和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第67回

令和元年。発酵食品を解いてみる。

令和元年5月1日が明け、10連休、みなさま、いかがお過ごしでしたでしょうか。私は相変わらず日本を飛び回り……というわけではなく、身内の不幸があり、前半はその対応をし、後半は東北を回っておりました。

連休も後半となりますと、たとえば東京駅などのお弁当売り場は少々殺気立っていて「完売です。」の棚が、目立っておりました。多くの方々が、初めての10連休を楽しまれたのではないでしょうか。

さて、連休最終日。私は、とあるプロジェクトのために「おにぎり」の開発をしている現場におりました。

料理研究家の方に、おにぎりレシピの開発を依頼、クライアントの皆さんとともに、そのおにぎりを試食する催しがありました。今回のおにぎりのテーマは「焼きおにぎり」です。みなさん、焼きおにぎりは、食べたことありますか? ここ最近ではコンビニエンスストアでの販売が多く、また小江戸のような、歴史ある地方都市の出店で販売していることもあると思います。けれど、なかなか「焼きおにぎり専門店」というお店を見る機会が少ないですよね。今回の焼きおにぎりにはもう一つテーマを設けておりまして「発酵食品を活用した焼きおにぎり」という商品の開発です。

醤油にお味噌、チーズや西京漬といった、発酵にまつわる東洋、西洋の品物を、ホカホカのおにぎりにまぶし、それを、焼き機を使って、丹念に焼き上げ、「焼きおにぎり」に仕上げていきます。醤油、味噌それぞれ、こんがりとした焼き色と香り、そしてその焼き上がりから醸し出される味わいもよく、もう少しブラッシュアップすることで、良い商品が生まれそうです。また、そうした発酵食品を掛け合わせながら、これまでにはない商品開発ができそうです。この発酵食品については、こだわりの商品ほど、特徴が出やすいのは確かなのですが、いかんせん、目標としているお客様提供額=販売価格が見合うかどうかというところがポイントになります。みなさん、「焼きおにぎりの価格帯」はいくらぐらいで考えていますか?100円?200円?例えば「発酵」というキーワードとともに、その付加価値ふくめて1個あたり300円、400円という数字が出てきた場合、どのくらい納得して購入されますでしょうか? 「それくらいはわかってほしいな」「いかんせん、焼きおにぎりの提供額ではないよね」という声がそれぞれ聞こえてきそうですが、単に原価計算し、そこに販売価格を計上するのでは、普通の値高の焼きおにぎりが登場するのが関の山です。とはいえ、単に安くしてしまうとこだわりも出せなくなります。

例えばそのこだわり。ちょうど試食した「味噌チーズ」という写真の商品。とある醸造場の味噌を使い、両面丁寧に焼き上げた後、パルミジャーノレッジャーノチーズを、細かく振りわけまぶしたものです。食べると、チーズの風味とともに、味噌のこってりかつ柔らかい味わいが口の中に広がり、そしてチーズと絡みながら、さらに柔らかく、美味しい味わいに変化していきます。一方で、味噌とチーズの掛け合わせも大事なのですが、大きなところは「発酵食品の気づき」なのだと思います。

発酵にまつわる商品開発の案件は非常に多く、僕たちも「発酵の勉強」をさせていただくことも多いです。けれど、単に焼きおにぎりを開発するだけではなく、「なぜ焼きおにぎりで、発酵で解くか」ということを考えねばならない。焼きおにぎりをきっかけに、食べてもらう人たちに、発酵を通じたきっかけ、気づきを与えることができればと思っているのです。しかし、まずはこの焼きおにぎりが美味しくないと意味がないし、焼きおにぎりが美味しいだけでは、発酵食品の奥深さにはたどり着かない。だからこそ「焼きおにぎりを通じて、発酵が伝わるかどうか」を掘っていきたいと思っています。

僕らの生活において、「焼きおにぎり」はどんな接点を作ってくれるのか。このお店はいま7月オープンをめどに動いております。また追って報告いたします!

 

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp