもそも新規出店へのあり方、仕組み作りが急務ではないかと検討している。実は来年夏に都心で検討しているのが「キュレーションレストラン」という仕組みを使った飲食業態を作ろうと考えている。その業態の根幹は「飲食人材の働き方」について特化した内容にするつもりだ。

朝から晩まで、厨房で腕をふるうのではなく、食材自体がどれだけ価値があり、次の世代に残していくべきかを考え、その作り手たちを応援し、自らも成長できる、そんな業態を作りたいと考えている。それはメニュー構成や料理人の力量だけではない。あくまでもレストランオーナーとしての役割が変わりつつあるのだと僕は思っている。そのレストランオーナーの立ち位置が変わるタイミングであると、感じているのだ。

前置きが長くなったが、今回ご紹介するお店は、100%宇治産、シングルオリジンの抹茶を提供する「IPPUKU & MATCHA」だ。僕は「業態開発の限界」という問題点について、一石を投じる店舗開発、そして、「シングルオリジンの抹茶」を提供する、とても「日本らしい」提案であると感じたからだ。

オーナーの佐藤氏は、元々カフェ展開を手がける企業にお勤めの後、かの東京タワーの麓に「タワシタ」という会員制レストランの「走り」を手がけたレストランオーナーである。彼が、このお店を手がける2年前ほど、江戸切子のグラスを拝見させていただき、「一般にほとんど流通しないシングルオリジンの抹茶を飲んだことがありますか? それを飲むような場所を、東京のど真ん中に提案したい」という野望を聞いた。

まさに野望で、そもそもシングルオリジンで抹茶を提供するために、抹茶自体を手に入れることができるのか? はたまた、その界隈にある「抹茶カフェ」のようなお店を作りたいのか? といろいろと妄想しながら、今年完成した「IPPUKU & MATCHA」に訪問した時に、その思いをギュッと詰め込んで、たった6坪のお店に入れ込んだ度胸と、細部へのこだわりが、とても素晴らしかった。

抹茶は、合組(ブレンド)せず、品種の違いを楽しむことができるシングルオリジン。400年以上続く手摘みで生まれた茶葉は、収穫量もごくわずか。つまり「旬」を感じる抹茶をいただくことが可能で、単一品種、単一茶園の生産者の顔が見える抹茶にチャレンジしているのだ。そして宇治抹茶の伝統を踏まえつつ、新たな価値観を創出するため、これまでセレモニー要素が高い「抹茶」にフォーカスしつつも、その作法に囚われない新しい楽しみ方を考えている。

そしてその楽しみ方を最大限にする方法の一つとして、彼らは「抹茶専用の江戸切子グラス」をわざわざ職人に作らせているのだ。抹茶自体の美しい色、さわやかな豊潤な香り(実はぜひお店で感じていただきたいのだが、ここの抹茶の素晴らしさは「香り」だ。)そして深く豊かな味わいを提供する演出の一つとなっているのだ。

その一杯をいただく、極上のスペースとして、店舗奥にある「茶室」があるのだが、その壁面の細やかな土壁は、稀代の左官、挾土秀平氏のオリジナルで、その色質が半端なく上品だ。そして、ガラスの茶釜(!まさにアート作品だ)が、提供される抹茶のクオリティをさらに押し上げている。いずれにせよ、演出もさることながら、「深堀」されているサービスを目の当たりに感じたのだ。いわゆる企画性が高い飲食店ではなく、熟知されて生み出された飲食店であることは間違いない。

このお店の作り方に、2020年以降の飲食店、あるいは外食の作り方の一端ではないかと感じている。もっというと、こうしたこだわり抜いた飲食店がやがて増えていくが、その業態が持つ歴史、価値観、そこに携わる生産者から作り手まで、一環としたブランディングの必要性を感じた。なにより「事業主自身のこだわり」に心が熱くなったのだ。もちろん一人の力では限界があるが、腕利きのオーナーシェフのお店づくりではなく、飲食を知り尽くしたレストランオーナーの必要性だ。このオーナーの存在はやがて稀有な存在になるだろう。単純なフランチャイズ展開や、多店舗展開ではなく、いかにこだわり抜いた業態を幾年も提供できる仕組みを作ることができるのか。時代の早さに応じていくには、このレストランオーナーの体力、瞬発力、そして理解力が試されている。

●IPPUKU &MATCHA 日本橋店

https://ippukuandmatcha.jp/

〒103-0022 東京都中央区日本橋室町2丁目1−1 日本橋三井タワー 1階

03-6262-3224

営業時間 08:30-20:00 定休日無

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第77回

広島から1時間。離島で生まれた国産レモンを収穫へ。

広島駅から車に乗って小一時間。竹原という港に朝早くついた。ここから、広島の離島である「大崎上島」に向かうフェリーが出ている。車も搬入でき、いわゆる「通勤可能な離島」だ。この離島に向かうのは、2010年から大崎上島でレモンやミカンを育てている農家、佐々木司氏に出会うためだ。佐々木氏は、主にレモンをはじめとした柑橘、そしてブルーベリーを主に収穫し、広島市内の飲食店や、私たち、八百屋を経営していた業者に商品を卸している。今回、広島市内で私がお手伝いさせていただいている飲食店のドリンクメニューに、国産レモンをつかった商品を提案することとなり、佐々木氏の柑橘を使ったアルコールドリンクとノンアルコールドリンクを提供することとなったのだ。この機会にぜひお会いしたいと思い、わざわざ車を借りて、早朝から収穫のお手伝いに出向いたのだ。

船に揺られて20分、僕は大崎上島、白水港についた。そこには佐々木氏が出迎えてくれて、佐々木氏の奥様とともに「ここからレモン畑に向かうので、付いてきて」と、島を横断して15分。着いたのは閑静な住宅街。

佐々木氏は準備が済むと、おもむろに、住宅に囲われた場所の柵を外し、中に入り込んだ。そこには、たわわに実った「青いレモン畑」があった。佐々木氏は「松田くんも一緒に収穫して、それを広島に持ち帰るのがよい」ということで一緒に30分ばかり、20キロ相当のレモンを佐々木夫妻と収穫することになった。

「青いレモン? 普通、レモンって黄色だよね?」と首を傾げている人も少なくないと思う。実はレモンの実(み)は「緑色」ということをご存知でしょうか?レモンの木は、熟すと緑色の実を結び、その実が成熟するごとにだんだんと色が薄くなり、最後にようやく黄色へと変わるのです。

といっても、ひと昔前までは、スーパーや八百屋に並ぶレモンのほとんどが輸入レモン。日本に入ってくるまでに完全に熟されて黄色くなったものしか目にしないのですから、当然、「レモン=黄色」という思い込みが生まれても不思議ではありません。

レモンの輸入が自由化される1964年以前は、日本でも多くの農家がレモンを栽培していました。レモン農家のほとんどが小さな家族経営だったので、海外から大量に安価な価格でレモンが入るようになると、割高な国産レモンでは太刀打ちできなくなり、栽培を断念せざるをえない状況に追い込まれたのです。

ところが、近年世界的なオーガニックやナチュラルフードブームにより、日本人の「食」へ対する意識も一気に高まり、時代がより安全な食を求めるようになるとともに、レモンをめぐる状況にも変化が見られています。ここ数年で、スーパーの棚にもごく当たり前に「国産レモン」が並ぶようになりました。輸入レモンは輸送時間の影響で色が変わるだけでなく、輸送中の腐敗を防ぐため必須とされる防腐剤も、日本では使用禁止とされているような強い薬が使われることも多く、しばしば問題視されています。

また、栽培時にどんな殺虫剤や化学肥料が使われているのかよくわからないという不安もあります。それに対して、国産レモンは「食べ頃は収穫してからすぐ」であり、かつそのタイミングで出荷できるので、輸入物とは異なり、防腐剤やワックスを使用せずに消費者の手に届けられます。(もちろん、送料や手間が上がるので。輸入物より3-4倍の価格はするでしょう。)

加えて、作り手の顔がちゃんと見えるというのもポイントで、この「信頼性と、輸入レモンにはない風味の豊かさ」が国産レモンの魅力で、徐々に支持が高まってきているというわけです。

佐々木氏は、もともとは、東北の米農家の次男坊。現在50代半ば、サラリーマンを辞め、2010年にこの島に移住して来ました。佐々木氏自身、就農するなら、最低のスタートラインは「農薬、殺菌剤 除草剤 化学肥料は一切使わないこと」と固く決心。トレーサビリティのしっかりした物を使用する。今後の目標は土壌を整え、無肥料で柑橘を育てること。僕らはその気構えに共感し、国産レモンの農家として、 仕入れさせていただいている。果物をできるだけ農薬を使わずに、そして無肥料で育てるのは大層な事です。しかしそこで育てられた果実の完成度は、抜群。鼻を近づけるだけで、レモンの酸っぱい香りが、強烈にそしてシンプルに嗅ぐことができます。

今回特別に、国産レモンの他に「すだち」や「ミカン」の畑も見させていただきました。「すだち」は香りがよく、見た目も小さくて、それでいてジューシー。お菓子はもちろん、使い方を工夫して、ドリンクにも提供しやすい。早速広島に持ち帰り、酎ハイあたりで使ってみようかと思う。そして小さな「小みかん」を多くいただいた。あまり美味しいので、これは広島に持ち替えらずに、東京に送ることとした(笑)。今も食べているが、少しずつ黄色くなってきている。

柑橘は、10月からスタートし、来春まで続く商品だ。温州みかんを始め、レモン、シークワーサー、ポンカン、ネーブル、はるか、そしてデコポンへと品を変えて徐々に出てくる。もちろん、多くはこしらえてはいないが、佐々木氏の果物は、とても良い状態だ。

この大崎上島、そして近くには「岩城(いわき)島」など、同じくレモンの産地が多い箇所だ。瀬戸内という温暖で柑橘系の栽培に適した島々がおおいのも、今のように国産レモンが注目を集めるようになるずっと前から、安全で美味しいレモン作りにこだわり、露地やハウス栽培でレモンを育てている。もちろん、佐々木氏のように、他県出身者が多いというのもポイントだ。こうしたIターンの受け入れをはじめ、様々な新しい試みを積極的に行っているのも離島ならではの利点なのかもしれない。

●佐々木氏のホームページ

農粋(のうすい)つかさ庵 https://tsukasa-an.jimdo.com/

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第76回

廻船問屋が、ひょんなことから、300年続くお味噌屋に。

まず、2019年9月9日に関東地方を襲った台風15号により、特に千葉県では、数多くの住宅に被害が出ました。また停電箇所も多く、大変な事態になったと思います。なにより、引き続き大きな被害にならないようお祈りいたします。

****

9月の大型連休を挟み、私は和歌山県御坊市に足を運んだ。向かった先は「三ツ星醤油 徑山寺(きんざんじ)味噌 堀河屋野村」だ。訪ねたのは、現在次期十八代目として店を引っ張っている野村圭佑氏。大学卒業後、大手商社に就職し、担当になったのは、幼い頃から身近だった「大豆」の取引だった。大豆は海外市場において、人間が直接口にするものではなく、「油を搾るための種子」という位置付けだった。一方、日本では国内で大豆を食品用(豆腐、味噌、醤油など)として育て、直接食べる。

「大半の日本人はこの大豆文化に気付かず、輸入すれば容易に手に入ると思っている。また自らの家業でもある醤油作りに目を転じると、醤油として販売されているものの8割以上が『脱脂加工大豆』と呼ばれる大豆の絞り粕を原料にしている。それは醤油ではない。」野村氏はそう話すと、永く続く自らの家業を、自分の道と決め、和歌山に戻ってきたのである。

その堀河屋の醤油、味噌作りのスタートは、ひょんなことだった。

もともと和歌山は「紀州」と呼ばれる地域であり、堀河屋野村が家業を始めたとされる1688年(元禄元年)は、徳川時代真っ盛りの時期。特に紀州は「徳川御三家」の由緒ある地域で、「紀州廻船」とよばれる船を使った流通を使い、江戸(東京)に材木などを運ぶ要所であった。そして堀河屋も「紀州廻船」の末裔。野村氏が現代の流通をリードする商社に入ったのも、なにか縁があったかもしれない。

1756年、その堀河屋野村の船が江戸へ荷物を運んだ帰りに、大波にさらわれ、伊勢沖で流されてしまう。そこから3ヶ月漂流し、なんと北海道択捉に漂着するのだ。そこでアイヌ人に助けられ、命からがら陸路を経て、江戸に戻り、1年後、堀河屋の船員は地元紀州に戻ることになる。紀州藩の荷物を江戸に運ぶ役割の一廻船問屋の事故。信用を失った堀河屋は家業の業態を変えることを余儀無くされる。貸金業やロウソク商、いくつかの商いの中に醤油・味噌製造業があった。廻船問屋時代、江戸の紀州藩の方々に手土産として作っていたのを家業の一つとしたわけだ。

しかし、なぜこの地に醤油と味噌が存在していたのだろうか。

実は紀州、もう一つ大きなルーツがある。それは「味噌」「醤油」が生まれた場所なのである。紀州日高郡由良町にある「興国寺(こうこくじ)」には、覚心(かくしん)という和尚がいた。彼は、高野山で修行後、宋(中国)に渡り、禅の教えと、その修行の中で、寺の食事で用いられる「徑山寺(きんざんじ)味噌」を学び、紀州興国寺に持ち帰ったと言われている。その製造の試行錯誤の中から、偶然にも重宝されるようになったのが、醤油の原型となったと言われている。そうした1禅僧の教えが、日本の発酵文化の根幹を生み出したのである。

覚心の持ち帰った製法こそ、堀河屋のモノづくりの原点。原料となる北海道産丸大豆の煮蒸しから、醤油の火入れまで、大きな鉄鍋をつかい薪火で行うこと。麹作りは機械を使わず、すべて「手麹」と呼ばれる手作業のみでおこなっているのだ。もちろん「木桶」で天然の環境で発酵を促す。まさにタイムスリップしたような時が流れていた。

この工程で私が感じたのは、特に発酵させる手法などをみると、どことなく日本酒の酒蔵に近い内容だった。それは「手作り」と、その手作りが生み出す「従順たる反復行為=ノウハウ」が蓄積されている印象を受けた。この堀河屋は10月から5月の7ヶ月で、70回もの手作業の麹作りを重ねて、今もなお日本全国にお届けしている体制を10名ばかりのスタッフで担っていることが、その商品を小売りしている自分たちも、改めて頭が下がる思いだった。

さっそく徑山寺(きんざんじ)味噌を試食させていただいた。まず大きく他の味噌とは異なる部分は、味噌の中に具材として4種類の夏野菜(瓜、ナス、紫蘇(しそ)、生姜)が入っている。味噌は、「調味料」として扱われるのが特徴で、「米、大豆、塩」が原材料ではあるが、堀河屋野村が仕込んでいる味噌は、一緒に仕込まれている4種類の野菜が肝になっている。また夏野菜ということもあり、6−8月が醸造時期であり、堀河屋野村としては「旬の味噌」を代々こしらえているのだ。

「僕らが作る味噌は、もしかしたら『熟成野菜』なのかもしれない」。そう語る野村氏の言葉と、試食した味噌の風体は、4種類の夏野菜を発酵させて生み出した熟成野菜の味わいだ。香りは香ばしく、野菜独自の甘みと酸味が感じられ、「酒のあて」「つまみ」のような感覚で、味噌本体をパクパク食べられる、愛おしい存在であり、いわゆる「天然醸造」の発酵食品だという認識を得た。

***

この発酵食品を継ぎ、続いてきた300年の歴史をどのように次の世代につないでいくのかを野村氏と話をさせていただいた。今回その話として私が感じたのは「ストーリー」と、その発酵食材を作る会社としての「経営手法」にあると感じている。

ストーリーにおいては、その「地域性」とその商材含め生まれ得る「タイミング」。廻船問屋が、そのころ「よし、味噌を作るぞ!」「この味噌が生まれると経済が変わるぞ!」というイノベーションやベンチャー気質から生まれたのではなく、「こうして感謝し、色々な人に支えられて紀州に戻ってこれた。できるだけ感謝の気持ちを忘れないように」という自然体から生まれた商材であること。そして、その気持ちを守り300年続いているという存在自体を忘れず、おごらず、手作り視点を維持しながら経営を続けていること。この2つの要素が「老舗」のポジションであり、続けていかなければならないという気質を生み出しているのだと思う。

このお店は店舗展開も数多くしないし、かといって工業化されて工場で生産されていく商品でもないと感じている。その行為が発生した場合、まったく道筋が変わり、これまでの「ストーリー」「経営」の変化に襲われるであろう。けれど、十八代目野村圭佑氏からは、その感覚は、全く感じられず、むしろその「ストーリー」と「経営手法」は間違いないプライドを感じられて頼もしく感じた。

「事業継続」「M&A」「後継者不足」。いまある事業が、次の世の中に残していく、続けていくことの重要性は、いま日本において大切なことだが、その事業を継続していく「ストーリー」と「経営手法」がどこにあるのか、ルーツはなんなのかを探り、守らなければならない。例えばブランディングという言葉もあるが、その根源は足元にあり、その事業に立ち続けようとする意思がある人間に答えがあり、新しい言葉や手法は限界があり、極論必要はないのだ。堀河屋野村で感じたこの意味は大きい。

堀河屋野村:http://www.horikawaya.com/

三ツ星醤油:http://horikawaya.ocnk.net/product-list/14

徑山寺(きんざんじ)味噌:http://horikawaya.ocnk.net/product-list/7

 

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第75回

中国・深圳から見えた、日本食レストランたちの挑戦。

最近もっぱら自分の視点として、日本地域を踏まえつつ、2020年以降、どんな 「和食スタイル」に進んでいくのかを探りに、海外視察が増えている。先日中国は「深圳(しんせん)」という地域に足を運んだ。

いま深圳は、中国でも北京、上海などに続く「5大都市」の一つと掲げられた、中国でも重要な都市の一つだ。最寄り「福田口岸」駅から車で20分の距離に都市型複合商業施設「深業上城— Shenzhen UpperHills(シンセン アッパーヒルズ)」が2018年にオープン、その一角に、日本食レストラン、カフェが一気に16店舗生まれた「YOKOCHO(横丁)」を訪ねた。

YOKOCHOの敷地面積はおおよそ3000平米。シンガポールを拠点にレストラン運営などを手掛けるPJビジョナリーと、香港上場のニラク・ジー・シー・ホールディングスが組み、三菱地所が外部コンサルタントとして飲食店を誘致したもの。構想は日本食のレストランを配置するため、3年以上に及んだとのこと。レイアウトや環境・共用部の設計を手掛けたは、インテリアデザイナーの巨匠佐藤一郎氏。各レストランの境界線は、微妙に「にじり出し」、他のお店にいながら隣の飲食店のメニューも頼める「日本らしい」提案がなされている。それでいて、日本人にとっては非常に過ごしやすい空間だ。

おおむね、「プレミアム・ハイエンド・ゾーン」「ミッドレンジ・レストラン」「カジュアル・カフェ・ティハウス」とコンセプトにわけてレストランが配置。ミシュランを獲得している焼き鳥「GINZA BIRD LAND」や、日本では「アロマフレスカ」で有名、原口慎次氏がプロデュースするイタリアン「東京イタリアン Sala Amabile 意居 Tokyo Italian」、また「月桂冠」がサポートする日本酒バー「5/60 Sake Bar」、「ご当地酒場 北海道八雲」を作り上げたファンファンクションプロデュースの「北の炉端」など、日本が展開する料理屋において、あらゆるジャンルのお客様に対応するため、様々な業態の飲食店が軒並み、展開している。

7月8日にグランドオープニングイベントが開催され、現在は、この商業施設の、他のテナントのオープン状況も含め、徐々に集客を進めているようだ。

僕はその中で「北の炉端」で食事する機会を得た。主に、北海道や東北の食材をメインにしたメニューが特徴の居酒屋ではあるが、中国の場所で提供する日本食レストランのクオリティとしては、非常に高い印象だ。そして、提供されたメニューの中で、特に印象にのこったのが、北海道名物である「北海道ちゃんちゃん焼き」だ。北海道の郷土料理で、味噌とバターのコクが病みつきになり、これに白米があれば、お代わりが止まらない、そんなメニューをこの中国・深圳でどんな提案か気になった。

オーダーして出てきたのは、五寸(15-16センチ)ほどの黒鍋に、紅シャケがのった、鍋料理だった。その鍋料理を、スタッフが丁寧に調理して提供するスタイルだった。

しかし、この鍋に火を入れて、グツグツと煮込まれてきたら、そこに、少し辛めの味噌と合わせて、お鍋に投入。そしてバターが溶け出すと、鍋に敷かれていた「つゆ」が少し甘口で、(どことなく、「すき焼き風味」だが)、そのバターとの絡みが抜群にうまいのである。その他、メニューも東京で食べるものと遜色のない出来栄えで、正直、驚いた。確実にメニュー内容や、提供サービスの質は上がっている。オープンして間も無くということもあり、まだまだ集客もままならないと聞いているが、新たに地下鉄も通る構想も控えており、相変わらずの中国の「開発スピード」からすれば、早い展開が臨まれるだろう。いずれにせよ、2、3年で大きく変わるテナントであり、エリアのひとつであることは、間違いない。

ここ最近、日本以外の「日本食レストラン」の展開は目をみはるものがある。特にアジアの展開や発展はここ2、3年で一気に広がり、流行ではなく、文化として広がりが見えつつある印象だ。また、日本のレストランのオーナーやシェフの「コミュニケーション力」が上がっている印象を受けた。それは経営としての展開力だけではなく、その土地先のスタッフの教育や展開力も上がりつつある。それがレストランのクオリティを下げずに、良いものとして「日本食レストラン」の展開力を上げているとおもう。「和食スタイル」が日本を超えて海外に向けてどのように発信していっているのか、僕自身も引き続き学んでいきたいと思う。

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第74回

薪火料5%、鎌倉に生まれた薪火調理の和懐石風アメリカン料理屋『季音』

 

お店の名前は「季音」と書いて「Kinon(きのん)」と言います。このお店の名前はここのお店のシェフ、村野敏和(むらの・としかず)さんのお子さん、お二人の名前がはいっているそうです。その「柔らかく、音感覚のような店名」なのですが、お店はがっつりアメリカン(笑い)。そして、わざわざ店外の壁を這わせて、建物屋上まで伸ばしきった排気口のダクトがすごいくらい、素晴らしい薪焼き場が存在する、カウンターのみ8席の「ごつい」感じなのだ。

メラメラと、細やかな見た目の一方、肉、魚、野菜に、じわっと我慢強く火入れをおこなう薪火。「実は、いきなり大きな薪木には火は点かなくて、小さな木々から少しずつ燃やし、そこから2、3段階に分けて木の大きさを変えながら、火をうつしていきます。熱すぎても火入れが難しいので、この火入れが1日の大きな仕事です。」と村野さん。カウンターに座るとじわっと、薪火の暖かさを感じる。

料理のラインアップはコース一本。鎌倉野菜や相模湾長井漁港の魚介を薪火で火入れした、サンフランシスコの現代風アメリカ料理を提供するスタイル。薪が生み出す独自の味わいと、見ているだけで温かな気持ちになれる炎のゆらぎを鑑賞しながら、カウンターで食するのが自慢だ。

そもそもなぜ「アメリカン」なのかというところだが、実はこのお店を出店する前に村野さんが勤めていたお店は、アメリカ・サンフランシスコにあるミシュラン三つ星のフレンチレストラン「Saison(以下セゾン)」なのだ。セゾンのシェフ、ジョシュア・スキーンズさんは、フロリダ州出身。ニューヨークの料理学校を出てボストンで働いたあと、サンフランシスコにやって来て、シリコンバレーの「一つ星」CHez TJでシェフを務めたころから、注目の御仁。

そのジョシュア・スキーンズさんが、セゾンで出したレストランの特長は、「和」のイメージ。材料も日本で活用する「あわび」や「松茸」が登場したり、調理法も「茶碗蒸し」や「焼き魚」があったりと、和・懐石風なんです。それでもフレンチが基調となっているので、前半は和、後半はフレンチと、和洋折衷のコース仕立てになっているのが特徴。そのメニュー構成ふくめ、村野さんは現地で修行し、鎌倉にお店を構えることになったのです。

そして村野さんがこだわったのが、前述したアメリカ仕込みの「薪火での調理」です。薪が与える繊細な燻香が一番の魅力で、日本の食材のみずみずしさを保ちつつ風味を効率よく凝縮させる点も優れています。

薪火はオーブンのように温度や時間をセットすることができません。火の強弱はその時々で変わり、火入れは自ずと不均一になります。でもそこを村野さんが操り、薪火の魅力、ガスの火では出せない味わいを提供しています。焦がし具合、燻し具合など、料理人の技量と経験、個性がそのまま料理に反映されます。

特に、いただいた牛ステーキは抜群の火入れ。特に赤身のお肉ということもあり、肉汁がじわっとにじみ出てきて、添えつけのナスに染み込み、これまたうまい味わいになるのです。

2019年8月にオープンしたばかりのお店。8席しかないので、予約は必須。現在村野さんが料理からドリンクまで1名でディナー時間帯は対応しています。一つ一つこだわった提供方法、料理の中身など、ぜひご堪能いただけると嬉しいです。

ちなみに、お会計時、不思議な表記が、「薪火料5%」。

村野さん曰く「こだわりの薪火だけど、やはりガスやオーブンと比較するとよりコストがかかるのが現状です。そこでこのように薪火料を設けさせていただいております。」とのこと。

しかし、この薪火はぜひチェックすべきだ。

●季音 -Kinon-

http://kinon-kamakura.com
住所    :〒248-0012 神奈川県鎌倉市御成町13-22
T E L   :0467-39-5091
E-Mail  :reservation@kinon-kamakura.com
定休日  :日曜日・第2/第4月曜日
ランチ  :11:30-14:30 (L.O 13:00)/木、金、土曜日のみ
ディナー:18:00- (L.O 19:30)

別途 薪火料5%+消費税

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第73回

ネクスト ヴィーガンスタイルは和食×ハワイから生まれる。

あっという間に梅雨が明け、この関東・東京では毎日35度を超えるような暑さとなり、クーラーを欠かせない夏が到来している。うだるような日照りが続く真夏日をよそに、ちょっと気分転換にハワイに出かけてきた、、、、、というのも夏休みではない。

実は、2019年11月1日。渋谷駅直上に「渋谷スクランブルスクエア」が誕生するのが7月4日に発表となったが、「世界最旬宣言」というコンセプトのもと、地下2階「TOKYU FoodShow EDGE」の中に、日本初出店、ハワイの地元グルメアワードやグルメランキング1位など数々の受賞実績を持つ大人気ヴィーガンカフェ「Peace Cafe Hawaii(ピースカフェハワイ)」 が食物販・ハワイデリ業態にてオープン、弊社がオープンにまつわる事業作りならびに運営のお手伝いを担うことになった。お話をいただいてからおおよそ1年半。ハワイにある「Peace Cafe(ピースカフェ)」は地元でも大変人気。彩りも華やかなデリの数々やスムージーなど、「美味しい!楽しい!ヘルシー!」をコンセプトに、体に優しく安心して召しあがれる“100% Plant-based”のヘルシーなデリ&スイーツを提供します。

実はお店のオーナーは日本人で、かつ日本料理を作られる寺井将太さんだ。寺井さんは元々東京都内の和食飲食店で修行の元、ハワイに移住。Peace cafeの経営権を取得、現在に至ります。今回は、横浜で不動産事業を展開している谷川商店のプロデュースのもと、私たちは、新規事業のお手伝いを、この「和×ヴィーガン」の掛け合わせ、プラス「渋谷」という流行のど真ん中で戦おうとしています。

昨年より弊社スタッフが先行してPeace Cafeのメニュー開発を進めていた中で、プロモーション用の写真撮影が急遽必要となり、それでハワイに行ってきたのだが、僕自身が感じる「ヴィーガン」への感覚、つまりその「気構え」が、今回Peace Cafeの食事を摂ることで大きく変わった。

僕らが基本的に感じているヴィーガンの捉え方として、「完全菜食主義者(もっとわかりやすく言うと、「酪農製品(卵・牛乳・チーズなどの乳製品)を食べないベジタリアン」であり、そのため、肉や魚はもちろん、卵、チーズ、バター類、はちみつ、ゼラチンなども一切口にしないのです。なぜなら卵や乳製品は、それを生み出す鶏や牛を苦しめたり、早すぎる死をもたらしたりするものだからであり、ヴィーガンという生き方の根底にあるのは動物愛護の精神であり、ここが健康志向から生まれたベジタリアンとの大きな違いなのです。どちらかというととても「ストイック」な方向性だ。だから食べる食材も限られている。けれど、Peace Cafe の捉え方は「日本料理」でそのヴィーガンを捉えているのだ。

例えば、こちら「蕎麦ランチセット」。日本の蕎麦定食のようなものだ。それが、ヴィーガンという視点から作られてくると、「アメリカンナイズ」された蕎麦定食になっており、比較的日本人の僕らでは当たり前の食事だが、ハワイを含めたアメリカン人にとっては、紛れもなく「ヴィーガン食」であることは間違いない。

また、こちらのデザート「Mochi Cake(餅ケーキ)」は、パウンドの代わりに餅をベースにしたケーキで、歯ごたえは餅、甘さはそのままケーキであり、僕らにとっては「和菓子のヴィーガン化」だ。それでいて、味は洋風ケーキの特徴を生かし、それこそ「ハワイアン」テイストで仕上がっている。

もちろんスタンダードな、ハワイアンヴィーガンのラインナップも外せない。どれも、単純なサラダではなく、豆腐や、大豆を使った商品、そして、ひよこ豆をペースト状で使った「フムス」なども、実はベースが日本料理になっており、日本人の舌に合う料理に仕上がっている。この料理がハワイでも人気で、ヴィーガンの新たな一手として注目を浴びているのだ。

僕は非常にこのプロジェクトに感化された。場合によっては、日本の地域、特に「郷土料理」に近い存在の料理が「ハワイ化」し、それが逆輸入された形で渋谷のど真ん中に戻ってきている。まさに「今風」であり、いよいよネクストヴィーガンスタイルが「日本料理」を通じて、新たな一歩を作り上げようとしている。

そして何より、「ハワイ」という「地域性」「土地性」「風土」が、ポジティブで明るい要素を担っているのが新鮮だった。先ほどストイック、という言葉を使ったが、ハワイで培われたこの「和のヴィーガン」は「底抜けに明るい」「根明」であることが特徴で、料理の良さを引っ張っている。単純な和風料理だとしたら、すぐに飽きられるだろう。だけど、この明るさが、その和風の良さと、なによりヴィーガンをこうやって伝えていこうという「ポリシー」が、とても共感できるし、なにより出店場所である渋谷に似合うと感じている。

11月1日。この真夏が過ぎ、初冬を迎える時期に、暖かく、そして明るいハワイの、ヴィーガンスタイルのデリ業態が渋谷にオープンします。

Peace Cafe ハワイ本店 https://www.peacecafehawaii.com/

Peace Cafe Hawaii 東京 https://www.peacecafehawaii.jp/

(※ comとjpで内容が異なりますので、ご注意ください)

 

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第72回

フランスの食卓に、味噌が受け入れられる時代へ

さて、前回台東区谷中にオープンした発酵食品を使ったお店「HAKKODO」。おかげさまで、焼きおにぎりが大人気。当初より販売が順調だったが、一方で、たくさん作れば作るほど、お店の負担も増加。クオリティも下げてしまうということもあり、早速調整をはかり、「個数限定」「日数限定」とさせていただくことになりました。

もちろん、お店としては、より多くのお客様に対応していこうという気持ちではありますが、だからと言って、とことんお出しするということは、スタッフ含め労働作業が増えてしまい「伝えたいこと」よりも「お店を運営すること」の方が強くなっていく原因になります。ですからお店の主旨を見失うのでは、という結論に達したことにより、限定での提供となりました。あたたかく見守っていただければと思います。僕らもより発酵食品に向き合う時間を作りつつ、「売ること」より「伝えること」を大切にしたいと考えています。

その「伝えること」ですが、2019年度も、北海道味噌醤油工業協同組合とともに、海外展開を主旨とした事業をお手伝いすることになりました。今年も中国を主軸に、北海道の美味しい味噌をどのようにお届けするかを、引き続き考えておりますが、ちょうど別のプロジェクトでお世話になっている、東京港区「フレンチ割烹 ドミニク・コルビ」の店主、ドミニク・コルビシェフから「今度、フランス婦人会で、味噌のワークショップをするから見にこない?」というお誘いをいただき、「フランス婦人に味噌!?」ということで興味が湧き、出かけることとしました。

まず、ドミニクシェフは、400年の歴史がある、パリの名店「トゥールダルジャン」の東京店のエグゼクティブシェフとして来日。そこからル・コルドン・ブルー日本校のエグゼクティブシェフに就任、今は、港区でフランス料理を割烹形式で提供(これはまた後日紹介します!)している、フレンチシェフの大御所だ。そのドミニクシェフが、フランスから東京に移住もしくは転勤でお越しになるフランス人の、奥様を対象に、不定期で料理教室を開いている。

その中で、今回のテーマは「味噌」だったのだ。僕としては、「味噌」という日本の発酵食品がどの程度、興味を持って、フランスの家庭で提供されるのか、もしくは興味を持ってくれるのかが気になっていた。

しかし、料理教室でとても驚いたのが、いわゆる日本食を提供する味噌料理ではなく、フランスの家庭料理の中の調味料が「味噌化」したレシピがドミニクシェフからの提案だったことだ。それが「味噌マヨネーズ」「味噌ピザ」「味噌カツレツ」だった。

味もさることながら、味噌を「調味料」として活用し、フランスの食卓に「馴染むような」提案をしているのが、非常に勉強になった。さらに、それぞれの食材や調味料が「味噌」と合わさったり、交わることで、新たな「味覚」を提供していることが新鮮だった。そして、もう一つの驚きが、「お土産」だった。もちろん味噌は味噌だったのだが、化粧品会社が製造元になっている味噌、「アムリターラ農園 自然栽培味噌 蔵付き麹菌仕込み」だった。

フランス婦人たちにも好評。単に日本の調味料だけではない付加価値がそこに存在していた。まさか、化粧品会社の味噌が大人気。最近では、味噌にまつわる健康情報も多くなってきているのは事実だが、美容や健康をメインとしている化粧品会社の商品展開力は、北海道味噌とは異なる展開だ。

つまり「情報の伝わり方」がデザインされているのだ。もちろん、日本の醸造文化や伝統、歴史というのは深く、そして「老舗」と呼ばれるくらい長く継続された事業であり、その味を守るために、職人が働き、その味を守っているのが「味噌」である。醤油も日本酒も同様だ。

話が戻るが、ドミニクシェフの提案も素晴らしい。たかがマヨネーズ、ピザかもしれない。けれども、彼らの食卓の主食、つまり普段のレシピに沿った提案がレシピ化されているのが、「気が利く提案」だと感じた。

僕らは中国やヨーロッパの食卓をいかにイメージして、「味噌」を提案できているのかが、改めて問い直すきっかけではないかと考えた。確かに、現在は、日本食レストランが、世界的に「爆発的」に増加している。農林水産省のデータから、2006年24,000店だった日本食レストランが、2017年で、12万件まで増えている。10年で5倍だ。ものすごい数である。そのお店に対応する施策を検討していたが、いかに、その国の食卓を攻めれるか、というところは目から鱗の出来事だった。

もちろん、可能性としての提案は多いと思うし、その認知のなかで「理解度」を高めていくことは、非常に大切だと考えている。フランスの食卓に、味噌が受け入れられる時代へ、きっかけを作っていきたい。

[参考]

・フレンチ割烹 ドミニク・コルビ

http://dominique-corby.com/

東京都港区新橋2-15-13 エレガンス新橋ビル5F

 

・国産のオーガニック化粧品・サプリメント・オーガニック食材を扱う

「アムリターラ」公式サイト、フード&ドリンク

https://www.amritara.com/fs/amritara/c/food?headerpc

 

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第71回

「はっ」とするおいしさを、「はっ」とする物語とともに。

梅雨という季節を、久しぶりに感じておりますが、昨今の天気は度合いが大きく、一気に雨が降ったり、ずーっと暑いまま晴天だったりと不安定な状況が続きます。

先日、少しだけ「焼きおにぎり」の商品開発のお話をさせていただきましたが、そのお店が、7月9日(火)に東京都台東区谷中「谷中銀座」に無事にオープンしました。その名も、おいしい発酵と出会う店「HAKKODO(はっこうどう)」です。

発酵の「はっ」の字を「もこもこ」「もりもり」のタイポグラフィで形づくり、酵母や細菌たちが醸す様に見立て、マークとなったロゴマークが特徴的です。

日本中から取り寄せた、こだわり抜いて作られた本物の発酵素材、例えば醤油、味噌、塩こうじ、醤油こうじ、鰹節などを使ってお店で焼き上げた焼きむすびと、フルーツビネガーや甘酒、和紅茶などのドリンクを販売しています。

焼きおにぎりの商品名は4つ、「ねこまんま」「バタまんま」「チーまんま」「しおまんま」です。そのうち、「猫の街」と言われるくらい、その界隈で多く暮らしている(?)猫が多い谷中銀座からもじったもので、猫の大好きな「かつおぶし」がどさっとかかり、「醤油」と「みりん」でこんがり焼きあがった「ねこまんま」が、1番の人気です。その他も、すべての商品に発酵素材が使われていて、どの素材も手間ひまかけてつくられたものばかりです。

このお店を弊社が手伝うことになったこととして、多くの友人と仲間たちによって生み出すことができました。

発酵食品は長い時間をかけて、環境と時間を味方にする途方もなく「面倒くさいプロセス」を乗り越えて産まれます。究極の「思考と面倒くささ」です。でもそうすることによって本物のおいしさと、人間の体にいい影響を与えることができる発酵食品ができるのです。そうした「面倒くささ」が日本の料理のど真ん中にあり、多くの日本食の発展に寄与してきました。

また最近では、西洋料理界に新たな旋風を巻き起こしているのも「発酵」です。従来の調理は加熱が中心でしたが、加熱をしなくても食材自体の風味を変えられるのが発酵の画期的なところであり、たとえば「World Best Restaurant 50’s」において、2018年最も注目を浴びた、東京・飯田橋の「INUA(イヌア)」にもいきましたが、出された食事の中で、調理のポイントが「発酵を扱った料理」が多く、非常に勉強になりました。それだけ注目を浴びているのです。

ただ、料理方法や仕込みの仕方、伝統、価値観を懇切丁寧に教え込む「頭でっかちな」発酵屋ではないし、そこを多く伝えようとは思っていません。また友人らが展開している発酵に関するお店には、まだまだ太刀打ちできるお店のスペックではないと思います。今回提案している「焼きむすび」についても、「え、焼きおにぎりを地味に焼くのか」「それって儲からないんじゃないの?」とか、通常であれば考え付きますが、僕らが考える「作り上げる飲食店」は、儲けもさることながら、お勉強の飲食店でもないということは、自明であり、それ以上に、そうした大事な部分を、もっと「手軽に」お渡しできる「情報」にならないかと思っています。

また中国で、2015年→2017年の2年間で、2万軒の日本食レストランが、4万軒、つまり倍増しました。別途僕がJETROと計画している「味噌」に関わるプロジェクトでも、非常に「日本の食材」の、海外での広がりは大きな市場であり、またどのタイミングで変わりつつあるのかも、刻々と変化していきます。

前置きがだいぶ長くなりましたが、この発酵の「初心者飲食物販店」が、どんな「玄人」になっていくのかがポイントだと思っています。みんなで作り上げるお店だからこそ、飲食の専門家だけではなく、「食に興味がある人間」が関わるのが1番のベストだと、僕は思っています。専門家である必要ありません。そこを事業として回す、教え込むのが僕らの仕事です。

ぜひ一度お店に来てくださいませ! 月曜日が定休日です!

●店舗概要

〒110-0001 東京都台東区谷中3-12-1
Open :11時頃〜18時頃(具材がなくなり次第終了)
Close:月曜(祝日の場合翌日)
京成・JR「日暮里駅」徒歩6分
千代田線「千駄木駅」徒歩6分

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp