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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第63回

山陽地方の「UDON BAR」。

最近、仕事の都合上、山陰地方に出張が続くのですが、どうしても出張の次の日の移動を考えると、飛行機の時間が合わずに、泣く泣く高速バスで広島に移動し、翌、早朝に新幹線や飛行機で移動することがあります。

その時、夜遅く広島に着くと、大抵のお店が閉まっていて、なかなか良いお店にたどり着けないのですが、先日、飲食関係の友人のオススメで「夜遅い(二十四時近く)ですが、ぜひ銀山町のうどん屋に行ってみてください」と提案を受けて、早速向かうことにした。

繁華街を通り抜け、目的地までくると、ふと建物の2階に、ひょっこりと「うどん」という提灯がぶら下がっていた。「あれ?2階?」という、うどん屋にしては珍しい立地という点が惹かれるのだが(笑)、実は、よくよく食べた後に調べてみたら、広島に脚を運ぶ際に是非チェックしてもらいたいグルメ本「広島極上レストラン〜珠玉の77皿」に掲載された、一目置くうどん屋だったのだ。ちなみに、そのグルメ本は、もともと一流料理人からの信頼も厚く、食通としてその名を知られる広島在住の佐伯和彦・貴子夫妻が、自信をもっておすすめする、とっておきのレストランを紹介するもので、料理はもちろん、空間、料理人ともに訪れる人を魅了する広島の極上な58店舗から、各店の逸品77皿を紹介した書籍です。

さて、そのうどん屋に入るべく、ビルの入り口から2階に上がると、扉の上には、「一本」という潔い店名が。

扉を開けると、この夜半に座席は満席。気立ての良い、スキンヘッドの店主が、黙々と調理と接客をされている、小さなうどん屋だ。

メニューは、壁に貼り付けてあるホワイトボードに、各種「うどん」と「おにぎらず(?)」の記載のみ。早速席があくまで15分ほど待ち、ようやくオーダーにありつけた。うどんを出すにも少し時間がかかるとのこと。少しの待ち時間、お酒をいただく人たちには「肴」があるようで、せっかくなので2品程度もらうことにした。で、すっと出てきたのが、こちらの2品だ。

一つ目の品は、ホタルイカの沖漬け、のようなものだが、温かい汁物で漬けてある。「そのスープを“飲まずに”ホタルイカだけ食べてもらえれば・・・」と店主から一声あり。さっそくホタルイカを食すと、思いのほか味付けが濃く、酒の肴にはぴったりの商品。ほんのり温かくて、遅い時間にはホッとする味わい。「飲まないように」といわれたこのスープ、やはり気になったので、すこし飲んでみると、ホタルイカ以上にグッと味の濃さを感じるもので、一緒に入っている「柚子」が酸味を加えて、アクセントになっている。

さらに続いて出たのが「〆サバのおろしがけ」。山陽地方独特の甘い醤油をベースにしたつけ汁と、〆サバがこれまた絶妙。ただ、僕が住んでいた青森のものとは違って「濃い」「しょっぱい」「甘い」というはっきりした味の差だけではなく、どことなく「優しい」味わいを感じるのだ。よくよく店主を見ると、意外や意外、うどんを打つ真剣さと優しさが同居している人物だ。

お酒とともに、肴をつまみつつ、それと並行して僕がオーダーしたうどんは「鍋焼きうどん」。具は「鳥肉」「しいたけ」「たまご」「厚揚げ」「かまぼこ」「ねぎ」「天かす」。出汁はかなり濃い目だが、どことなく「甘さ(=僕はこのお店では優しさに置き換えておきたいが、この優しさがこのお店の料理に随所に出ている)」が際立ち、そしてその甘さは、いやらしくなく、常に食べてもらうお客様に、「優しさ」を提供しているのだ。そして、うどんは細くつるつるとしたもので、コシはそれほど強くなく、のどごしがいい。こんなうどん屋があるのなら、広島でさえ、わざわざ通いたくなる、絶品のお店。

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しかし、蕎麦もさることながら、饂飩(うどん)、そしてそれを引き立てる「出汁つゆ」の、飲食に関わる展開が多くなっているのは事実だ。うどんは、香川県の「讃岐うどん」、秋田県の「稲庭うどん」などが有名だが、「和食」という視点からだと、さらに「鰹節」のような素材から、そこから作られる「出汁」へ、そしてその出汁が作り出す「旨味」へと繋がり始めており、言葉も「DASHI」「UMAMI」という言葉が、言語化され、海外に向けた「鰹節」「出汁」「旨味」を紹介するマーケティングからプロモーションまで、展開されるのを目にすることが増えている。またうどんについていえば、香川にインバウド向けに「UDON HOUSE」という業態ができ、うどんのことを作ること(単に作るだけではなく、食材の採れるところから)から食するところまでを一泊二日で体験できるツアーもある。うどんを紐解くと、とても面白いのだ。

今回の広島のうどん屋さんは、海外からすると「UDON BAR(うどんバー)」ではないか。これまでのうどん業態を考えた時は、「手軽に早く、ランチ商材として」というイメージが強い。それを夜の業態にしたのが、「つるとんたん」や「美々卯(みみう)」であり、さらに小料理屋のようなしつらえで、肴を取り入れ、ビールや日本酒をキュッと飲みながら、締めにうどんをきっちり食べるこのスタイルは、深夜に食しても、お腹に優しい、まさにうどん「優しさ」がさらに引き立てている印象だ。うどん好きに限らず、広島の食の夜のワンシーンとして、ぜひチェックして欲しい。

うどん屋一本:https://tabelog.com/hiroshima/A3401/A340101/34021344/

UDON HOUSE:https://udonhouse.jp/

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp