和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第59回

ニッポンの和食を、愛でる気持ち。

新年明けましておめでとうございます。

2019年平成最後の年越しが終わり、あっという間に、成人式も過ぎ去り、皆さんの日常も、普段と変わらない生活に戻られたのではないでしょうか?

私は年明けより、いくつかのプロジェクトの仕上げに入ろうと準備を進めています。まずは、この美味しそうな「おにぎり」ですが、昨年より進めている「秘境奥島根弥栄」のお米について、このお米を欲しいと思う方にすこしでも届けたいと、「美味しいお米を食べてもらうすべ」を試行錯誤しております。その中で、伝え方の一つとして僕は「おにぎり」が、一番わかりやすく、美味しく皆さんに食べていただけるのではと、自負しております。写真からも、このおにぎりの「お米の粒の明確さ」がわかると思いますが、非常にしっかりとしたお米の強さが、にぎられたおにぎりでもはっきりしています。かつ、食べた口の中に広がる、食感と味わいもまた深く、このお米を食べられた方々にも、非常に好評です。この現物にいかに近づけるか、そのまま伝えることに全力を出していくのが、僕らの仕事です。

どこの地方、場所でも「美味しいお米」が生まれているはずです。その中で、これまでも多くの、お米に関する商品展開や販促活動を僕自身、見てきました。その大半が、「お米の特徴」「お米の機能性」「お米が作られている地域」「他のお米の違い」の情報が非常に多いことに気づきました。それは「差異を際立たせる」ことであり、いかにトップか、一番美味しいかという「宣伝」だと認識しております。一方で「お米の美味しさ」「どの料理にお米が合うのか」という、いわゆる消費者目線の情報は、一般化された言語化が難しい。だからSNSやインフルエンサーによる紹介などの「見栄え」に引っ張られる広報施策が増えていて、結果、そのお米を購入したのちの、「最初の一口」を味わうのが精一杯で、二口目、三口目とご飯を口に運ぶことに、その愛おしさ、新鮮さは薄れ、「買いやすさ」を求めた消費者は、日常で身近にある小売店で販売しているお米に手を伸ばすことが少なくありません。

そんな状況から僕らは昨年このお米にまつわる企画で「おともアワード」を実践させていただきました。

[おともあってのご飯です。] https://washoku-style.jp/blog/3270

―――(引用)お米にいわゆるマーケティングやプロモーションをかけていこうとしたとき、事業者自体が、生産者でない場合は、そのお米の良さを最大限に伝えていかなければならないのだが、お米屋ではないその人たちにとっては、結構難題であることがわかる。そう、つまりお米メインの直接的な伝え方ではなく、実は伏流のような、「お米を生かしていく」方法論が必要になる。そう、僕からすると、印籠を出さない水戸黄門は「だれ、この爺さん・・?!」という考え方だ。

少し極論めいたことを書いているが、日本全国のお米のプロモーションをみていくと「伏流」の筋ではなく、本流筋で「ど直球」ばかり。そこで、僕らは「伝わり方」を考えてみることにした。お米は食べているけれども、主食というよりは、なにか「副食」のような存在にもなりうるお米、という捉え方だ。

「おともあっての、お米です。」————

実は、ここで大賞をとったご飯のおともが、某雑誌の、カテゴリ別手土産ナンバー1を受賞しました。それだけ消費者は「今」を欲しがっているのです。僕らは以前から「本流=お米の美味しさの伝え方」を議論しています。一年間という月日を通じて、その秋に収穫できる生産物がお米であり、そのお米を販売し、地域の人たちの日常を支えているのが現状です。その「日常の支え方」のなかで、私たちが標榜する「人と、食の接点をよりよくする」立場からすると、その「支え方」が「食が取るべき人の目標(しるべ)」であり、純粋に生産物の美味しさを伝えていきたいと切に感じております。

そうした考えを元に「和食スタイル」をブラッシュアップするのが2019年と捉えています。2018年、海外からの旅行者が3000万人を超えました。日本の、現場の情報を持ち帰る人、発信する人が格段に増えています。今まではローカライズ含めて、訪れた現地の人たちに与える情報に合わせて、企画内容をいかに近づけるかという対応も多かったが、これからは逆に、一切ローカライズさせずに、「現生(ゲンナマ)」の状況を、できるだけ正確に海外旅行者に伝えられるかがポイントではないかと思うのです。

例えばスマートフォンで「その場で、手軽に、すぐ、全世界に」発信するスタイルは、テレビ局の報道カメラマンの感覚に近い「取材」スタイルであり、今それが求められていて、そうした「コミュニケーション力」、「伝え方」の精度を、作り手も、発信者ももっと上げていくことで、その情報元の「価値」を見極めたい。そして、より本質を伝えていくために、いかに「ゲンナマ感」を伝える手立てを設けるか。「かっこいい」とするならば、その情報元で生まれる「新鮮さ」「特異性」「貴重さ」を愛(めで)る気持ちを、和食の文化でこそ、担い、養うべきだなと思う。

このお米の企画を、平成最後の企画のひとつとして「愛でる気持ち」を大切に、新年の第一歩を踏みたいと思う。

■秘境奥島根弥栄  http://okushimane.jp/

■参考:「愛でる」とは

① 物の美しさ・素晴らしさをほめ味わう。感嘆する。

② かわいがる。いとおしむ。

③ ほめる。感心する。

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp